マイナス×マイナス④
理不尽で固められたのが今の現実だ。
「うっせぇ、黙れ。手を出せ」
「手? あ、はい」
そう言いながら、颯は手を出す。
友也は、その手の中指と薬指を握る。
ゆっくりと、その指をYの字になるように曲げようと力を入れる。
「怖い怖い怖い! 離せって!」
「何で?」
「折る気だろ!」
真顔で首を縦に振る。
「そんなことしたら、俺泣いちゃうよ? それに仕事でバイクも使えなくなるし」
「泣け喚けハゲ」
「泣かねーよ」
「じゃあ、泣かせてみようか?爪と肉の間にネジを入れるだけの簡単なやつを」
「本当にやめろ」
その後、いつも通りくだらない話をしながら、家に着く。
颯には言わなかったが、会った時からチャック全開であった。
就活の事をまた、聞いてきたので爪を曲げてきた。
家に帰ると、かけられる声を全てを無視し、自室に向かう。
家に帰り、PCを開くと、就活指導の担当教員からメールが来ていた。
「ん? 神野先生? なんだろ」
内容を見ると、明日急な相談で学校に来て欲しいとの事だった。
予定は無いが、一体どう言った話なのだろうか。
対面でしか話ができないというのなら、それほど重要な用件であることはわかる。
考えるのは、やめよう。
考えるだけ時間の無駄だ。