マイナス×マイナス②
7月30日。
友也は、会社に出すためポートフォリオ及び作品の制作に勤しんでいた。
家で作品を作ろうとしても誘惑が多く、どうしても手が遅くなるので、わざわざ学校の図書館にまで来て制作している。
既に40社は出し、全て撃沈済み。
メンタル的にも、もう後がない。
原因は既に見えている。
それは、良いデザインが作れないこと。
基礎知識はあるが、どうにもそれを形に起こせない。
デザインしようとすると、どうしてもその知識がうまく使えない。
文字組はどうにかできてはいるが、他がどうにもならない。
クラスでは、一番デザインができない自信がある。
もう、教員からも煙たがれているのだろう。
その証拠に、教員に添削依頼を出しても時間は取ってくれるものの、嫌な顔をされる。
それもそうだ。
できない人材よりも、できる人材に時間を使う方が有意義である。
悪いことを考えすぎて、萎えてきた。
「帰るか」
やる気を失い、荷物をまとめる。
体が重い。
何も浮かばない。
何も作りたいと思わない。
作ったところで誰も評価しない。
誰も改善点を教えてくれない。
もう、どうして作品を作っているのか分からなくなってきた。
パソコン以外の物を無作為にリュックに押し込み、図書館を後にする。
就活ガイダンスルームが目に入る。
ガラス張りのガイダンスルームで、泣きながら書類を書いている女の子がいた。
おそらく、同じく就活がうまくいかないのだろう。
泣きたい気持ちに共感はしつつ、だがどこか他人事のように思えてしまう。
「あれ、でもアイツって……」
泣いていた女の子は、以前学内での作品コンテストで賞を取っていた。
そんな人でも、就活には苦戦するのかと認識する。
女の子を尻目に駅に向かう。
夏休みまで、あと1日。