第131話 ヨトゥン討伐 子供達の救出作戦 1
冬休みも中盤となり、俺達はデーニッツさんと一緒に辺境伯様の命令であるヨトゥンの討伐をすることになった。
その為飛行魔法で該当地域に移動した。
「デーニッツさん、雪凄いですね」
「ああ、ここらは豪雪地帯でな、ヨトゥンの討伐として辺境伯軍を送るのは難しいんだ」
「なるほど……それで俺達が呼ばれた訳ですね」
「前にも言ったが、ヨトゥンは子供を攫う魔物だ。呼び寄せることもやってもらうから頼むぞ」
「はい!」
ハーゲンシュタットの町から飛行すること4時間……吹雪に見舞われて、思うように飛行できない時間もあったが、なんとか該当の領地……フランソワ男爵領へと到着し、屋敷へと入れてもらったが、屋敷の人達は皆揃って憔悴していた。
「どうかしたのか?」
「いえ……それは……」
デーニッツさんがメイドに聞いてもはぐらかすばかりで相手にならず、直ぐに領主のフランソワ男爵との面会となった。
フランソワ男爵は髭を生やした筋肉質の男性……場所が場所ならヴァイキングと呼ばれた武装集団のイメージそのまんまの容姿をしていた。
ただフランソワ男爵も憔悴しきっている。
代表であるデーニッツさんが憔悴している理由を聞くと、彼の唯一の子供であるヘルマン君がヨトゥンに攫われてしまったらしい。
いや、ヘルマン君だけでなく、町の子供の殆どもヨトゥンに攫われてしまったのだと……。
「どうしてそんなことに……」
「この町では伝統的にヨトゥンに襲われないように祈願する祭りが行われ、子供達と護衛の大人達で神樹に祈りを捧げるという儀式があるのだが、その会場をヨトゥンの群れが襲ったのだ……討伐隊は大雪で身動きが取れず、既に5日が過ぎてしまっている……息子が苗床にされてしまっているのではないかと思うと食事もまともに取れん……」
そりゃ食事もまともに取れないわな……。
「デーニッツさん」
「ああ、ナーリッツ。事は急を要するようだ……フランソワ男爵。俺達は前々から男爵がお館様に要請していたヨトゥンの討伐に派遣された魔法使いだ。ヨトゥンを殲滅する覚悟だったが……男爵の息子や領民の子供達の救出もしてくるが……」
「頼む! もう私達では祈ることしかできなかったんだ! 救出してくれれば相応の報酬は支払う!」
「それは後々……俺達は一刻も早く救出に向かう」
「頼む……息子を……子供達を救ってくれ!」
「おう」
屋敷から出た俺達は吹雪の中を進んでいく。
吹雪で外だと声も聞こえないので念話で会話する。
『とりあえず攫われた神樹のある会場に向かってみましょう』
『そうだな……フランソワ男爵から貰った地図によるとこっちか……』
雪を魔法で溶かして道を作り、進んでいくと、大きなモミの木がそびえ立っていた。
上に星の飾りでもつければクリスマスツリーにでもなっただろう。
……時期的にもしかしたらこの地域にも転生者が居て、クリスマスを祝うのが変質して、祈りを捧げる儀式に変わったか?
