第112話 1泊2日の狩り合宿 中の下 VS地底神 1
「さて、皆は無事に狩りができているかな〜」
俺達4人はジェイシェット教官に言われた通り別の場所で狩りを行なっていた。
俺の足元にはブラッディベアーの群れが倒れていた。
見た目は無茶苦茶綺麗である。
「ナツの新技ヤバすぎるでしょ」
「対人、対魔物には特攻だね」
「まーな」
アキとシュネに言われたが、俺が転がっているブラッディベアー達にやったのは塩のテレポート。
空間魔法が使えるのだからワープもできるだろうと練習していて、身体の移動はまだ十数メートル動く程度であったが、軽い物であればもう少し遠くまでワープさせることができたし、異空間にある物をその場所に出現させる……みたいな事もできた。
さっきの塩のテレポートの話に戻るが、塩を脳みそに直接ワープして流し込んだのである。
脳に塩なんか流し込んだらそりゃ死んでしまうわな。
塩じゃなくでも蜂蜜なんかでもブラッディベアー達は死んでしまったが……。
高濃度のアルコールを流し込んでも死ぬだろうな。
まぁ手に入りやすさと素材を壊さない目的で塩にしたけど、やろうと思えば石とか杭をワープさせて突き刺す事もできる。
どんどん必殺技が増えていくな。
亜空切断だけでも対処できる奴居ないのに……。
お陰で無傷のブラッディベアーの亡骸が無数に転がっていた。
「傷がないから異空間にちゃっちゃとしまったほうが良いな」
十数頭のブラッディベアーを異空間に仕舞いながら、アキ達を見ると、アキはゴーレムの改造に励み、シュネは探知に集中しているらしく、より強い獲物を探している。
メアリーは道中で見つけた山葡萄を食べていた。
「メアリー美味しいのか? それ?」
「うーん、凄い渋い。まぁこれはこれで面白い味だけど……ナツが一瞬で倒すから暇になっちゃったよ」
「わりい……どうする? この狩場だとブラッディベアー以上の魔物は居なさそうだが」
「そうだねぇ……」
メアリーとそんな事を話していると、集中していたシュネが遠くて無数の魔力反応を見つけたと言う。
「動いていないんだけど……その地域全体が魔力を帯びている感じがする……」
「お、まじか……ちょっと行ってみるか」
アキを俺は背負って空を飛び、シュネの案内でその場所に向かってみるのだった。
シュネが案内していると、俺やメアリーも探知の魔法に魔力反応を感じた。
「本当だ。一帯が魔力を帯びている」
俺が空間魔法を駆使して更に探知の精度を上げると、山の中にある鉱石から魔力がしているように思えた。
「山の中にある鉱石に魔力反応があるな……アキ、そんな鉱物ってあるのか?」
「現物を見ていないから分からないけど、魔石の他に魔力が宿ると言うとミスリルやアダマンタイト……とか? どちらも希少金属だから鉱山を見つけた事を報告すれば辺境伯様から褒められるんじゃないかな?」
「サンプルを少し回収することは許されるだろ。アキの錬金術で新しい装備を作れたりしないか?」
「確かに! 錬金術の素材になるから回収しよう!」
アキはウキウキになり、反応が多い場所に到着し、土魔法で掘り進めていくと銀色に光り輝く鉱石が現れた。
「ナツ! これミスリル銀だと思う」
「ミスリル銀? ミスリルと何か違うんだ?」
興奮するアキの話によるとミスリルの更に良質な物をミスリル銀と呼ぶらしく、通常のミスリルは鋼の様な硬さを有するのであるが、ミスリル銀は噛むと歯型ができるほどの柔らかいのが特徴であり、とある金属と合金にすることでミスリル鋼へと化けるのだとか。
ミスリル鋼は通常のミスリルよりも硬くて柔軟性に富み、そして軽い為、切れ味勝負の武器や防具の素材として活用されるらしい。
そういえば辺境伯様の屋敷に飾ってあった甲冑の1つがミスリル鋼でできていると聞いたような……。
「お宝がザクザクだぁ!」
