第6話初めてのデート(?)と忍び寄る影(段々と怪しくなってきた)
差し支えなければ、感想を聞かせて下さい。
家から歩くこと20分、僕達はJR駅前の広場に来ていた。中心には噴水があり、ハトも飛んでいる。
僕は噴水には絶対近づかない。だって嫌って程に鳥糞が落ちてくるんだもん!
鳥に恨まれる覚えなんて……、いや確かに僕は唐揚げとか焼き鳥が好きだけど!それとこれとは話が違うんじゃないかな?
皆だって食べているのに僕に集中投下してくる。これって差別じゃないか!?
まあ鳥に何言っても無駄だけどね。
鳥だけに鳥頭だし。
ちょっとネガティヴな考えをしていた僕はすぐに振り払い、隣の雛乃に振り返る。そこでは、雛乃が肩と指にハトを乗せて微笑んでいた。
肩に乗ってるハトは、雛乃に甘えるように頬にすり寄り、指に乗ってるハトはお喋りしてるのか、饒舌に鳴いている。
なんか雛乃の周囲がお花畑に見え、メルヘンチックになっていた。
雛乃が異国のお姫様に見え始めたところで僕はハッと見惚れるのを止め、現実に連れ戻しにかかる。
「雛乃、雛乃!そっちの世界に行っちゃ駄目だ!戻ってこい!」
「えっ?どうかしましたか、雄司様?」
僕の声にハトが逃げ、雛乃が僕の方を見ると同時に、メルヘンチックが消えて元に戻る。
ふう、間に合ったか!もう少しで雛乃が向こうの世界の住人になるとこだったよ。危ない危ない。
「いや、何でもないよ。そろそろ行こうか」
「はい」
そして僕達は街の中を歩き始めた。
さて、日用雑貨や、衣類、食材等を案内して回っているが、どうも周りの人々の視線が気になって仕方がない。
正確には雛乃への視線が多く、すれ違う人が皆振り返っているのだ。
確かに分からんでもない。こんなに綺麗で可愛い娘が歩いていたら絶対に目立って注目の的になるのは当然だ。
さらに周りから聞こえてくる会話には、
「わぁ、あの娘可愛い~!」
「ねえねえ、あの娘、すっごく綺麗だね~」
「うん、どっかのお嬢様みたい」
「ワシがあと30年若かったらのぅ……」
「ハアハア、う、美しい……!」
「女神だ!女神様が舞い降りた!」
と、老若男女の賛美が盛りだくさんだった。
僕はそうだろうなー、と雛乃を見る。その視線に気づいて雛乃は僕に振り向いた。
「?、どうかしましたか、雄司様?」
「い、いや、なんでもないよ」
僕は慌てて誤魔化した。
他にも色々と賛美が聞こえる。
中には、
「おい、あの隣にいるの、彼氏か?」
「まさか。そんなわけ無いだろ」
「そうだな。地味で普通だし、大したこと無いな」
「ああ、それに幸薄そうだし、似合わねーよ」
なんて声も聞こえてくる。
……幾ら何でもそこまで言わなくても良いんじゃないかな?
僕のことは自分でよく分かっているけど、改めて人から言われると凄く凹む。
ちょっと涙が出てきた。男の子だもん。
でもやっぱり、誰から見ても雛乃は可愛いんだな。
そりゃ誰も人間じゃないなんて思いもしないだろうし……。
普通に見れば可愛い女の子なんだよな……。
つい隣に並んで歩く雛乃を見つめていると、再び僕の視線に気づき、雛乃は首を傾げた。
「あのー、先程からどうかしましたか?何か私についてます?」
「へっ?べ、別にっ!?」
「ですけど、私のことをお気になさっていましたし……。もしかして、私何か変ですか?」
雛乃はあたふたと困った顔をする。
この顔も可愛いなー、と、微笑ましく観察する。
言っとくけど僕は苛めて喜んでる訳じゃないよ。Sじゃないから、本当だよ!
「いや、大丈夫だよ。ただなんていうか、こんな可愛い娘と一緒に出かけるのって嬉しいなー、なんて……、あ、あははっ」
僕は自分のセリフに恥ずかしくなり、誤魔化すように笑った。
「『可愛い娘』?」
キョトンとした顔で復唱した雛乃は、その言葉を理解すると同時にパッと頬を赤くした。
肩をすくめてモジモジと、恥ずかしそうに応える。
「はうぅ、雄司様にそう言って頂けると、私も嬉しいです」
「……雛乃」
「……雄司様」
おっ!何だか良い雰囲気になってきたな!ここは僕の男としての真価を問われる場面だぞ!失敗すればヘタレ確定だ!頑張れ僕!!
そう意気込むと、僕はゆっくり雛乃に近づく。と、そのとき2つの影が僕達の前に出現した。