すっぱーん。どどどどどん。たーまやー
「すっぱーん。どどどどどん。たーまやー」
「な、なんですか? おかしくなったんですか?」
「これ、殺し方なんだけど、なんだと思う?」
予想通り彼女の顔から安心が消えた。もう、言ってしまおうか。いや、まだ早いか。いいや、どうせ言わなきゃ──
「なんですかそれ。安楽死ができるんじゃなかったんですか」
怒りも消えていた。裏切られたような悲しさ。残っているのは絶望だけか。安楽死ボタンを救いだと思って押したんだろう。それがこんなんじゃ──本当に死にたくなるよな。
俺達はしばらく無言のままだった。俺は落ち着きを取り戻していたが彼女の方は、時間が経過するごとにダメージを受けている。そう見える。残り時間である21時間が彼女の余命。
でも、それは俺が安楽死を執行したらの話。そもそも例の殺し方は未だに訳が分からない。
「たーまやーが良いです」
「・・・わ、わかるのか?」
「花火のことですよ」
「・・・じゃあ、他は?」
「すっぱーんは多分切断系。どどどどどんは......鉄砲で撃ってるようなイメージありません?」
「言われてみれば」
自分がそんな殺された方すると思ったら逃げ出したい。これから自分の殺人犯になるかもしれない男に、よくも淡々と言えたものだ。
・・・いや待て。俺はそれのどれかを執行しないといけないのか!? そういえば花火ってどういう意味だよ。花火で殺すのか!?
「な、なんで花火が良いんだ」
「爆発は一瞬で済みそうだから」
「あ、爆発なのか」
「さすがに空まで打ち上げられないでしょ?」
その時、彼女は立ち上がり部屋の奥へ向かって行く。ワンルームと思われた部屋だったが壁だと思っていたそれはスライド式の扉で、別の部屋が現れた。
「先に着いた時、実は奥の部屋を見たんです。今言われて納得するものが置いてありました」
先に行く彼女を大股で追う。すぐ隣の部屋はさっきよりも更に広い空間。ホールと言った感じだ。アルミ色の部屋は相変わらず殺風景だが、部屋には3つの道具が置いてある。
1つは刀。もう1つは機関銃。そして最後に手りゅう弾。それらは全て俺の殺し方に一致するアイテムだった。
「おいおいおい。正気かよ! 刀なんてごめんだぞ!」
「ボーナス低いですもんね」
「そういう問題じゃない!」
「正直、私もやめたいです」
「・・・いま、なんて?」
「やめたいですよ。こんな死に方なら。だってこれのどこが安楽死なんですか!!」