第25話 転生を終えて……意識の覚醒と桜花桃奈の転生先との合流
情報を整理していこう。
まず転生した俺の名前はナーリッツ……ナーリッツ・アドラーという名前を頂いている。
愛称はナツ。
先ほど父親からナツ、ナツと言われていたから最初ナツが名前かと思ったけど、ナーリッツ何て結構立派な名前を授かっていた。
アドラー家のナーリッツって感じ。
俺の父親がベルント、母親がカタリーナ。
そして3つ年上の兄貴がレグレット……愛称はレグ。
家の家族はその4人家族である。
階級は小作農……地主に土地を借りて農業をしている百姓とも言うべき身分である。
うわ……これは出生ガチャは結構なハズレを引いたか?
両親や兄貴が痩せている……というか俺も痩せているが、食事が少々足りていない感じであり、家庭の収入状態は良好とは言えない。
しかも今日誕生日なのに石ぶつけられて倒れるとは……運が無いなぁナーリッツ君は……。
俺は治癒の魔法で頭の傷を癒していく。
うむ、神の間とでも呼ぶべき空間で食材を使って練習した治癒魔法もちゃんと機能しているな。
魔力も……神の間で鍛えたのがそのまま引き継がれているっぽい。
良かった……画面の男に騙される可能性も考慮していたけど、神の間で鍛えた3年間は無駄ではなかったっぽいな。
情報をもう少し詳しく整理していこう。
俺とナーリッツ君の意識は融合していてどちらかと言うとまだ幼いナーリッツ君の意識が俺に押しつぶされた形になってしまった様に思えるが、ちゃんと混ざり合っているから、親や兄貴に対してナーリッツ君のいつもの振る舞いは出来るだろう。
良かった……赤ちゃんプレイからやり直しじゃなくて……。
あと記憶を共有したおかげでちゃんと異世界の言語を話すことができるな。
異世界の文字を読み書きするのは、難しい文章じゃなければできるように神の間で練習したから問題は無い。
ナーリッツ君の知識によるとこの村の名前はニューベルク……これもドイツ系にありそうな名前をしているな。
領主はゲンシュタイン様という騎士が領主をしている。
村の人口は800人ほどで山に囲まれた窪地にある村で、日本人がイメージするような広大な開けた農地で農業をすると言うよりは、山や森を切り開きながら細々とした農地で換金性の高い小麦を作ってそれを税として領主に納め、領民は残った土地でライ麦や大豆、芋を育ててそれを食べて生活するという少々苦しい生活を強いられていた。
まぁ一番苦しいのは小作農の階級であり、自分達の土地を持っている自作農や地主階級の人達は普通に生活ができているらしい。
北に行けば領主の寄親である辺境伯様の町があるらしいが、そこに行くまで1ヶ月の道のりを旅しなければならないらしい。
ただ山が多くあるので山の恵みは豊富……なのであるが、狼や熊等の野生動物が結構な数居るらしいので狩人の大人が複数人で行動しないと危ないらしい。
よって山に食料を調達しに気軽に入れないことも食事事情が悪い原因となっている。
さてさて、自身の不幸を嘆いても仕方がない。
俺は連絡の魔法を使い、桃奈に連絡を取ってみると応答があった。
『お、ようやくお目覚めだね……無事に転生できた様で何より』
「桃奈も転生できたか……ちょっと俺怪我したことになってるから数日外に出れないかもしれん」
『んー、夜にこっそり会えない? 記憶引き継いでいるんだったら村の南東に教会があるからそこを目印にして会いたいんだけど』
「了解、時間の魔法は機能しているか?」
『うん、この村の人達日が沈んだら1時間から2時間で眠って日の出頃に起きる生活しているから……20時過ぎに会えない?』
「ちょっと待ってな、時間合わせする……そっちの時間は?」
『今15時12分』
「了解セットした。じゃあ今夜合流で」
