第147話 領地の下見
「ミクさん」
「はい!」
「ご懐妊おめでとうございます!」
家臣達の中で治癒師としての技術が一番高いクリスが家臣達の健康診断をしていたある日……ミクの懐妊が発覚した。
そりゃあれだけヤッていれば妊娠するだろうし、アキがミクを妊娠させるために妊娠薬錬金術で作って飲ませていたし……。
副作用でミク淫乱になって俺を搾り取りに来たが返り討ちにした事件もあったのだが……。
まだ空間魔法で体内を確認しても判別が難しいくらいであるが、クリス曰く確実に妊娠しているらしい。
「月物来てなかったでしょ」
「確かに来てなかったね〜」
それにつわりが始まっていて、偶に嘔吐する姿を他のメイド達も見ていたらしく、それもあってクリスに確認を取らせたところ発覚した感じである。
「これでケッセルリンク家も安泰だ……」
ラインハルトはまだ子供が生まれてきてもないのに安心している。
まだ早いだろとツッコミをいれると
「いえ、ナーリッツ様が種無しでは無いと判明したので安心したのです」
俺種無しを疑われていたの!?
「万が一……万が一種無しだと本当に私達の後進の家臣達が路頭に迷うことになるのでね」
普通の貴族の場合血縁者から養子を迎え入れれば良いが、俺の場合は家の祖が俺から始まる事になる為、他家からの養子入りなんて以ての外であり、同時にメアリー、アキ、シュネの各騎士家も俺でないと子作りしたくないと言い出せば断絶不可避となってしまう。
なのでラインハルトは俺が種無しでないと確実に判明して安堵していたのらしい。
ひどい話である。
「ミクさんはメイドの仕事はほぼしなくても良いですが、貴族の側室としての勉強が待っています」
「ええ〜私妾でいいのに〜」
「駄目です! メアリー様、アキーニャ様、シュネー様の3人は正室でなくても側室の中で1段上の存在になりますが、ミクさんは初めてナーリッツ様のお子さんを産んだ存在になります。将来ナーリッツ様は大領を辺境伯様より譲られることになりますが、そうなれば子供は多ければ多いほど良いのです!」
ラインハルトが熱く語るが、ミクはあまりピンと来ていないっぽい。
しかし、ミクは他の年上のメイド達に連れられて側室としての教育を受けさせられながら、お腹の子供がすくすくと育つようにストレスの少ない部屋で生活することになるのだった……。
ズルズル
「ラーメン美味〜」
そんなミクであるが、最初の数日は食べる物にも気を使うべきみたいな事をメイド達から言われていたが、俺がそれだとストレスかかるだろと妊婦が食べると良くない物以外は自由に食べさせてやってくれと家長命令をし、ミクに自由に食べさせることにしたら、1週間に1度料理人達に言ってラーメンを作ってもらうようになっていた。
ズルズル
「やっぱり料理人が作ったラーメンの方が美味いな」
俺の自家製ラーメンよりも格段に美味しくなっている。
と言うのもラーメンの研究は続けていたが、家臣の人数も増えてきたことだしと料理人を追加募集したところ、クム商会から麺料理屋をやっていた職人の雇用に成功したのである。
店は立地が悪かったり、競合店舗との価格競争に負けたりと商売人としての才能は乏しかったが、麺料理に関しての腕はピカ一で、ラーメンだけでなく、うどんやそば、冷麺なんかを教えると、醤油や味噌といった調味料の研究やそれぞれの麺に合うスープの開発、麺の質にもこだわり、数ヶ月で一通りの麺料理を一任されるまで至っていた。
俺も美味しいラーメンを食べるためにその麺職人の為に庭に製麺工房を建てて、彼専用の場所を提供したり、アキに協力してもらって製麺機を作ってもらったりもした。
お陰でケッセルリンク家ではパスタ以外の麺料理も毎日食べられるようになったのである。
ちなみに一番ラーメンにどハマりしたのがマンシュタインの親父さんで、辺境伯家の重臣で忙しいのにも関わらず、何かと理由をつけて家に訪問し、毎回何かしらのお土産……まぁ賄賂みたいな物を俺に押し付けて、代りにラーメンを食べていくのである。
デーニッツさんもよく食べに来るので、シュネの親父さんとアキの親父さんの4人で夜ラーメン食べながら酒飲んでいる光景が偶に見られる。
もうこの人達の為にラーメン小屋でも建ててしまおうかという話も出てきている。
……この麺職人にも言ってあるが、俺らが未開拓地に移動したら時期を見てついてきてもらうから、それまでに弟子でもとって学ばせておけよと言ってある。
じゃないとデーニッツさんとマンシュタインの親父さんがラーメンロスで発狂しかねないから……。
あとラーメンに必要な醤油と味噌……他にもにんにく等の食材はゼファーさん……というかクム商会の提携している商人と職人に製造方法を伝授して量産に向けて動き出している。
辺境伯様やケッセルリンク家でパーティーをした時に醤油や味噌を使った料理を出して、他貴族達から調味料を求められる事が多々あったので、ゼファーさん達に製造してもらう事にした。
俺が貴族になってから約2年……徐々に味噌と醤油がハーゲンシュタット在住の貴族達を中心に広まり始めていたのであった。
「私は味噌ラーメンが好きだな〜」
「わかる、味噌も美味いよな」
ズルズルとミクが食べているラーメンの味は味噌。
具材はチャーシュー、味玉、白髪ネギ、もやしである。
味噌ラーメンだとフライドポテト、バター、コーンなんかも普通に合う。
竹が何処を探しても見つからなかったのでタケノコを使うメンマや海が遠いので海苔なんかは乗っける事ができなかった。
あとライス。
米が南部に無いのか見つからない。
そろそろ元日本人として米を食いたい!
ラーメン食べられるだけ良しとするか……。
「チャーシューうまうま〜」
ミクも美味しそうに食べている。
その匂いに釣られて他の家臣達も食堂に集まり始めたので、俺は素早くラーメンを食べ終わると、食器を返して、午前中に終わらなかった政務を片付けるのであった。
現在俺は飛行魔法で辺境伯様から譲り受ける未開拓地の外周部を飛んでいた。
南部領域の広さを中国に例えたが、南西部の未開拓地の広さは満州くらいある。
しかも海に面しているので、開発が成功すれば港を作って他の地域への交易も可能となる。
あと岩塩だけでなく塩を自前で作れるのも大きい。
かん水作りもしやすくなる為、ラーメンや中華麺を使う料理を発展させる為にもなるべく早く海までの領域を解放しなければ……。
「それにしても広い……」
時速250キロ……いや、最近更に速度が上がって時速300キロで飛行しているが、3時間以上近くかけてようやく海に出れた。
「未開拓地の開始場所から海まで約1000キロか……こりゃ開通まで骨が折れるな……」
しかも中央を突っ切ろうとすれば魔物がうようよいる領域を解放しなければならない。
「全域を開放するには何年かかることやら……」
辺境伯様より下見してきなさいと言われたが、下見だけで1週間は潰れそうである。
「さて、どう開発していくのが良いか、見当もつかねーな」
まだ領地が与えられる時期は調整中であるが、下見に俺が行かされたので、3年以内には譲られそうである。
それまでにどれだけ準備ができるかの勝負になりそうだ。
「待ってろよ……俺の領地……絶対に豊かな領地にしてやるからな!」




