第23話 神様達の視点
私は蔵人……神々からはクロと呼ばれている神の1人である。
今日も私は地獄の刑期を終えた罪人の魂であったり、天国で生活することができる期間が終わった魂を色々な世界に転生させる仕事をしている。
「クロ、また外れた魂が出た」
「またですが……最近多いですね」
私に呼びかけたのは同僚のシロ。
神として正式な名称はあるが、略称で呼び合う仲かつ、同じ仕事をしている仲間でもある。
「今回は誰がやらかしたのですか? 下級の天使が仕事をミスりましたか? 死神が本来迎えるべき魂を取り違えましたか?」
「いや……現世を視察していた若人って神が車を暴走させて死ななくて済む人を4人轢き殺した」
「一大事じゃありませんか! その魂達の保護は?」
「ちゃんとしている。こうなった時ってこちら側の不備を謝罪して意識を持った状態かつ何かしら異世界で有利になる能力を持って別の世界に転生させる……というのがセオリーだよな」
「はい……はぁ……私が担当なので彼らの魂を箱庭の中に入れてください……ここ最近多いですねこういう事故や事件が」
「地球での信仰心が低下しているからな。今更神の声を伝えても精神病扱いされてしまって教えが一切広まらないから、無理に神々が直接出向いて事故や事件を起こすことが多いこと……」
「下っ端の我々が結局尻拭いってわけか……箱庭用意できたぞ」
「じゃあ魂を生前の容姿に調整してと……」
私は人型にした魂達を箱庭に入れていく。
「クロ、お前が担当する時ってなんで魂を裸にするんだ? 服を着せてあげても良いんじゃないか?」
「服を着せると色合いが気に食わないとか、デザインがーとか質感がーとか色々文句を言う輩が毎回出ますからね。それにこの箱庭はなるべく早く転生してもらうための空間です。男女を一緒に入れて裸体を見せ続ければ女性は早く転生しようとするでしょうし、残された男性も転生を希望するでしょう」
「ふーん、てっきりお前のことだから魂を箱庭で成熟させたいのかと思ったが」
「別にそれでもいいですが、長時間神の間に耐えられる人物って早々いませんからね。まぁ魂同士が交わる事で精神力を回復させるという手段がないことはないですが、今までこの空間に送られた転生予定者でそこまで関係が進んだ人物は居ませんがね……シロ、ちょっとこの魂達に状況を説明するので黙ってもらえますか?」
「じゃあ俺別のところで仕事しておくから……頑張れよー」
「はい」
私は箱庭の中にあるテレビ画面に映ると彼らに状況を説明するのだった。
「おかしいですね」
「どうかしたのか……ってまだその箱庭稼働しているのか? 1週間は経過したろ」
「ええ、たまに様子を見ていましたが、協力しながら魔法の習得を頑張っているようですね」
「箱庭でも魔法は覚えられるんだっけか?」
シロの問いかけに私ははいと答え、別世界の法則も入り混じる神の世界では才能さえあれば何でもすることができる為、この人達が転生する先の異世界では訓練すればある程度の魔法は誰でも使える世界なので精神体の彼らでも覚えることは可能だと説明する。
「でも過去の転生者達は魔法を覚えることができなかったよな」
「ええ、用意した箱庭の魔法についての書物は異世界での覚え方は書いてありますが、魔力に触れてこなかった地球人の覚え方は書いてませんからね。まぁ生理現象を魔法を使って起こすというのに気がついた彼らは他の転生者より視野が広いですがね」
「ふーん、でも1週間が経過したってことは、これから精神摩耗度がどんどん蓄積していくことになるんじゃないか?」
「ええ、まぁ長くても1ヶ月程度で限界を迎えるでしょう。それでも最長記録ですがね」
「なるほどな……おい、また別の神がやらかした。今度は修学旅行のバスを巻き込みやがった」
