マイナス×マイナス⑥
息を飲む。
何を言われるのか予想がつかないからこその不安が体を巡る。
「新君は、以前にも言っておりますが、真面目ですし、受け答え、メモを取る癖、頭の回転が早いなど長所があります」
「あ、ありがとうございます」
「ですが、ポートフォリオが選考通過レベルに達していなくて就活が停滞している」
「ぐうの音も出ません」
「そして、こちら広井 結さんですが、ポートフォリオは選考通過するのですが、対話能力がその……ね?」
気まずそうに言葉が濁される。
あれだ。
コミュニケーション能力が致命的過ぎてどうにもならないから、練習相手をして欲しいという話だろう。
まぁ、夏休みだし。
ポートフォリオ出して、他することないし、多少は付き合ってもいいだろう。
「結論なんですが、コンビになって教え合って貰えますか?」
「ん?」
「教え合って貰えますか?」
「え?」
「教え合って貰えますか?」
「いや、話は聞こえてます」
「何で教え合うんですか」
「新君の入学願書を読んだんですよ。『互いに評価し合い、高めていけるように努めます』って書いてありましたのでなら、実際にやってもらおうと思いまして」
「は、はぁ」
すると、結が立ち上がる。