第138話 魔物の領域解放作戦 中の上 ホムラとの遭遇
ガチガチガチガチ
『人の心とか無いんか?』
「「「「……」」」」
シュネの放った周囲一帯を氷漬けにする魔法で、一気にイフリートを討伐していると氷漬けになっていなくて、やたらと人間臭い女のイフリート……イフリータが寒そうに震えていた。
「意思疎通できる感じ?」
『できる! できるから寒いのなんとかしてほしいんですけど!』
身震いしながら震えているイフリータに何やら言い分があるらしく、魔物だけど即討伐は見送り、とりあえずアキの試作品のゴーレムの中に入ってもらい、それをシュネが炙って温めてみた。
『ふう……助かったわぁ……死にかけた……』
ゴーレムの中に入っているので表情はよく分からないが、意思疎通はできるっぽいのでとりあえず色々聞いてみることに……。
「もしかして転生者か?」
『ピンポン! 当たり! うち赤坂焔って言うんだけど、転生者知ってるって事はあなた達も転生者?』
あれ〜神様の話だと人類の種族に転生するって話だったと思うが、なんでこの赤坂って人は魔物に転生しているんだ?
『ああ、とにかく強いのに転生させてくれって願ったらこうなったわ。まさか人じゃなくなるとは思わなかったけどね』
とりあえずホムラと呼ぶ事にするが、ホムラの話を聞くと修学旅行中のバスが崖から転落して死亡し、気がついたら真っ裸になっていて即転生したらしい。
で、直ぐに死にたくなかったからとにかく強くしてって願ったらイフリータになってしまっていたのだとか……。
『はえーうちの種族ってイフリートっていうんやね。全然知らなかったわ。でも一緒に生活はしていたけど、皆煙モクモクで容姿も分からないし、意思疎通もできなくて凄い退屈だったんよ。お腹も空かないから水を飲んでいるだけで生きていけるし、蒸し焼きになった変な動物? 食べてみたけど美味しくなくてね!』
彼女は意識が覚醒してから数年間とにかく暇を潰しながら生活していたらしいが、森を出ようと歩いても迷ってしまい、結局イフリートの群れに戻る事幾ばくか……。
もう自分はこの姿でボーッと生きていくんだろうなーと思っていたら氷漬けになりそうになったらしい。
運よく氷漬けにならなかったのは他のイフリートよりも意識がある分、温度調節能力が高く、温度を上げて凍るのを防いだのだとか……。
『同じ転生者としてどうか哀れなホムラちゃんを助けてはくれないでしょうか……この通り!』
この通りと言われてもゴーレムの中に閉じ込められているだけなので、ゴーレムは動かないし、表情も変わらない。
声だけで頼まれているシュールな光景である。
「イフリートのボスがホムラだったらこっちとしては困るんだが?」
『ボス? ボスはあそこで氷漬けになっているよ』
見ると一際デカいイフリートが氷漬けになっている。
俺はそのイフリートから魔石を空間魔法で引っこ抜くと、氷漬けにされたイフリートのボスはバラバラに砕けてしまった。
『ボスー! って絆があるわけでも無いから悲しくないな』
ホムラは言動? がおちゃらけているけど、そうしないと精神が持たなかったのだろう。
一人漫才を続けて精神を保つとか……凄いな。
『で? 4人全員転生者なん?』
「ああ、と言ってもホムラとは別口の転生者だが……ただ修学旅行のバスが転落ってくだり……聞いたことがあるんだけど」
『え? もしかしてうちと同じ転生者が!』
「ライラックの前世の名前ってなんだっけ?」
俺の問いにメアリーが
「確か戸崎幸子じゃなかったかな?」
『ザッキー居るの!』
どうやら知り合い……というか同じクラスメイトだったらしい。
いる所には居るんだな……転生者。
『ねぇお願いえっと……名前教えて』
「俺がナーリッツ……ナツで良い」
「メアリーです」
「アキーニャだよ! アキで良いよ」
「シュネー……伸ばさなくて良いから」
『ナツ、メアリー、アキ、シュネね! ねぇお願い! うちをここから連れ出してよ〜もう本当に暇で暇で仕方がなかったの!』
「いや……魔物を連れ出すのは無理よ」
俺達はここら一帯の魔物を討伐しに来ていると伝えると、そこをなんとかとせがんで来る。
ライラックの友人と言っているから、ライラックに会わせたい気持ちはあるが、魔物だからな……。
「しゃーない、このアキ様にお任せあれ!」
いきなりアキがおかしなテンションで言い始めた。
「何をするつもりだ……アキ?」
「フッフッフ……ゴーレムに魂を宿す錬金術を行う!」
アキはこのままだとホムラは討伐対象なので、拠点まで連れて行ったらデーニッツさんに消失させられてしまう。
なのでアキの作った自律式ゴーレムと言い張ることにするのだと胸を張って言われた。
アキがどんどんマッドサイエンティストの道を進んでないか?
