第108話 夏休みの一幕 み、ミサイルだぁ!
世間では夏休みが始まったある日の事、予備校に集まった面々は狩場を何処にするかで話し合いが行われていた。
「狩場何処にするべきだと思う?」
「夏休みだから近場の狩場は予備校生と冒険者達が多く居るからな……」
予備校が休みの日は近場の狩場は非常に混雑しているが、夏休みになると余計にそれが顕著に現れる。
帰省しなかった……もしくは町に実家がある予備校生は夏休み期間は絶好の狩りシーズン。
冬休みに比べて夏は動物の動きも活発な為、金を稼ごうと狩場に殺到するのである。
そのため、押し出される形でいつもより少し遠い狩場も満員御礼状態であり、稼ぐとなると、俺やマンシュタインの居るパーティーがいつも行くような徒歩数時間かかる狩場に行くしかなかったのである。
まぁ1泊して帰ってくる予定なので、行きや帰りに多少時間がかかるのは仕方がないが……だったら全員行き帰りを運んだ方が時短になる。
問題は飛行魔法が使える俺、メアリー、シュネの3人でクラスメイトとジェイシェット教官を合わせた13名を運べるかという点である。
重量的には1人でも運ぶことは余裕であるが、それ相応の箱……荷台が必要である。
どうするべきか……と考えた時にアキが
「ゲルをもっと頑丈にしたり、床部分を岩盤にしてゲルが飛んでいかないようにすれば良いんじゃない?」
と言ってきたので飛行中の風に耐えられるか模型で実験したところ、普通に耐えられなかったし、ゆっくり運んだら本末転倒、風除けに魔法障壁を展開していたら、流石の俺達でも魔力が尽きるのでゲルに乗せて運ぶというのは断念。
じゃあ車や飛行機みたいに全金属製のボディにした乗り物……箱物を作れば良いんじゃないかという感じになり、アキが前に余っていた賢者の石もどきを使って似非金属(ほぼ強化プラスチック)を作り出し、土魔法で型を作って、それに沿って流し込んでいく。
魔法で作り出した物じゃないので、魔法で一気に形状を変化させるというのはアキ曰くできないらしい。
まぁ裏技としてゴーレムコアを取り付けてゴーレム化させることで自由に似非金属を変形させることは可能らしいが……そんな合体ロボットみたいなギミックは今回必要無いからな。
校庭で作ること2時間、形になったが……
「鉛筆だね」
「いや、ロケット?」
「どちらかと言うとミサイルでしょ……」
見た目が完全に大陸弾道ミサイルやロケットにしか見えないが、持ちやすいように、ところどころ持ち手が付いているため、ちょっとでこぼこしているように見える。
ちなみに中は飛行機の中みたいになっており、簡単な座席が付いていて、外は小さい窓から少し見えるだけになっていた。
定員は30名まで乗れるようにしてある。
アキが試運転で乗ってみて、俺が持ち上げて空を飛んでみた感じ、中は高く飛ぶと気圧の影響で耳鳴りが人によってはするかもしれないのと、酸欠及び低温になるから、高くても500メートルが高度上限にした方が良いとアキに言われた。
「中の温度が寒く成りがちなのは暖房の魔導具使うか、雨用のローブを羽織っておけば大丈夫だと思うし、そんな長時間飛ばないからね」
「それもそうだな」
後の話であるが、これを使って辺境伯様達をとある場所に運ぶことになるのであるが、その時は更に快適性を求めて魔改造されることになるのであった。
「お前ら馬鹿か?」
移動用の乗り物? を作ってジェイシェット教官に報告すると馬鹿と言われて呆れられた。
「まぁ今回は冒険に慣れる事が目的だし、俺もナーリッツ達を最大限活用して狩りをすると言っていたが……移動まで快適になってしまったら……なぁ……」
「でも教官、多分このクラスにいる魔法使いのメンバーはそのうち飛べるようになりますよ。武術で入学した子も魔力が伸びて魔法が使えるようになった子も出てきましたし」
「確かにそれはそうだが……」
俺達の魔力ポーションがぶ飲みトレーニングにより、クラスメイト達は急速に魔力量を増やしていた。
元々魔力量が少なくて、武芸によって入学したとある男子なんかは、ここ1ヶ月半で魔力量が2倍以上になり、入学当初のマンシュタイン並の魔法が使えるようになった子も出てきていた。
ちなみにその彼も短時間なら飛行はできるようになっていたので、魔力の消費量を抑えたり、魔力量を更に増やせばデーニッツさんくらいの飛行能力は身につくと思われる。
魔力が少なかった子がそれなので、比較的魔力が多かったスターとマンシュタインなんかは更に魔力が伸びて、30分以上の飛行が可能になっていた。
まだ速度はあんまり出なくて、時速50キロくらいだけど。
ジェイシェット教官はこんなにも楽になっても良いのかと頭をかいていたが、まぁ狩りも楽な方が心身の負担は少ないし、疲れていると、咄嗟の判断ミスをして致命傷を負いかねないからね。
教官に実はもっと狩りを楽にしようと思うんですけど……そう告げると
「分かった分かった……まぁ2学期後半にやる予定の狩り合宿を前倒しにしているんだ。自由にやれ」
「はーい」
許可が出たのでもっと狩りを楽にするための工夫をアキ達と話し合うのであった。
「シュネ?」
ある日のこと、シュネが話したい事があると言われて、シュネの部屋に入った。
「ナツ……最近私活躍していないよね……」
「は?」
シュネは最近自分が活躍できていないことを悩んでいるらしい。
何を馬鹿なと思ったが、アキは錬金術で大活躍しているし、メアリーは読心術を使って辺境伯様の毒殺を防いだ。
シュネは地竜討伐の時にトドメを刺したくらいしか活躍できていないことを気にしていた。
「なーにを馬鹿な事で悩んでいるんだか……」
「だって……ナツがどんどん偉くなるから……偉くなったら偉い人と恋仲になっちゃうんじゃないかっていうのと、可愛い子が沢山家臣になったから手を出し放題じゃん」
「シュネの中での俺は節操無しかよ!」
まぁ神の間で性欲魔神になって四六時中セックスしていたのは事実なので明確な反論はできないのであるが……。
「安心しろ。今はシュネ達3人しか見ていないから」
「……本当?」
「本当本当」
シュネが俺に抱きついて頭を胸元に押し込んでくる。
俺はシュネの頭を撫でながら、シュネが落ち着くまで一緒にいてやるのだった。




