第150話 領主になるために 1
バイパー様よりそろそろ本格的に領地の移譲に向けた話が始まり、辺境伯家からの支援についてどうするかについて聞かれた。
「まず辺境伯家から通信魔導具を贈る。これは遠方の領主達には基本貸し出しているんだが、ナーリッツ達には世話になったから譲ることにするよ」
「ありがとうございます」
「さて、問題は何を求めるかだ。まず初期の開拓に従事する人員は約1000名を予定しているし、土地を持ちたい冒険者を優先的に送るよ」
人員は多すぎても食料調達で困りそうなので1000名からスタート、俺の異空間に人員分の食料を一気に運んで向かうし、足りなさそうであれば俺が開拓地からひとっ飛びでこの町まで買いに来る。
その食料の費用は辺境伯家から出してくれるらしい。
衣類についても職人を引き抜いて衣類の生産をしても良いことや、原料についても産地から買い取ってくれて構わないことを言われた。
「あとこちらとしてはスムーズに住居を整えたいので、ハーゲンシュタット町近くで家を組み立て、それを異空間に収納し、現地に設置したいと思います。建材の調達と大工の手配をお願いしてもよろしいでしょうか」
「なるほど……ナーリッツほどの空間魔法使いだと家ごと運べるのか!」
バイパー様的にも盲点だったらしく、了承してくれた。
日本だとプレハブ住宅……いや、トレーラーハウスに近いかな?
先に組み立てておいて、そのまま運ぶのでトレーラーハウスの方が合っているだろうが、こっちは異空間に全部収納して運べるので問題は少ない。
なんなら俺は今住んでいる屋敷やアキのラボ、製麺所をそのまま持って行く気満々である。
「せっかくだから空き家になっている物件も持っていってくれないか?」
「ええ、構いませんが」
手入れをすればまだ住める家だったり、塩漬けされてしまっている物件が町を探せば結構ある。
解体費用を考えると……という物件だったり、教会側が除霊を済ませた事故物件だったり……。
事故物件はちょっと嫌な気もするが、俺の今住んでいる家も事故物件なんだよな……。
除霊済みであれば問題は無いか。
バイパー様的には建造物を俺に持って行ってもらって、土地関係を清算し、新しい建物を建ててもらっての方が建築業界も盛り上がって良いらしい。
「土地や建物の所有者との交渉はこちらがやっておくよ」
「ありがとうございます」
これも一種の古民家再生みたいなものか?
1000人くらいが住む程度の住居だと塩漬け物件だけで足りそうだけど、追加で住民を募集することにもなるし、数百軒規格化された家を建ててもらおう。
それとバイパー様に許可をもらって錬金術の才能がある人を身分問わず雇っても良いか聞いてみた。
「錬金術に関しては私からは何とも言えないけど、まだ偏見が強いからね」
「ええ、なのでまずは教会の孤児達を中心に錬金術の才能があれば囲い込みたいと思います。それに漏れたとしても俺達の魔法使いの弟子として育成してみようかと」
「貴族からじゃなくて良いのかい?」
「貴族のご子息達だとどうしても紐付きになりますからね……となると才能はまばらですが、孤児から当たりが出ることを祈ったほうが良い気がしまして」
「ふむ……教会にも話を通しておこう。孤児の引き取り手が増えるんだったら反対はしないだろう」
「ありがとうございます」
あとは、アキのゴーレムを量産するために今後はワイバーン狩りを中心に行いたい事を伝える。
魔石以外……骨や鱗、肉だけでも売ってくれば助かると言われたので、ゴーレムに必要な魔石だけこっちで抑えて、他は売る事を約束した。
またワイバーンが狩れない家臣達は魔物狩りに従事させるのでその調整を行い、支援内容と今後の方針を大まかに決めるのだった。
「アキー……うわ……すげぇことになってるな」
バイパー様との打ち合わせから数週間後、ミスリル銀を使ったアキ特製ナイトゴーレムがどんどん量産されていた。
日間5体ペースで増えているんじゃなかろうか。
「うーん、やっぱりナイト以上の性能のゴーレムを作るにはワイバーンの魔石だと容量不足なんだよね」
「そうなのか? ホムラとかみたいにワイバーンの魔石を連結すればいけるんじゃ?」
「あれはホムラの精神があるから制御術式は弄ってないから」
アキ曰く魔石の大きさや質で書き込めるプログラムの量が決まっているらしい。
言ってしまえば魔石がパソコンとかの内容量に近く、ゴーレムはそれに後付け拡張ができない感じか……。
だからプログラミング方式を効率化していっても何処かで限界が来てしまい、容量を増やさないと更なる高性能化は難しいとアキは嘆く。
「ホムラという完成形があるのに、再現性がない! もどかしい!」
完全にマッドサイエンティストの思考である。
