君のことをもっと早く知りたかった。
「さて、マンガを読むか」
ボクには積んでいるマンガが100冊近くある。いじめられっ子が成長する話やシカの女の子が活躍するマンガなどジャンルは多岐にわたる。
読書の時にブラックコーヒーやストレートティーほどの甘みがないのは苦手だ。カフェインは好きなのでカフェインを摂取したいならカフェオレやミルクティーなどだ。
「今日は仕事休みだし、外はクリスマスムード一色で……」
あぁ、そうだ。一色で思い出した、ラノベは医療系が好きだ。読みすすめているラノベに出てくる一色 研二郎という研修医が推しキャラだ。
この一色がカルテを見ながらホットコーヒーを飲むシーンが頻繁に出てくる。
それに憧れてボクは個人経営の純喫茶でブルーマウンテンを頼んだことがある。もちろん、ホットだ。
苦いし舌が火傷しそうでこわい。その時は甘味としてモンブランも頼んでいた。
砂糖ガバガバ足したコーヒーとマスターからもらった氷でキンキンに冷やして無理やりアイスコーヒーにしてゴクゴク飲んだ。
これこそコールドドリンクのよさ。
ゴクゴク飲める。
周りのマダムたちがドン引きしてたことも知っている。
さて、ホットコーヒーの苦い思い出はさておき、今から読むマンガは政治家の不倫をテーマにしたマンガだ。そろそろ防衛大臣とこども家庭庁の大臣の不倫謝罪会見が始まる。
「不倫かー」
学生の頃に既婚者の先生に恋愛感情を抱いて不倫をする妄想は人生で何度も通るはずだ。
「そう考えたら不倫は悪いことでは……」
目的のマンガを読み始めた。なんだこれ、政治家の腐敗よりもこの巻ほとんどがえっちぃシーンじゃないか、最高だ。最後にシーンの意味を考えたりとマンガのワクワク感に囚われて読みすすめた。
最新刊まで読んだ。このマンガには何度も『胃がキリキリする』と言って総理大臣が秘書の目を盗んで缶コーヒーを買いに自販機に行くシーンが出てくる。
マンガというものは面白いもので読み始めたら何時間も奪われる。お昼ご飯も食べないで気がつけば16時だ。
小腹以上にお腹が何か変だ。さっき読んだマンガだと総理大臣が『胃がキリキリする』と言う前には必ずお腹を痛がる描写がある。
――あぁ、これが……
『胃がキリキリする』
マンガの通りいけば缶コーヒーを買って飲んでおさまる。ボクも缶コーヒーを買ってみよう。もちろん、アイスで多糖だ。つまり、カフェオレだ。
150円を持って家から出た。
「寒いな……」
冬で12月にも関わらず部屋は暖房ガンガンのせいで半袖半パンで家から出た。
吐く息が白い。雪はちらつかないが雨が振りそうなどんよりした雲をしている。
「風邪ひく前に……の前に自販機は家の前の工場のフリースペースなんだよなぁ」
フリースペース。
そう言えば聞こえはいいが実際は工場の敷地内である。本来は工場の社員以外が立ち入るべきでない。幼い子どもなら工場の人たちも『ジュース買いたいんだなぁー』と思ってくれるだろう。大人だとどうだろう。きっと、『こいつ、俺らが働いてる間に……』と思うだろう。
「いや、ボクも普段働いてるし……」
色々な思考が頭をめぐる中、家から一番近い自販機についた。さすが12月あるのはホットの缶コーヒーと紅茶やコーンスープ、アイスは炭酸ジュースとお茶くらいだ。
「くそぅ、ボクが何したっていうんだ……。甘々な缶コーヒーが飲みたいんだ」
やけくそだ、ブラックだけがアイスコーヒーとしてある。これにしてやる。ブラックは苦手なんだけどなぁ。
胃がキリキリする時は缶コーヒーがいいんだろ? マンガの中の総理大臣さんや。
ゴトンと楽しそうに自販機がブラックコーヒーを落とす音がした。キンキンに冷えた缶を持ち帰った。
この時点で胃のキリキリ感はすでにない。
不倫マンガはもういい。帰ったら学園ラブコメに見せかけたミステリーマンガを読もう。これは2巻完結だからサクッと読める。
テーブルにさっき買ったブラックコーヒーを置いた。暖房ガンガンの部屋なのでアイスであることを忘れていた。
マンガを1冊読み終えた。なんてマンガだ! 学校で殺人事件が起きたのに教師が気にせず授業を進めているなんて!! と思っている。
「喉乾いたな、あぁ、さっき甘いコーヒー買ったんだ」
テーブルにある缶コーヒーを手に取って、カシュッとプルタブを上にあげた。
ブラックだということを忘れて、なんなら甘いカフェオレだと思いこんでブラックをゴクゴク飲んだ。
……なんだこれ!
口の中に広がる苦味。そこに冷たいもの特有の頭にキーンとくる。こんなにおいしいものを飲んだことがない!
これが……コーヒー。
いや、ブラックコーヒーというものか!!