「どれくらいの人数が亡くなりました?」
「生徒、教員、バスガイド、運転手全滅だ。崖から20メートル落ちてバスが爆発したら助からんよ」
「全員収容できる箱庭用意してくれ。そこに彼らを詰め込む」
「本当に最近多いな……神々のやらかし」
「神々がやらかすと輪廻が狂うから本当に気をつけてほしい。わざとやってる神もいるんじゃなかろうか」
「罰自体も千年程度で終わるからな。神にとってはあっという間だろ」
「まぁ千年あれば今の人間達は宇宙に散らばると思うから更に信仰心は希薄になるんだろうなぁ……そして今度は宇宙単位で事故起こすんだろう神が」
「そうなったら新しい異世界作った方が良いかもな」
「数千人単位で転生者が出る感じだったら異世界作ろう。そうなるように上神に進言しなければ……報告書作るの面倒くさいなぁ!」
「怒っても仕方がないだろ。とりあえず箱庭できたぞ」
「じゃあちゃっちゃと現状を理解させてきますわ」
「お~いクロ……あれ? まだ箱庭が残ってる? これいつの箱庭?」
「ん? これか? 確か……約3年前からある箱庭だな」
「さ、3年!? なんだその化石みたいな箱庭は! え? 中の人物達って魂もつものなのか?」
「魂を維持するセックスの仕組みに早い段階で気がついてな。それで毎日セックスすることで精神摩耗度を抑えたみたいだぞ」
「これ何人入っているんだ?」
「4人の魂が中に入っているな」
「はぇ~いつのだったか思い出せないけど、それだけよく箱庭の中で生活できるもんだ」
「正直100日目の時に俺が確認のために1度声かけしたんだが、発狂しているわけでもなく、ただ魔力を体に馴染ませたいってこと魔法を覚えたいが為に頑張っていると言っていたな。あと魂ックスにハマったらしい」
「よほど魂の相性が良かったんだろうな。互いに認め合わないと魂が拒絶して不快感しか残らないだろうに」
「なかなか凄い魂だったっぽいな」
「異世界に飛ばした魂ってここ最近なかったけど、この魂達が送られる異世界って最近だと何人くらい送ったっけ?」
「ああ、修学旅行のバスの乗客、乗務員を丸ごと異世界送りにしたのが最後だったな……あっちはあっちで阿鼻叫喚だったがな」
俺はあまりに酷すぎた彼ら彼女らのことをふと思い出す。
まず裸なことで男女間の対立が酷くなり、更に女性を巡って口論になったあと殴り合いの喧嘩となったが、互いに痛覚が鈍っているので不毛な戦いが続いていき、食事を作る人物が現れなかったので精神摩耗度がどんどん上がっていき、5日で精神摩耗度が耐えられなくなったので、強制異世界送りにした事があった。
一応転生者達に能力は与えはしたが、正直大人になるまで成長できるのは34名居たけど半数は脱落しそうだし、大成できるとなると5名も居ないんじゃなかろうかと思ってしまう。
3人だけ揉め事を嫌った人達……運転手とバスガイドの女性と根暗な少年が書庫に籠もって異世界について調べていたから、彼らはもしかしたら生き残れるかもしれないが……。
「それで3年も箱庭で生活している魂達もそろそろ異世界に行く準備を整えたようだ」
「それだけ籠もっているって事は魔法も使えるんだろ?」
「ああ、魔力は4人全員4万の魔力量を保有しているよ」
「4万……肉体という魔力の成長の足枷になってしまう物が無いからどんどん伸びたわけか……魔力総量を1万を超える魔法使いでも世界では大魔法使いとか宮廷魔法使いの最上位くらいしかいなくなかったか?」
「……彼ら彼女らは3年の修行で異世界の住民の一生分を超えてしまったってことになるな」
「う、うへぇ……そりゃすげぇ……彼らがどんな異世界で生活をしていくんだろうな」
「ああ、私も気になるところだ」