やり方としては肉体の再構築を行うらしい。
錬金釜にホムラの体を構築している魔石にエセ賢者の石、動力源のワイバーンの魔石を複数個、ミスリル銀とミスリル鋼、その他素材少々を入れて混ぜる……自我が崩れずに新しいゴーレムの体に定着できれば、イフリータとして討伐される心配も無くなるという寸法である。
『え……他に方法とかは……』
「現状無いから耐えられることを願って! ホムラの精神は魔力源である魔石に宿っていると思うから多分、きっと、恐らく耐えられると思うから!」
『凄い心配なんですけど……』
「まぁ準備するから待っていてよ」
アキに言われて、錬金術の道具を異空間から取り出して、錬成する準備を進めていく。
先ほどアキが言っていた素材を次々と錬金釜にぶち込んでいくが、エメラルド色に光り輝いていて、とてもでは無いが……人体には悪そうな色をしている。
「これの中にホムラの魔石入れたら消滅しない?」
「僕もこの中に入れって言われたら拒むな……」
「アキ……これはホムラが可愛そうだよ……」
『え? 見えないから分からないんだけど! そんなにヤバいの? 怖くなってきたんだけど! ねぇ!』
「うっさい! これより人体錬成実験を開始する!」
『ちょ! 絶対ダメなやつ! というか実験って言っわなかった!』
「ナツ! ホムラの魔石を投入!」
「俺知らねーぞ……」
ゴーレムに閉じ込めていたホムラの魔石を空間魔法で抜き取り、煮込まれた錬金釜に投入する。
『ギャァァァ』
「「「断末魔にしか聞こえないんだけど……」」」
ホムラの悲鳴をアキはスルーしながらかき混ぜていく。
かき混ぜること15分。
液体が固まってきたのか、アキは釜の中身をひっくり返して地面にぶちまける。
するとうねうねと動き出し、どんどん人型へと姿を変えていく。
『し、死ぬかと思った……』
髪色はエメラルド色で他の肌の部分は銀色、服装はブレザーとスカートを着用し、恐らく前世でよく着ていた学生服を再現していた。
顔立ちはほぼ日本人だな。
「よーし、実験成功」
ボコっとアキのことをホムラが殴る。
アキは吹き飛ばされて木に命中し、木が倒れる。
『魔物から人型のゴーレムにしてもらったのは感謝するけど! 一発殴る権利はあると思う!』
まぁこれはしゃーない。
「外観は喋るゴーレムだな……とりあえず再転生? おめでとう」
『……まぁ退屈から解放してくれるから感謝するわ。ところでこの体って食事できるの?』
すると倒れていたアキが復活し、排泄はしないが、体内で錬成が常に行われているから、体の修復だったり、体のパーツを変更したりするのに魔力以外のエネルギーを使うから、食事はできるとのこと。
味覚の再現もバッチリらしい。
『とりあえず何か食べさせてください!』
そう言われて、俺はジャムパイを異空間から取り出して、ホムラに渡すのだった。




