第13話 複数人で知恵を出し合うからこそ人は進歩する
魔法を使う、眠って回復するのサイクルを繰り返すこと4回。
3時間を1サイクルとして約12時間が経過したことで、一旦魔力の底上げ作業は中断して、飯を作る班と調べ物をする班に分かれて作業することになった。
料理を作れるのが俺だけなので、料理を作れるようになるまでは俺が料理班に付くことに決まり、料理を教えてもらう人を付けて料理していく。
今回はつららちゃんが該当し、桜花さんと実里の2人は書庫にて調べ物。
「つららちゃんどれくらい料理できる?」
「家庭科で習った程度です……こんなことになるんだったらお母さんの料理の手伝いをしておくんでした……」
「ははは、まぁ気楽にやろっか。まずは鍋を使った米の炊き方から覚えていこう」
「はい!」
米を研いで、少し浸けて、鍋に入れてから火をかけ、沸騰して2分ほど中火を続け、そしたら弱火にして7分から10分ほど火をかける。
そしたら蒸らして少しすれば米は炊き上がりとなる。
蒸らしも10分くらいなので、鍋で炊くとだいたい炊飯器の早炊きと同じくらいで炊き上げることができる。
まぁ炊飯器と違い、火の調整をしなければいけなかったりするので少し手間ではあるものの、炊飯器が壊れたり、停電してガスコンロしか無いなんてなった時くらいしか現実世界だと用途は無いかもしれないが……。
異世界行ったら米が容易に手に入るか分からないが、炊飯器なんて便利な物は無いので鍋で炊くしかないのであるが……。
事前にみんなの意見を聞いてハンバーグを作ってほしいと言われていたので、ハンバーグとそれに合うスープも作っていく。
つららちゃんには贅沢に牛肉をミンチマシンでミンチにしてもらって、俺が切った食材と一緒に混ぜてもらい、フライパンで焼いていく。
並行して作るスープは簡単にコンソメスープ。
調味料を漁っていたらコンソメの素があったので、これでスープを作っていく。
異世界に行ったら調味料類は殆ど無いので現地で作れる物は作らないとな……。
コンソメって素材から作るとなるとすごい面倒くさいんじゃなかったか?
キャベツ、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ソーセージをスープの具として鍋に入れて煮込んでいく。
この時野菜のカットもつららちゃんに練習してもらった。
家庭科の授業はちゃんと受けたと言っていただけあって、野菜を切るだとか言われたことはちゃんとできる。
ちゃちゃっとハンバーグを焼き終え、茹でたブロッコリーを一緒にプレートにのせ、ソースをかけてハンバーグは完成。
米が炊き上がり、少し遅れてコンソメスープも完成する。
中央の部屋に料理を持っていき、書庫に居る桜花さんと実里を呼んで、4人で食べていく。
「んん、手作りだとどの料理も真心が込められていて美味しいね」
「つららナイス!」
「実里ちゃん、私は夏樹さんに言われたことしかやってないよ!」
「いや、つららちゃんが手伝ってくれたお陰でこっちも楽できた。ありがとう」
「そ、そうかな……えへへ……」
頬を染めて照れているつららちゃんも可愛いな。
食事を終えて今回から食器を片すついでに明日の仕込みをやるからと片付けも俺とつららでやると言うと、桜花さんと実里からありがとうと言われ、自分達の順番になったら手伝うとも言われた。
食器を洗ってからつららちゃんに料理を詳しく教えるついでに明日の朝食の仕込みをしていく。
と言っても魚を食べやすいサイズに切ったり、茹でたじゃがいもとマヨネーズ、その他スライスした野菜を入れたポテトサラダを作ったり、ゴチャついていた調味料類を分かりやすく整理したりとかである。
「夏樹さん、異世界ではパン食が主流と食事の合間に言っていたじゃないですか」
「うん、そうだな」
「この空間で発酵とかするんですかね……」
「うーん、現状だと難しいと思う。発酵とかを促す魔法とかを覚えないと作れないんじゃないか?」
「ですよね……発酵ってどんな仕組みなんですか?」
「体に良い意味で腐るのが発酵、悪い意味が腐敗……簡単に言えば微生物が繁殖して数を増やしていくのがそれだな」
「どうやればその魔法が覚えられますかね?」
「うーん、発酵食品を使って練習してみる……とかか?」
「ちょっとそう言う便利な魔法が無いかこの後調べてみることにします」
「俺も調べてみるわ」
仕込みを終えて書庫に向かうと、桜花さんと実里は既に調べ物を進めていた。
「あ、夏兄! 桃奈さんから夏兄が空を飛んだって聞いて、類似の魔法が無いか調べたんだけど……あったよ! 飛行の魔法」
「お! マジか。というかやり方とかを学んでから試すべきだったな……見せてもらっても良いか?」
「どうぞどうそ!」
実里に本を見せてもらうと、飛行と漢字で書かれた魔法の仕組みが書かれていた。
大雑把に説明するとこれは魔法に対するイメージを強く持つための設計図みたいな物で、飛行の魔法だと手順が書かれていた。
1.体重もしくは物質の重さを軽くする軽量の魔法をかける
2.風を起こして浮力を確保する
3.浮き上がったら推力となる魔法を使い、推進する
4.速度が上がると風や空気が痛く感じるため身体強化の魔法もしくは防御系の魔法で周囲を覆う
5.飛行高度が高くなれば低温状態となるため注意されたし
6.降りる時は推力を切り、滑空する要領で地面へと降りる
飛行する魔法は色々な魔法の複合であることがわかった。
浮き上がるだけなら簡単かもしれないが、自身の体を飛行機の代わりにするとなると確かに複雑な魔法が必要になってくるだろう。
「ん? 飛行機の代わり?」
「夏兄何か思いついたの?」
「いや、俺達って機械や乗り物なんかに乗って体験しているから、そのイメージに近い事を魔法で再現するのもやりやすいんじゃないかって思ったな」
「例えば?」
「うーん……キックボードとか? タイヤの代わりに物を浮かせる魔法で数ミリでも地面から浮いていて、推進力は自身が地面を蹴ることで補填するから魔力の消耗を少なく移動できるし、高速で移動するなら推進力を魔法で代用すればいいかなって」
話を聞いていた桜花さんが
「となると必要な魔法は物を浮かせる魔法、身体強化もしくは防御系の魔法、推進力となる魔法の3つかな? 言ってしまえばホバークラフトと同じ仕組みだし」
「ホバークラフト……水陸両用の乗り物でしたっけ」
「そうそう、一時期は未来を担う乗り物って期待されたんだけど、メンテナンスが大変だったり輸送コストが悪かったりで……民間では殆ど見ることの無い乗り物だね」
「でも魔法だとそれが当てはまると」
「まぁ一番近いのはそらとぶ魔法の絨毯とかの方が良いかもしれないけど」
やっぱり1人で考えるより複数人で考えた方が色々アイデアが出てくる。
「つららちゃんの方は発酵に関する魔法はあった?」
「いえ、まだ見つかってません」
「発酵?」
桜花さんが食いついてきた。
「異世界だとパン食が主流なんでこの世界にいるうちにパンを作れるようにしておきたいんですが、この空間って物が腐るとは思えないんですよね……だから魔法を使って発酵を促すことができるんじゃないかって考えて……」
「あー、パンを膨らませるのにイースト菌が必要だからか……ちょっと私の方でも調べてみるよ」
「お願いします」
この後3時間ほど調べ物をしてから眠りに就き、神の間での2日目の生活が終わるのであった。