大興奮のアキが土魔法でどんどん掘り進めていき、トンネルを作っていくが、掘り起こしたミスリル銀と思われる鉱石を俺とメアリー、シュネが回収して、俺の異空間に仕舞っていく。
明かりの魔法でトンネルを照らしていくが、アキは掘って露出したミスリル銀は全て俺達に回収させているので、土色のトンネルを奥まで進んでいくだけであったが、いきなり前を進んでいたアキの姿が消えた。
「「「アキ!?」」」
「いてて……」
居なくなった位置に移動すると、地下空洞とぶつかったらしく、アキは空洞の底に落ちてしまったらしい。
まぁ底と言っても3メートルも落ちてないが……。
俺達もゆっくり降りてから明かりを広げると、巨大な大空洞の壁一面にミスリル銀が露出していて、光に乱反射して光り輝いている。
「「「「おぉ……!」」」」
俺達は感嘆の声を上げるが、巨大な魔力反応が迫っていることに気がついた。
「何か来る!」
明かりの範囲を更に広げると、真っ黒の体にギザギザの口が付いていて、側面に真っ赤に輝くルビーの様な眼球が動き、8本の足が蠢いている。
「蜘蛛の化け物!」
「いや、あれは地底神シュピンネだよ」
メアリー曰く、神の名前が付いた魔物で、既存の魔物とは一線を画す魔物に神の名が与えられることがあるらしい。
地蜘蛛の魔物が成長していくと巨大になり、最終的にシュピンネになるらしいが、神の間で読んでいた魔物について書かれた図鑑でもドラゴン並みに強いと書かれていたらしい。
「えっと生半可な魔法は効かず、眼球のような体に露出する宝石から魔力光線が発射される」
「ということは!」
俺は魔法障壁を全力で展開すると、地底神の体が赤く光だし、ビームが俺達に襲いかかる。
障壁に当たった光線は周囲に拡散するが、壁はドロドロに溶け出して、銀色に輝く。
「へぇ、こうやってミスリル銀が作られるんだ」
「アキ! 感心している場合か!」
アキにツッコミを入れるが、シュネが反撃に移る。
光線が止んだ瞬間に障壁の一部を解除し、そこからシュネの熱線が口から放たれる。
3000度を超える高温の熱線……火炎放射が地底神に命中し、地底神の体液に反応してか爆発する。
「やったか!」
「メアリーそれフラグ」
「言ってみただけ……神を名乗る魔物だからこの程度じゃ……やっぱり」
地底神はピンピンしている。
ワイバーンでも火傷する火力なんだけどな。
再び光線を放ってくるが、これはアキが土壁を出すことで防ぐ。
障壁よりもこの周囲の土で壁を作った方が魔力の消費を少なく防ぐことができる。
俺は異空間からアキ特製の魔力回復ポーションを皆に渡して飲み干す。
「さて、これで胃もたれ確定だが、魔力は全回復したわけだが……」
「どうやって倒そうかねぇ」
試しにそこらのミスリル銀で弾丸を作ってみて発射してみるが、体にへばりつくだけでダメージが入っていない。
「ミスリル【銀】だからね。普通のミスリルよりは硬さはないんだよね……ただ石で攻撃したところでダメージ与えられるとは思わないけど」
アキの冷静な解説を聞いていると、防御無効の亜空切断くらいしか倒せるビジョンが見えないんだが……。
「ナツ、脳に塩……いやミスリル銀ぶち込めないの?」
「あの地底神の脳って何処にあるんだ?」
しかも結構距離があるのでワープで倒すというのは現実的では無いような……。
「脳じゃなくていいんじゃない?」
シュネがそんな事を言い出す。
「血液に異物を流し込むだけでもダメージにはなると思うよ……ドロドロに溶け出したミスリル銀なんか流したら血管が詰まって動きは止まるんじゃない?」
「……動きが止まったところを両断か?」
「うん……メアリーが防御係で、私とアキの魔法でミスリル溶かすからナツがテレポートで流し込んで」
「しゃーねぇ! やってみっか!」
俺はシュネの作戦に乗って戦ってみることにするのだった。