「ちなみにフレンはどうなんだ? ゴーレムホースを量産していたんだろ?」
「聞いて欲しいねんな!」
フレンの方もゴーレムホースの発注が多くて苦しんでいたらしい。
だから俺に泣きついて錬金術ができる人員を増やしてくれ〜と言われ、バイパー様に確認した感じであるが……。
「教会側とも連絡は取ったからもう数日したら孤児の中から錬金術の才能がある人を引っ張ってくるんだが……確認方法とか大丈夫なのか?」
「勿論!」
前に俺達にもやった魔力水と塩を用いた検査をするらしい。
果たして何人に才能があることやら……。
ちなみにあると分かった子は直ぐにこっちの屋敷に移住してもらって魔力トレーニングをしていく。
残りの子達の魔力トレーニングは領地を貰ってから順次行っていく予定だ。
ジェイシェット教官と補佐にライラック以外の元銀の翼メンバーを教師として付けて、孤児達を冒険者教育を施してももらう。
これは既に教官達には伝えてある。
「でもいよいよ領地経営に向けて動き出してきたって感じがするな〜……ねぇフレン」
「ええ? うち? いきなりは突っ込めへんよ!」
アキがフレンにダル絡みしているがこれは2人のお約束になりつつある。
「まぁうちも元貴族やからアドバイスするとしたら……うちの親父はどうしていたっけなぁ……あ、決まり! 領主はある程度の決まり……法令をきめることができるねんな。税率とかも決められるし……。帝国法を逸脱しなければある程度の裁量は任せられているから、そこら辺を最初にビシッと決めておかんと、後々苦労するらしいで」
「うちの領地が数代前の悪法で領地ガタガタになったの立て直すのに数代かかったかな! 頼むでナーリッツはん!」
「法律か……領地を拝領する前に雛形だけでも作っておかないとな。ありがとうな! フレン!」
「ええで! とにかくこのクソ忙しい労働から早く解放してくれねんな!」
「法律ですか? 雛形が既に作っていますが」
ラインハルトに領地経営の法律はどうなっているか聞いたところ、マンシュタインの親父さんにも協力してもらって、ラインハルトとシュネの親父さんの3人で雛形を作っていたらしい。
読ませてもらったが、基本辺境伯家が行なっている統治方法で、町民同士の揉め事は町人達から衛兵が仲裁に入り、双方の言い分と目撃者の情報を聞き判断を下し、貴族もしくは何かしら権限がある者(冒険者ギルド長とか)の揉め事の場合は領主もしくは領主が選んだ調停官によって判別する。
上位者と庶民が揉めた場合、殺人等の重大案件以外は基本金銭での和解で解決する。
みたいな裁判系のことや税金に関してのこと、継承権に関しての取り決め、代官の選出方法とおおよそ必要な事が50項目くらい作られていた。
気になったのは2点……税金に関する事と、人種に関する事の項目で、人種は一部の種族が不利になりそうな事が書かれていた。
特に魔族に関してで特別の功績がある者に限り、役職に就くことができるというので、これは明らかに差別に該当するため直ぐに修正させた。
うちには魔族のフレンも居るし、他所で不遇な扱いを受けている魔族が開拓に来てくれるならウェルカムである。
ただ犯罪を犯した者、借金が嵩んだ者が奴隷や農奴になったりする法律は特に弄ることはしなかった。
これを弄るのは帝国法に抵触する可能性があったのと、開拓地で刑務所を用意するのも難しいため、奴隷落ちという刑罰を与えるという必要な罰である。
あとは税金に関してであるが、辺境伯家では特定の物に関税を掛けたり、製造税を取ったりしている。
例が酒税である。
発展度で税制は変えていく必要があるが、初期の税制は収穫及び生産による課税方式でいくことにした。
まず魔物の領域を開拓していくので冒険者ギルドに魔物の素材を売っぱらったりするのはギルド運営費を除いて領主のケッセルリンク家には課税をしない。
これにより他所より冒険者の取り分を高くして冒険者が積極的に移住してくれることを促す。
人頭税や地税にしないのは人頭税だと入植直後の開発中にも税金が発生するのは移民に厳しいからであり、土地ベースの課税は広大な農地を開墾する予定なので、広ければ広いぼと税額が高ければ移住の魅力が損なわれると判断したからである。
なので課税するは収穫した作物と物を製造した時に徴税することにしたのである。
商会が多くなってきたら商会にも税金をかけるが、収穫物や製造物を俺が町に運んで、クム商会や提携している商会を通じて売却し、それで必要物資を買ってきて領民に還元するしかないわな。
「結局は俺達は領主になっても税金が安定するまではワイバーン狩りをして稼がねぇといけねぇな……トホホ」
150話とキリが良いので、ここからは一日2話更新に切り替えます




