第109話 1泊2日の狩り合宿 上
冒険者予備校の夏休みが始まって早々、俺達のクラスは1泊2日の狩り合宿に行くことになった。
本来は秋の終わり頃にやる行事なのであるが、夏は貴族達は避暑地にバカンスに出かけたりして比較的忙しく無い時期なので、パーティーが多くなる冬前にダンスとかをキッチリ仕込む為、野営を伴う様な外に長時間拘束される行事は止めて欲しいとラインハルトがジェイシェット教官に言ったことで、学習カリキュラムを変更して夏休みに組み込んだらしい。
ジェイシェット教官もよくやるよ……本来なら教官も夏休みの間は暇になるはずなのに、手当が出るからって休みを返上して俺達の事を見てくれるんだから……。
ちなみにジェイシェット教官は元銀の翼のメンバーも連れてこいって言っており、銀の翼の4人と怪我した場合の治療班としてクリスも狩り合宿に参加することになった。
銀の翼のメンバーは冒険者として数年活動していたので、教官の目が届かないところのフォローをして欲しいとのこと。
あと俺達爵位もらった4人は自由に動いていいって言われている。
「正直、狩りに関しては俺から教えられることねぇぞ……野営に関しても快適に過ごせるし、どうせ夜間の警戒に関しても対応する魔法とかあるんだろ?」
まぁ実際あるが……。
他の生徒達の成長の妨げになるから、俺達4人は別行動をしていてくれって教官に言われたので、俺達4人は皆の邪魔しない程度に狩場の奥に行って強い魔物を狩るつもりである。
そして当日。
皆冒険者らしく装備を着込んで着ているが、全員色違いの長袖シャツとスボンを履いている。
ちなみに俺、メアリー、シュネ、アキの格好は迷彩柄のつなぎ服である。
皆のことを心配したアキが狩りに参加するメンバーにワイバーンの鱗を繊維に加工し、織り込み、シャツやスボンを人数分作ったらしい。
皆も軽くて丈夫かつ動きやすい服に喜んでいたが、製作過程を見ていた魔族かつアキの錬金術の弟子でもあるフレンは服の素材を他の人達に聞かれていたが、聞かないほうが良いで押し切っていたし、服を受け取った時に家宝にしますって滝のような汗を流していた。
可哀想に……。
「また妙な服装しているな……鉱山労働者の様な服装だが、防御力はろくな鎧よりも強いんだろう」
「あ、アルフレッドさん」
つなぎ服にツッコミを入れたのはアルフレッドさんだった。
この服装は鉱山労働者達の間で流行っているらしい。
なんでも洗濯する時に纏めて洗えるので楽なのだとか……。
汚れやすい鉱山労働者らしいと言えばらしいか?
あとは肉屋とか解体作業をする人もエプロンの他につなぎ服を着ていた気がする。
冒険者の間では、動きやすくても防御面で劣るため、レザーアーマーとかのほうが人気らしいし、クラスの人達も急所を覆う様に軽装の鎧を着ている。
アルフレッドさんも勿論使い込んだレザーアーマーをアキから貰ったシャツの上から着ている。
「動きやすいんですけどね……」
「今回は知り合いしか居ないから良いけど、他の冒険者達が居る場所でその格好をしていったら舐められるからある程度の格好はしておいた方がいいぞ」
「気をつけます」
つなぎ動きやすくて作業着としては好きなんだけどな……。
まぁ冒険者らしくは無いか……忠告を聞いて、今度装具を扱っている店見に行ってどんな感じかアキと一緒に確認しに行こう。
そんな会話をしていたら、ミサイルみたいな荷車に荷物の積載が終わり、皆も座席に座っていく。
「じゃあ運搬お願いしまーす」
「あいよ」
扉をアキが閉めて、俺がミサイルを上に持ち上げる。
メアリーとシュネがミサイルの下に潜り込んで前後で支えて飛行を開始する。
時速250キロで飛ぶこと10分……町から約40キロ離れた狩場に到着した。
ゆっくりミサイル型の荷車を下ろして、到着をアキに念話で教えると、扉を開いてぞろぞろと降りてくると、あっという間に狩場に到着したことに初めて高速移動を経験した人達は驚いていた。
「魔法使いってのは出鱈目だな……俺がえっちらおっちら半日かけて歩く距離を10分足らずで到着しちまうんだから」
「いや、教官、普通の魔法使いはこんな速度出ませんから……辺境伯家の筆頭魔法使いであるデーニッツ様もこの半分の速度も出ないらしいですし」
「そうなのか!」
マンシュタインとジェイシェット教官が話しているが、魔法使いでない教官は初めてのフライトに感嘆していた。
一方で銀の翼の面々もライラック以外は魂が抜けたような顔をしていた。
ライラックだけは
「飛行機に乗っているみたいだったけど、揺れが一切なかったのが凄い」
と驚いていた。
意識を切り替えた教官は早速野営陣地の設営を行うぞと皆に号令する。
俺は直ぐに特製のゲルを異空間から取り出すと、地面に設置し、風で飛ばないように周囲に石を置いたり、杭にロープをくくりつけて固定していく。
やるのも2回目なので4人で協力すると5分もかからずに終わる。
ゲルの設営も終えたので他の子の手伝いをしようとすると、教官から俺達は手伝わなくて良いからと言われ
「運んで貰ったんだ。これくらいは協力無しでやらせろ」
至極真っ当な事を言われ、皆の作業を眺めていると、土魔法が使える子が土で小屋を作り、石化の魔法で固めると、土魔法が苦手な子達は中でハンモックを吊るしたり、俺が渡したトイレやシャワーの魔導具を設置していく。
銀の翼のメンバーは慣れた手つきで普通のテントを設置し、教官もいつの間にか1人用のテントを作り終えていた。
皆が作業しているのに動かないのもなんか嫌なので、調理場を整備したりしていく。
30分もすると全員拠点の設置が終わり、教官が採点していくが、全員合格点を貰う。
「さて、これから狩りを行うが、事前に決めたように最低3人1組となってもらう。それに俺もしくは銀の翼のメンバーの1人をパーティーに加えで挑むことになる。時間を計る魔法は皆使えると思うが今日の制限時間は今から6時間。途中で休憩を30分取るのも忘れないように」
ジェイシェット教官から説明がされたのでその後にアキと俺が前に出てせっかく狩った獲物をいちいちここに運ぶのは時間のロスになるからとアキ特製の運搬ゴーレムを各組に1体付ける事を付け加える。
俺が異空間からゴーレムを取り出すと人っぽい姿のゴーレムに皆軽く驚いていたが、教官が開始の号令をしたため、皆狩場の森に入っていくのだった。




