第132話 ヨトゥン討伐 子供達の救出作戦 2
恐らくこの子がフランソワ男爵の息子ヘルマン君なのだろう。
「ヤバい、孵化が始まってる!」
ヘルマン君の手足から徐々に変質が始まっていたので、俺は素早く、腹の中の孵化しかけているヨトゥンの幼体を体外に摘出する。
しかし摘出しても手足の侵食が止まらない。
「ええい! ままよ!」
俺はヘルマン君の手足を空間魔法で切断し、侵食が胴体に及ぶ前に処置する。
直ぐに回復魔法をかけた後にワイバーンの血で作られた治癒ポーションを飲ませると、切断面から手足が生えてきた。
肌の色がちょっと違ってしまっているが、新しく生えてきた手足に血が通い始めたらしく、血管から血が流れていくのが空間魔法を使って確認できた。
ヘルマン君の容体も安定している。
「ふう……なんとか間に合った……」
とりあえず変質を免れた135人の子供達が冷えない様にシュネが洞窟内を温めながら、体力回復を促すポーションも飲ませて、意識が戻るのを待つ。
以外にも一番最初に意識が戻ったのは、一番重症だったヘルマン君だった。
「……ここは……」
「大丈夫か? 名前分かるか?」
「ヘルマン・フォン・フランソワ……だ。君達が僕らを救出してくれたのかい?」
「ああ、とりあえず135名の救出はできた。元々何名居たかわかるか?」
「……155人」
「……申し訳ない。20名は間に合わなかった」
俺は異空間から温かいスープを出すと、スプーンでヘルマン君に少しずつ飲ませていく。
「一応体力を回復するポーションを飲ませたから、少しずつ回復はしていくと思う。ただろくに食べれてなかったから、スープを飲んで体を温めてくれ」
「……すみませんが、名前を聞いても?」
「失敬、ナーリッツ・フォン・ケッセルリンク。爵位は男爵だ。フォーグライン辺境伯と君の父親であるフランソワ男爵の要請で、ヨトゥンの討伐及び、攫われた君達の救出をしに来たんだ」
「……申し訳ない。領民達の救出感謝する」
「手足は大丈夫か」
「痺れがあるものの動かせる。ただ皮膚の色が違っているような……」
「ヨトゥン化が進行していたから手足を切除させてもらった。治癒魔法で手足を再生させたが、最初は違和感が凄いかもしれないが、鍛錬をすれば元の感覚に戻るはずだ」
「何から何まですまない……ヨトゥン達は?」
「この洞窟に居たヨトゥンは殲滅したが、外は吹雪が続いているから、もう少し休んでいてくれ」
「……ありがとう」
ヘルマン君はそう言うと安心したのか、また意識を手放してしまった。
そのまま数時間皆が起きるまで治療を続け、起きた人にはスープを振る舞うのだった。
一向に吹雪が収まらないので、俺達は天候を変えることに。
こういうのは一番出力が出るシュネの出番。
俺とシュネは洞窟の外に出ると、シュネが空気を取り込み始める。
口に魔力が集まってきて、真っ赤な火球が溜まっていく。
「ぺっ!」
シュネが火球を吐き出すと、どんどん火球は巨大化していき、雪雲に飲み込まれていくと、一気に破裂し、もう一つ太陽がある様にも見えた。
すると雪雲は消滅し、天候は一気に快晴へと変わる。
「シュネ、また火力上がったんじゃないか? あれ……地上に放ったら戦術核近くの威力がある様に思えるんだけど」
「……気化爆弾くらいじゃないかな……まぁ人に向けて放つつもりはないよ」
あんなの食らったら、流石に俺でも周囲の酸素が無くなって死んでしまう。
シュネの必殺技ということかな。
天候が回復(物理)したので、アキが土魔法で石の大きなソリを作り、その上に子供達を乗せて町へと戻る。
すると町の大人達がソリに乗った子供達を見つけて、再会を抱き合って喜ぶ。