『はいはーい、じゃあまたねー』
プチっと通信が切れて、俺はタイマーをかけ、ベッドの上で横になるのだった。
19時50分。
俺はセットしていたタイマーの魔法に従って目を覚まし、感知の魔法を行って家族が各部屋で眠っているか確認をする。
両親は寝室、兄貴も部屋から動いてない事を確認し、俺はダミーの魔法で俺の分身を作り出してベッドの上に寝かせ、消音の魔法で足音を消す。
扉を開けていき、外に出る。
「本当に異世界なんだな……」
月が3つもある。
光っている色も黄色っぽいの、赤っぽいの、青っぽいのとそれぞれ色や大きさが違って、ここが異世界であることを痛感する。
「んん、ちょっと肌寒いな……保温」
俺は久しぶりに肌寒さを感じたので保温の魔法を自分にかけて、ナーリッツ君の知識を頼りに教会に歩いて向かう。
月が3つもあると曇ってなければ月明かりで結構明るく、夜道をしっかり進むことができる。
まぁ夜道でも歩けるように夜目の魔法だったり、光源の魔法とか明かりを照らす系の魔法も色々覚えていたりする。
まぁ今は必要ないので6歳児ボディだと素早く動けないから身体強化の魔法を体に巡らせて移動をする。
「うは、まだ精神と肉体が歪だな。出力が上がらん」
今まで精神体で魔法を使っていたので、肉体という抵抗があると出力が全然上がらないし、燃費も悪い。
そんな事をぶつくさ言いながらも教会に到着し、探知魔法で人の気配を探すと木に寄りかかっている人物を見つけた。
「桃奈か?」
「ピンポーン、正解」
木の陰に隠れていたのでよく見えてなかったが、月明かりに照らされると、淡い桃色の髪を肩まで伸ばし、少し尖った耳に髪色より赤に近い色の瞳を持つ俺よりも少し背の高い少女がそこに居た。
「ちゃっす!」
指で可愛くピースサインを作り、俺に向かって笑顔を振りまく。
「転生しても王子様系な顔立ちは変わらなかったんだな」
「そうそう、ちょっとボーイッシュなんだよねぇ。髪の毛も前は黒髪だったのにピンク色になってさー。ボーイッシュのピンク髪てあんまり見たことないんだけど」
「まぁ確かにそうですね。ピンクがメインカラーだとどうしても可愛いが先に来ますし」
「……では改めましてメアリー・クリスティーと申します。以後お見知り置きを」
「ナーリッツ・アドラー……まぁ互いに記憶はあるだろうから初めましてではないんだけどな」
クスクスと互いに笑うと、メアリーが植物を成長させる魔法で木の枝を伸ばすと、俺とメアリーが座れる腰掛けに変貌した。
「どうだ? 精神体の時よりも魔法使いやすいのかやっぱり?」
「うーん、精神体の時より使いづらくなった。まだ体が魔力に慣れてないのもあるけど、魔力に耐えられる作りになっていない感じかな」
「俺も今日使ってみてそう感じたわ。違和感凄いよな」
メアリーは木の実を取ると俺に渡してくる。
俺はそれを風の魔法で半分に切り裂いて、食べやすいようにし、メアリーに渡す。
「ありがとうナツ」
「どういたしまして」
それから実里とつららはまだ意識が覚醒していないのか聞くと、2人共まだ覚醒していないが、おおよそ転生先の目星は付いているから今度会いに行こうと言われ、そうすることにする。
俺は小作農の身分であるがメアリーは自作農……というより村で薬屋を営んでいる家に生まれたとのこと。
庭でハーブや薬草を育てる手伝いを既にしていて、魔法についてはまだ隠しているらしい。
「やっぱり魔法は隠した方が良いのか?」
「うーん、大々的に使うのは止めたほうが良いかも。領主様に目をつけられても面倒くさいことになるし」
「なるほどな」
とりあえず今日は互いに無事に転生できたことを喜び合い、この村についての情報の共有を1時間ほどして別れるのであった。




