第130話 ライラックを交えてのワイバーン狩り 3
えー現在ワイバーンのいる山脈の中腹……私はナツに背負われて、飛行している状態。
目下にはワイバーンの姿がバッチリ見える位置まで来ています。
「生きてる……生きてるワイバーンだ……」
「そりゃワイバーンも魔物だから生きているよ」
当たり前なのだが、私が見てきたワイバーンはナツ達によって殺された後……動いているし、こっちに敵意を向けているワイバーンを見るのは初めてである。
「あれ……こっちに向かってブレス吐き出そうとしてない?」
「しているね〜まぁ障壁で防げる火力だけど前面に魔法障壁展開してみて」
ナツに言われて、私は魔法障壁を展開し、ナツも私の障壁よりも体に近い位置で障壁を展開する。
するとまだ1キロ近く離れているのに、ワイバーンは火球を私達に向かって放ち、呆気なく私の魔法障壁が破られて、ナツの張った魔法障壁で火球が消滅する。
「ライラック、魔法障壁の強度不足。練習しなきゃ」
「魔法障壁を展開できるくらいの魔力量になったの最近で……コントロールがまだイマイチ」
「ほら、また飛んでくるよ」
見るとワイバーンがまた火球を放ってこようとしている。
「火球に対して障壁を45度くらいの角度を付けて見て、あと少し障壁を分厚く」
「わかった」
私はナツに言われた通りに障壁を展開してみる。
するとワイバーンの放った火球は私の障壁に弾かれて、明後日の方向に飛んでいった。
「あれ? 今回は破られなかった?」
「避弾経始……傾斜装甲とも言われる理論だな」
ナツもデーニッツさんから教わったらしいが、魔法障壁1つでも、いかに少ない魔力量で最大限の防御効果を発揮できるかについて教えられたらしい。
ナツみたいに大量の魔力を持っているなら、魔力量を増やして、そもそもの防御力を上げてしまっていい。
しかし、そうでない場合は障壁を多重に展開し、重ね合わせることで空気の防御層を作ることで、魔法の貫通力を減らす方法や、今回みたいな斜めに障壁を展開し、正面からの厚さを擬似的に増やすみたいな事をして、魔力量に頼らない工夫が必要と言われた。
「障壁の形状も面じゃなくて半球状が理想らしいんだけどな。こればっかりは俺もまだまだ技術不足だから日進月歩で挑まねぇといけねぇ」
魔法が使えるようになりたての私ではまだ難しいだろう。
ワイバーンからの火球を障壁で弾きながら進んでいき、いよいよ残り100メートルくらいになると、火球ではなくブレスに切り替えてきた。
「流石に鬱陶しいな」
ナツはブレスを水の魔法で打ち消すと、ワイバーンの口に向かって氷の塊を発射し、命中したワイバーンは仰け反ってしまった。
「今だ!」
ナツはワイバーンまでの道筋を氷で作り、私はその道に乗り、滑りながら一気に距離を詰める。
「でいりゃぁ!」
氷の道が途切れた所から一気に大ジャンプをし、フィギュアスケーターみたいに体を回転させながら、ワイバーンの首を斬り裂く。
ポーンとワイバーンの首が上空に飛び、私は慣性のまま進みながらも、僅かな時間使える飛行魔法で滑空しながら着地する。
「……倒せた? ワイバーンを?」
片手剣にはワイバーンの血がびっしり付いているし、振り返ると、ワイバーンの巨体が倒れて大きな音が鳴る。
「お、おおお!?」
倒せたという喜びが後から感じできて、凄い達成感が襲ってくる。
ほぼナツにお膳立てされたし、アキが作ってくれたミスリル鋼の剣のお陰であるが、それでも嬉しかった。
「……いけないいけない! 血抜きしないと」
私がワイバーンに近づいていくと、ギシャァァァともう一頭少し小さいワイバーンが私を威嚇している。
「あ……」
この時期はワイバーンは番で巣ごもりしているというのを私は思い出し、まだもう一頭ワイバーンがいた事が頭から抜けてしまっていた。
ワイバーンが私に噛みつこうと大きな口を開けて襲いかかってくる。
体が硬直して思うように避けられない……。
ザシュ
私は痛みを覚悟した瞬間にワイバーンの首が飛ぶ。
「大丈夫か?」
ワイバーンの首を飛ばしたナツがそこにいた。
空から降りてくるナツを見て、私は凄く頼りになるのと、年下の男の子の体なのに、男らしく感じてしまった。
(あ、ヤバい……前世で恋した時と同じ感じがする)
「ん? 本当に大丈夫か? ボーッと俺のこと見て」
「だ、大丈夫。ごめんなさい。もう一頭いること頭から抜けていて」
「しゃーない、一頭倒せただけでも上々だろ。徐々に慣れていけばいいし」
「え? 徐々に慣れていけば?」
「今回の倒した感覚を忘れないうちに何頭か倒しに行くぞ!」
「ええ!」
恋心も一瞬で吹き飛び、私はワイバーン狩りに連れ回されることになるのだった……。
その日のうちに5頭も私はワイバーンを倒すことになり、拠点に戻った時には緊張が解けて、腰砕けになってしまった。
別行動をしていたメアリーとシュネは私とナツの倍のペースで狩り続けたらしく、拠点にはワイバーンの亡骸が山積みになっていた。
ナツがそれを回収しながら
「今日合計80頭くらいか?」
とアキ達に聞いて、アキも82頭と答える。
本人達的にはせっかくの3連休のうちにもう少し狩りたいとのことでまさかの1泊が確定。
特注ゲルのベッドは凄い寝心地が良かったし、シャワーだけでなく五右衛門風呂を持ってきて、冒険中にも関わらず風呂に入ることもできる充実した夜を過ごすことができた。
しかも野営警備もアキのゴーレムがやってくれるので、私達はぐっすり寝れまし……ナツの作るワイバーン料理はどれも美味しかったし……。
翌日はワイバーンを量狩ることが目的になっていたので、アキもワイバーン狩りに参加し、ゴーレムと共にワイバーンの解体を任されることになり、悲鳴をあげながら、10時間近くワイバーンの解体作業を続けるのだった。
町に戻った時には夜になっており、くたくたの私は洗浄の魔法で体を綺麗にしてからベッドにダイブ。
そのまま泥のように眠るのだった……。
「え? この片手剣……使い続けて良いの?」
休み最終日、私はナツに片手剣を返そうと部屋を訪ねると、私が使い続けてくれと剣を託された。
「正直ライラックが剣を持っていた方が戦力になる。ライラックもこの剣を持っていたらワイバーンと勝負にはなるし、他の魔物には負けねぇだろ? 武器は使ってなんぼ。俺が死蔵しておくよりずっといいからな」
「……ありがとう! 大切に使わせてもらうね!」
「おう! またワイバーン狩り行く時は手伝ってくれよ」
「ごめん、それは解体作業要員増やして……」
こうして私のワイバーン狩りは終わるのだった。




