第123話 味噌バターコーンラーメン
夏休み期間も終わり、予備校は再び学生達で溢れかえっていたが、夏休み期間もほぼ登校していた俺達のクラスはいつも通り授業が進められていた。
特に数週間は何も起きなかったが、クム商会のゼファーさんに頼んでいた郊外の農地の購入ができたので、うちの家族やメアリーの家族をそっちに引っ越しさせたくらいが大きな出来事であった。
そんな久しぶりに平穏な生活をしていたのだが、何事も無く2学期が終わる……なんてことは無く、また新しい事件が起きようとしていた。
ある日の事、俺達(メアリー達いつもの4人)は辺境伯様より呼び出しがあり、辺境伯様の屋敷に向かうと、応接室にて辺境伯様があることを頼んできた。
「アキのゴーレムの増産ですか?」
「ああ、あれほど高性能なゴーレムは見たことがない。息子のフレデリックも譲られたゴーレムに夢中だ。デーニッツからもゴーレムの有用性は聞いているからな。どうにか数十体……いや100体ほど作ることは出来ないかな」
「在庫があるので100体譲ることは可能ですが……」
アキ的にはミスリル鋼やミスリル銀を使った新型ゴーレムの開発を行っていたので、既存ので良いのか……というのと、そのゴーレムを何に使う気か聞きたくなったらしい。
「1つはケッセルリンク家の有用性を内外にアピールするためさ」
高性能ゴーレムの研究は各地で行われているが、目に見えた成果を出せたところは無いらしい。
その状態のところにアキの高性能ゴーレムを見せつければ、ケッセルリンク家を抱えている辺境伯家の箔も上がるらしい。
貴族らしい考え方だな。
別に譲るのは良いが、人型で本当に良いのか辺境伯様に聞く。
「と言うと?」
「私が作りやすいから人型にしていますが、やろうと思えば動物だったり、ドラゴンの形にすることはできますが」
辺境伯様は少し悩んだ後に
「いや、人型で自由に手足を変形させられることに意味がある。フレデリックと同型……できればメイド服を着た姿をしたタイプを用意してくれないか」
「かしこまりました」
辺境伯様は勿論代金は支払うとしてくれて、1体当たり白金貨150枚で買い取ってくれる事になった。
ワイバーンの魔石と魔物の素材なので、値段的には妥当である。
ただそんなにポンポン大金を支払って大丈夫なのか心配になるが、辺境伯様曰く、このゴーレムは他の貴族達に貸し出す事で利益を得るらしい。
いざという時に普通の冒険者よりも高い戦闘能力で主人を守り、普段はメイドの様な仕事をさせれば借りたい者は多いだろうとのこと。
十数年かけてペイできれば十分な投資先になると辺境伯様は話す。
「この後ケッセルリンク家に領地を譲るときにこのゴーレムは開拓の大きな手助けとなってくれるだろう。それにフレデリックに与える領地開発にも半数のゴーレムは送るつもりだ」
ゴーレムであれば不眠不休で働ける為、開発も素早く進むだろう。
こうして辺境伯様にゴーレムを100体売却することになるのだった。
後々思えば、高性能ゴーレムと言う武力を少しでも俺達から削る事で、パワーバランスを有利にしたい思惑があったのかもしれないが……そこまで気にすることはなかったのであった。
「いやぁ、アキがかんすいを作ってくれるから、ラーメンが色々作れるよ」
「それは良かった」
夏が終わり秋が到来したが、少しずつ気温が下がってきていた今日この頃、俺はラーメン作りに熱中していた。
日本の国民食と言えば米系の食べ物や天ぷらを思い浮かべるかもしれないが、ラーメンも国民食に認定されているくらい馴染み深い料理である。
それが定期的に食べたくなるというのは元日本人として仕方がないことだろう。
というわけで、前は小麦粉の入手に四苦八苦していたが、町で良質な小麦粉を入手できるようになったし、少々高いながら鶏の卵を入手することもできた。
日本に比べると、卵1個で日本の卵1パックくらいの値段がするが、養鶏産業が未発達で大規模な養鶏場というのがなかったのである。
しかも鮮度が大切なので、郊外で各農民達が農業の片手間で育てて、それを卵を取り扱う商会に売却し、そこから各所に売られていたので、手間賃も多かった。
あと日本みたいに生で食べると高確率で腹を壊すので、生食厳禁である。
村でラーメンを作った時には卵を麺の材料に使っていなかったが、今回は使える為、贅沢に卵を使い、小麦粉と少量のかんすい、あと塩を混ぜて麺を作っていく。
手打ちで麺を作り、アキに作ってもらった中華包丁で切っていけば麺の完成である。
「パスタとは作り方が全然違いますね」
ちなみに屋敷の台所で作っているため、雇っているコックも俺の作る様子を見てもらい、今度頼んだら作れるように学んでもらっていた。
「そうだな。パスタはソースを絡めるのが殆どだけど、この麺はスープの中に浸すからな」
「なるほど……スープに浸して味を染み込ませるのですね」
「そうそう。ただ時間が経つと麺がスープを吸って膨張し、味がぼやけてしまうから、麺を茹でる時間や出すタイミングなんかを計算しながら作らないといけない」
「作り置きが許されない料理なのですね?」
「卵を使った麺は特にそうだな。卵を使わずに麺を作る時はかんすいの量を増やす必要があるけど」
「ナーリッツ様はどこでそんな知識を身に着けたのですか?」
「いや、村で食べられる物があまりなかったから、少しでも美味しく、腹を膨らませるための工夫だよ」
「失礼しました」
スープの方は異空間に前に大量に作った作り置きがあり、コックに試飲してもらいながら材料の説明をしていく。
手間と時間がかかるのは豚骨スープで、味噌、塩、醤油スープは豚骨スープに比べると短時間で作ることができる。
「なるほど……鶏肉から作った油……鶏油をスープに混ぜることで味に深みが増すのですね」
「結構これが大切だと思うし、醤油や味噌は現状俺達しか作れないし」
「醤油と味噌は製法を売却しませんか? 多分多くの商人が飛びつきますよ?」
「デーニッツさんにも前に言われたな……クム商会に最初に話を持っていくか」
そんな事を話していたらラーメンが完成し、メンマは竹が無かったので作れなかった代わりに、今回は味噌バターコーンラーメンとした。
味噌スープにコーンが散らばっていて、てっぺんにバターを一欠片置くタイプのラーメンで、バターを徐々に溶かしながら味変を楽しむのである。
家臣の皆にも食べてみてもらったところ
「なんやこれ! 滅茶苦茶美味いやないか!」
「美味しいね!」
フレンとマンシュタインはこれを凄く気に入ったらしく、味噌ラーメンが好物になり、週1てコックに頼んで作ってもらうくらいどハマりし、ライラックに至っては
「またラーメンを食べることができた……」
と感動して涙を流すのであった。