「ケッセルリンク男爵家の皆さん、そしてデーニッツ殿、息子のヘルマンだけでなく、多くの領民の子供達を救っていただき感謝致します!」
「全員の救助とはいかず申し訳ない」
俺は代表して謝るが、フランソワ男爵は頭を上げてくださいと言い
「私達では1人も救い出すことができなかったのです。誰が責めることができるでしょうか」
フランソワ男爵は子供が亡くなった遺族の事を考えて、フランソワ男爵の屋敷へと改めて招待してくださった。
屋敷では様々な料理が用意されていて、特に肉料理が多く感じる。
「ささ、皆さんお食べください! 我々からの感謝の気持ちです!」
フランソワ男爵に言われ、俺達はお言葉に甘えて食事を頂く。
そのままフランソワ男爵にこのままヨトゥンの討伐を続けても良いかと聞くと、絶滅するくらいの勢いで倒して欲しいと懇願された。
「あんな魔物は居ないことに越したことはありません! これ以上の犠牲者が出ないためにもどんどん狩ってください」
「ヨトゥンの素材はどうしますか? フランソワ男爵家で買い取ります?」
「うちの領地でもヨトゥンの素材の加工は行われているが、輸送の手間を考えると、皆さんが辺境伯様の町に持ち込んだ方が良いでしょう」
それに……フランソワ男爵の領地はヒマワリの栽培とトナカイの家畜化で生計を立てているらしく、ヨトゥンの素材を使った製品の製造も行っては居たが、そこまで大きな産業では無いらしい。
それに元からヨトゥンを狩った冒険者も魔石と魔導具の素材になる溶けない氷の塊だけ採取していくらしいので、皮とかの素材だけでもフランソワ男爵領で残してくれればありがたいらしい。
「とにかくヨトゥンを駆除していただきたい! ちなみにどれぐらい滞在される予定ですか?」
「あと4日ほど」
「でしたら是非私らの館でお休みください!」
「良いのですか?」
「ええ、ただヘルマンの診療はしてもらいたいのですが……」
「それは勿論行います」
というわけでフランソワ男爵の屋敷に数日間お世話になることになるのだった。
翌日からヨトゥン狩りを再開し、フランソワ男爵から地図を見させてもらって、ヨトゥンが居ると思われる場所を教えてもらった。
「さてと、ここら一帯のヨトゥンを絶滅させるぞ!」
「「「おー!」」」
とりあえず俺とデーニッツさんの組とアキ、シュネ、メアリーの3人組に分かれてヨトゥンを殲滅することに。
フランソワ男爵には悪いが、アキ達の組は魔石と氷の塊だけ採取して残りは燃やしてしまう。
運搬の手間を考えると仕方がないね。
というわけで、デーニッツさんとヨトゥン狩りに向かい、群れを次々に襲撃していく。
ヨトゥンの群れに俺が近づくと、子供ということで、ヨトゥン達が群がり、それをデーニッツさんが風の刃の魔法で首を刎ねていく。
単純だが、効率の良いやり方である。
「ときどきメスが混じっているな……ヨトゥンのメスは子供の変異体だから、どっからか攫われているな」
「にしてはヨトゥンの数多くないですか? そんなに人間の子供はここら編には居ませんが」
「研究者によると猿とか人型生物の子供もヨトゥンは繁殖に使っている可能性があるらしい……」
「それじゃあゴブリンとかも殲滅しないとヨトゥンが増え続けるじゃないですか!」
「そうなんだよなぁ……だから俺達みたいな魔法使いだったり、シルバー上位の冒険者パーティー複数がヨトゥン狩りに駆り出されるんだよ」
「難儀なものですね」
「全くだ」
結局俺達は500体近くのヨトゥンを狩っていき、ヨトゥンの毛皮なんかはフランソワ男爵の領民に売り、魔石や溶けない氷の塊は辺境伯様に届けるのであった。




