第111話 1泊2日の狩り合宿 中の中
〜引き続きライラック視点〜
「やれば出来る物ですね……」
マンシュタインが言うように、私達は普通のブロンズランクの冒険者が苦戦したり、シルバーランクの冒険者達が狩るような魔物を中心に倒していき、荷台にはスターによって氷漬けにされた魔物の亡骸が積み上がっていた。
最初軽トラスタイルだったのに、いつの間にか側面が高くなって、ダンプカーみたいになり始めている運搬ゴーレムにツッコミを入れることは諦め、3時間狩りを続けたので一度休憩をすることに。
「ウインドカッター」
マンシュタインが風魔法で周囲の木々を切り倒して空間を作り、倒れた木々に座って食事を食べる。
私は肩から下げていたポーチから食べ物を取り出す。
ナツ達みたいに空間魔法が使えるわけじゃないので簡単な食事で、パンをナイフで半分に切って、そこにチーズを挟んで炎の魔法で温めてチーズを少し溶かし、その中に小さな瓶に入れられているピクルスを挟んでいく。
チーズとピクルスのサンドイッチ……前世ではイギリスにあった料理らしく、料理に詳しいナツが解説してくれたメニューだ。
この世界でも市場で普通に売られているような一般的なメニューなのだが、ピクルスの酸味とチーズの濃厚さがいい具合に中和して食べやすくなる。
イメージはMが有名なハンバーガーショップのチーズバーガーのパテと野菜を抜いてその分ピクルスを多く挟んだ物とイメージすれば良いだろう。
ピクルスが苦手な人には地獄であるが、私はどちらかと言うとピクルスが好きなので、このメニューは結構好物なのである。
まぁ本音を言うと米を食べたい気持ちが強いが……。
「よくそんなにピクルス食べられますね」
「ん……マリーはピクルス苦手?」
「食べられなくはないですけど……食感と匂いが苦手で……」
でも冒険者をやっているとピクルスの様に保存の効く食料というのは凄くありがたいのである。
ナツ達と出会う前に長期間移動をした時は干し肉、硬いビスケット、瓶詰めの酢の効いた野菜の漬物、そしてチーズの4つ上手く組み合わせて食べるしか無かったし、食料を大量に持ち運べる訳でもないので、腹半分が満たせる量しか食べることができなかった。
そんな話をするとマリーだけでなくスターやマンシュタインも私の過去の冒険の話を聞いて色々質問してくる。
私も口が上手いわけじゃないから少々詰まりながらも答えられるだけ答えていく。
「ところでライラックさんはナツの事をどう思ってます?」
「どうって?」
冒険の話が一通り終わった時にマンシュタインからそう聞かれた。
「ナツ……いや、メアリーやアキ、シュネの4人とライラックさんは特に仲が良い様に思えます」
「確かにライラックさん……4人と仲が良いよね?」
「うんうん!」
マンシュタインだけでなくスターやマリーも私と4人が仲が良い事に気が付いているらしい。
まぁ同じ元日本人かつ転生者なので価値観が似ている点や常識の擦り合わせがしやすいっていうのもあるし、口下手な私でも念話で会話してくれるので意思疎通がしやすいっていうのもある。
あとナツは日本人の価値観から見ると普通にイケメンのなので話していて楽しいというのはある。
まぁこの世界の人……特に裕福層は全体的に顔面偏差値が高いからナツくらいのイケメンはゴロゴロ居るっちゃ居るし、マンシュタインの方が顔面偏差値は高い……金髪碧眼は反則だと思うけど。
「多分好意を抱いているかについて聞きたいんだろうけど……好きという気持ちはあるけど……メアリーやアキ、シュネの間に入って横恋愛をしたいかって言うとちょっと……」
「「ですよねぇ……」」
聞くとスターとマリーもナツの事が好きらしいが、ラブラブなあの4人に割って入る勇気は無いらしい。
でもチャンスがあるんだったら妾でも良いから狙いたいとも思っているらしい。
「妾かぁ」
つまり愛人。
貴族の中にはメイドや外の人とそういう関係になる人も多いらしいが、大抵家督の継承権は持たない決まりらしい。
あと嫁ではないので、貴族としての子とも見てもらえないらしい。
まぁそれでもある程度金がある貴族は屋敷で囲って、直子達の執事やメイドとして雇うらしい。
「ナツはまだ精通も来てないから子供を早く作れみたいなプレッシャーはないけど、精通したら早く子供を作るように言われるからメアリー達が初物が来ていなかったら……畑だけ充てがわれそう」
「うわ……」
貴族の闇だね。
色々話していて、マンシュタインやスター、マリーと前よりも距離が縮まった気がしながら、残りの時間の狩りをしていく。
「マンシュ! 障壁展開!」
「おう!」
スターの掛け声で障壁を展開し、魔物からの攻撃を防ぐ。
そこにすかさず私が魔物の足の筋を切断して行動不能にした後に、マリーが大きな斧で首を跳ね飛ばす。
人型の魔物はこれが一番効率よく狩れる。
「ふう、ジャイアントオーク……これで5体目か」
「これ以上奥に行くのは厳しいわね」
ジャイアントオーク……オークの成長した個体で、身長が3メートル近くある巨人の魔物だ。
ただ普通のオークよりも動きが鈍い為、一撃にさえ気をつければ普通のオークよりこちらの方が狩りやすいかもしれない。
シルバーランクの冒険者だと1人で倒せなくてはいけない魔物であるが、ブロンズランクの冒険者でもチームでなら狩れる魔物である。
マンシュタイン達が前に対峙したと言っていたレッドオークの方が強かったりする。
「そうだね、これ以上奥に行くのは安全上厳しいだろうね」
いい時間だし引き返すことにし、ジャイアントオークの血抜きをしてから運搬ゴーレムに積みながら
「これ……ゴーレムに指示したら拠点まで戻ってくれないかな?」
私がそうは思い、来た道を引き返せないかゴーレムに指示してみると、移動を始めた。
「あ、本当にいける感じだ」
私はマンシュタインやスター、マリーを呼んで、移動するゴーレムの荷台に飛び乗ると、ゴーレムは私達が移動するのと同じくらいの速さで来た道を戻っていく。
アキのゴーレム……凄い高性能だな。
マンシュタインもこんなゴーレムは見たことがないと呟いている。
よく見ると、移動に邪魔な木々を手を斧やナタの形に変形して切り倒しながら道を作って進んでいく。
「……高性能すぎる」
帰り道は凄い楽しながら、私達は拠点へと戻るのであった。




