第140話 魔物の領域解放作戦 中の下
拠点に戻るとデーニッツさん達が食事を取りながら休憩をしていた。
「遅かったな。一旦ボス倒したら今日は休む手筈じゃなかったのか?」
「いやはや……アキが暴走しまして……」
口裏合わせておいたが、アキが暴走して超高性能ゴーレムを錬金術で作ったことを説明する。
「ほーん? このゴーレムがか?」
「はい」
デーニッツさんがホムラを眺める。
『うちの名前はホムラです! よろしくお願いします!』
「うわ! 喋った! マジか!」
「自律して思考し、意思疎通が可能なゴーレムなんです。まぁ材料は極秘ということで」
アキがデーニッツさんに言うが、デーニッツさんも秘匿技術を言われても困ると言われてしまった。
「どんな事ができるんだ?」
「ちゃんと精神が宿っているので、覚えさせれば色々な魔法が使えますし、ワイバーンの魔石を3つも連結して使っているので、私らには及びませんが、膨大な魔力があります。しかもミスリル鋼やミスリル銀で人間では不可能な強度と魔力の伝導率を誇ります」
「聞くだけでスゲーな……」
デーニッツさんはまた辺境伯様に報告しないといけないことができたと頭を抱えていたが、ホムラは俺の服を掴み
『ねえ、ザッキー……ライラックって子は何処にいるの?』
「ん、今呼んでくるから少し待っていてくれ」
ホムラに頼まれてライラックを呼んでくると
「……焔なの?」
『うん、ザッキーもいろいろ変わっているね……背が縮んでいるし……』
2人は抱きついて再会を喜び合い、互いにどうしていたのか話し始めてしまった。
ホムラとライラックはそっとしておいて、俺は解体班が分解した素材を異空間に入れていき、逆に異空間からホムラが狩ってくれた首無し素材を渡していく。
相場よりも高い給料支払われているから彼らには頑張ってもらわないと……。
解体職人達はヒーヒー言いながらも解体を続け、他の魔法使い連中はシャワーを浴びたり、洗濯物をしながら明日に備えて休憩していた。
親睦を深めるためにお抱え魔法使いの人達のグループに近づく。
「男爵こっちこっち!」
俺を呼んだのはザテラスとセレフィの2人で、他にも3人ほど若いお抱え魔法使いの人達が集まって酒を飲みながら談笑していた。
「いや~イフリートの討伐お疲れ様、やっぱり大変だったのか?」
「こらザテラス……口調」
「いや、爵位はあれど、狩りとかプライベートに近い時は砕けていた方がありがたいです。イフリートは俺は殆ど戦ってないですよ。シュネがイフリートの群れを氷漬けにして、空間魔法でイフリート達の魔石を回収しただけなので」
イフリートが群れで居た事にザテラスとセレフィ達は驚き、それでも対応できる俺達は凄いと褒められた。
「かぁ……やっぱりナーリッツ男爵が次のお抱え魔法使い筆頭だな……俺もデーニッツさんの後釜に収まろうと頑張ったんだけど」
「となると今の立場を守ることに固執した方が良いかしら……いや、後進の為に10年もしたら席を空けないと……」
ザテラスさんとセレフィさんの2人はまだ20代ということを考えると引退はまだ早いのであるが、デーニッツさんが引退し、俺がお抱え魔法使い筆頭になった場合、通例だと年上のお抱え魔法使い達は後進に席を譲らなければならなくなる。
別の部署に移動となるのであるが俺的にはそれは困る。
「通例だからと皆さんが辞められるとこちらは困るんですけど……数年もしたら俺は領地経営が始まるので、辺境伯様のお側で仕えることは難しいですし……そうなれば実力的にザテラスさんとセレフィさんの2人が代行として他のお抱え魔法使い達を引っ張っていってもらわないと」
「あら、そこまで評価されていたのかしら」
「いや、辞めなくて済むならありがたいが」
「他の皆さんも辞めるのは40歳を過ぎてからにしてください。それでも辞める場合は辺境伯様に言って相応の役職に異動させますから」
「それは助かる」
「ナーリッツ男爵は話がわかりますな」
他の魔法使い達も安堵の表情を浮かべる。
お抱え魔法使いだと他の役職に比べて役職手当が高いのである。
それに今回みたいな任務に従事した場合は危険手当の他に、狩った魔物の売却利益も一部懐に入るため、デーニッツさんみたいに筆頭でなくても、十分裕福な暮らしをすることができる。
今回はスターの兄や姉達も見習い魔法使いとして任務に従事しているが、見習いでも普通に4人家族を支えられるだけの手当は出る。
彼ら彼女ら見習い魔法使いからすれば手当が上がるお抱え魔法使いに早く成りたいと思うが、俺が通例通り年上を切ったら、お抱え魔法使いが全員20歳以下になってしまい、とてもでないが経験が足りてないし、戦力的にも危うい。
だったらある程度上の人達も残ってもらった方が組織的には良いだろう。
「ところで男爵は家臣の他に魔法使いの弟子は取らないのかしら? 魔法使いたるもの弟子は5人や10人は抱えておくのが常識でしてよ」
「セレフィさん言ってくれるねぇ……抱えるとしても領地経営が安定化してからだよ……家臣団の形成だけでも頭を抱えているのに、バイパー様は俺を使って辺境伯家の派閥形成を邁進しようとしていますし」
病気が完治したバイパー様は遅れを取り戻すべく、精力的に働き始め、まずは辺境伯家の親族の力を削ぐことを始めた。
辺境伯家直系は当主様やバイパー様やフレデリック様の様に有能なのであるが、親族にはそうでない方も何名かいる。
それが辺境伯家に取って金食い虫になっているので、再編された諜報部をバイパー様が掌握し、攻撃材料を集めていたのである。
バイパー様が俺達に語ってくれたが、毒殺を試みたルンシュテッド元子爵でも野心は大きかったが、派閥を形成できるだけのカリスマと能力、財力があったので、あれでも親族の中では有能な方だったらしい。
バイパー様が当主になった際に多くなった親族の一部を粛清するのは決定しているらしい。
辺境伯様もそれは認めていたし、それでバイパー様が何か起こった際にフレデリック様は無事であるため、やや遠くの領地に飛ばすというのが辺境伯家の中で決まっているのだとか。
親族でも信用できないのはザ・貴族って感じでドロドロしている。
そんな事を聞いていると、魔法使いの弟子も慎重に取らなければならない。
ましてや現在は教えられる時間がほぼ無いので無理である。
「将来取りますけど、今は無理です」
とりあえずこの場では無理であると明言しておくのだった。