まぁそれはどうでも良い。
ここから俺は探知魔法と空間魔法で周囲を探ると、ここから10キロ離れた場所に魔物と人の反応が多数いることが判明した。
『デーニッツさん、見つけました。北北西に約10キロ行ったところにある洞窟に反応が多数です』
『よし、一気に制圧するぞ』
アキが大熊に変身し、それに乗って俺達は雪道を進んでいく。
『アキ寒くないか?』
『大丈夫、体温を保つ魔法使っているし、大熊になっている時は毛が伸びるから思った以上に寒くないから』
『なら良いんだが』
アキに乗って移動すること20分。
吹雪の中を突っ切り、洞窟に到着すると人々のうめき声とヨトゥン達の笑い声が響き渡っていた。
『デーニッツさん、ヨトゥンは全員倒しますが、ヨトゥンになりかけている子供達はどうしますか』
『5日も経過していると変質も始まっているか……助けられる奴は助けれるか』
『わかりました……治療もできるだけしますので、ここで今日は魔力を使い切るつもりで行きますが……よろしいですね?』
『ああ、かまわない』
デーニッツさんが合図を出すと、俺達は一気に洞窟の中に乗り込んだ。
俺達の気配に気がついたヨトゥン達は巨体を動かしながらこちらに近づいてくる。
「これが……ヨトゥンか」
現れたヨトゥンは白い体毛に覆われた雪男やイエティとも言うべき姿をしていた。
オスが殆どであるが、メスの個体も居て乳房や尻が膨らんでいる。
ただ顔は猿みたいな顔をしていて人だった面影は一切ない。
苗床にされた子供は変質が進むと女のヨトゥンへと変化する。
つまり、目の前にいる女のヨトゥンも元は人の子供だったはずなのである。
「悪いが、これ以上の犠牲者を出さないためだ」
俺は襲いかかってきたヨトゥン達を風の刃で首を刎ねる。
ブラッディベアーと同じくらいの魔物と聞いていたので風の刃で倒せるかなと思ったが、案外呆気なかったな。
「俺の感覚がバグっているのか? ワイバーンくらい強くないと戦っている感覚が無いんだよな……一方的になり過ぎて……」
ただ今回は戦うというより駆除である。
痛みなく倒してしまったほうが良いだろう。
「悪いな」
メスのヨトゥンに手を合わせてから亡骸を異空間に収納し、先に進む。
メアリーやアキ、シュネ達も洞窟内を進んで、どんどんヨトゥンを倒していっている。
俺はアキのゴーレムを取り出して、彼女達が倒したヨトゥンの亡骸を回収するように指示を出す。
美少女ゴーレム達は敬礼をすると、洞窟内を走り出していった。
分かれ道をどんどん進んでいき、最奥に到着すると、お腹が膨らんだ子供達が床に寝かせられていた。
「大丈夫……ではないな」
この部屋を警備していたヨトゥン達を殲滅し、子供達に駆け寄るが、どう対応するべきか……。
腹に卵を植え付けられているので、卵が孵る前に体外に摘出するしかない。
アキ達も道中のヨトゥンを倒し終わったのか、合流し、100人以上いて苦しんでいる子供達を前にどうするか話す。
「……時間はあまり残ってねぇ。ここで摘出するしかねぇだろ」
デーニッツさんは覚悟を決めたらしいが、俺が制止する。
「何故止めるナツ!」
「俺がやります……空間魔法で体内の様子が見える俺がやった方が子供達を傷つけずに済みます」
「ねぇ……なんか手術するような感じで言っているけど、ナツが空間魔法で体内からヨトゥンの卵を吸い出せばいいだけじゃない?」
「「あ!」」
俺とデーニッツさんはアホみたいな声を出し、その手があったかとアキに言う。
そうと決まれば話は早い。
俺は空間魔法で体内の卵に目星を付けて、異空間を体内に作り出し、卵を吸い出していく。
お腹の中にアメフトボールの様な大きさの卵が植え付けられており、取り出した瞬間にベコッと子供のお腹がへこんだ。
「ナツ、体力回復のポーションを出しておいて! 僕達が子供達に飲ませていくから」
「了解」
メアリーに言われて、ポーションを異空間から取り出すと、彼女達やデーニッツさんが受け取り、卵を取り除いた子供達にポーションを飲ませていく。
出産後のダルダルに伸び切った皮余りのお腹みたいに皆なっているが、子供なので成長すればある程度はハリを取り戻すだろうし、死ぬよりはマシだ。
で、俺がどんどん卵を取り除いていると、一際いい服を来ている少年を見つけるのだった。




