マイナス×マイナス⑤
正直、行かなければ良かったと、翌日後悔する。
◇
8月1日。
就活ガイダンスルームの応接室で待たされていた。
しかも、一人ででは無く、目の前に誰かいる。
誰かかは分かっている。
昨日、泣きながら書類を書いていた女の子である。
女の子は俯きながら、スマホをずっと触っている。
尚、先にいたのは女の子の方であった。
何度も部屋番号確認したが、間違えていない。
「あの……部屋番号間違えてません? ここ3号室ですけど」
だが、応えは帰って来ない。
「だんまりかよ」
友也は女の子とは、テーブルを挟み迎えの席に腰をかける。
何か嫌な予感がする。
「おたくも、呼び出された口ですか?」
期待はしていなかったが、予想通り言葉は帰ってくることはなかった。
帰ろうかと迷っていた頃、応接室の扉が開く。
友也は、すぐさま立ち上がる。
だが、女の子は立ち上がらず、座ったままだった。
「お待たせしてすみません」
「あ、いえいえ。こちらが予定より早く着いてしまっただけなので」
入ってきた担当教員に社交辞令のように言葉を並べる。
教員は友也の隣に腰をかけると、腰かけくださいという。
「まずは、新君、広井さん、夏休みなのにわざわざ来ていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、とんでもありません。先生こそ、わざわざ時間を割いていただきありがとうございます」
「ありがとうございます。では、始めさせて頂きますね」