第2話運命的な出会い(あ~、本当にベッタベタな出会いだなぁ)
基本的にベタな感じが多いですが、飽きずに見て下さい。
「ハア、ハア……き、きつい……」
只今僕は全速力で学園へ登校中。
とりあえず学園に着くまでの間僕の紹介をしよう。
……えっ、いらないって?
そんなこと言わずに聞いて下さい。お願いします!
__では、コホン。
僕の名前は天坂雄司
年齢は今日で16歳だ。
小説や漫画だと大抵の主人公はイケメンで成績優秀、スポーツ万能、お金持ちなのだが、現実はそう甘くない。
実際の僕は容姿は平凡、というか地味。
身長は168cmの普通より少し低い。
成績は中の下。
運動神経はからっきし駄目。
唯一の長所は身体が少しだけ丈夫な事かな。
別に怪我をしない訳じゃなくて打たれ強いだけなんだけどね。
まあ、この長所は自分のある特殊な体質のお陰なんだ。
全然嬉しくないけど。
その体質とは、所謂不幸体質で、どれ位かというと、
見通しの良い道を歩いているのに車に引かれそうになったり(運転手の証言には急にハンドルとブレーキが利かなくなったらしい)、
よく不良に絡まれたり(不良の証言にはカモりやすそうなオーラ(?)が出てたらしい)、
学園の女の子に放課後に体育館裏へ呼び出され、もしかしたら愛の告白かとドキドキしながら行ったら、夜中まで待っても結局会えなかったり(女の子の証言には面白そうだったらしい)など、
語ればキリがないくらいだ。
今までよく挫けずに生きてるなと自分でそう思う。
家族は祖父と両親と僕の4人だが、祖父は何年か前に何処かの研究所に行ったきり行方不明になっているらしいけど、どうせ何処かで平然と生きてるだろう。
かなりの変人だったし心配するだけ無駄だと悟っている。
両親は父さんが考古学者で母さんがその助手として世界中を飛び回っている。
だから必然的に一人暮らしを余儀無くされたのだ。
いつも思うが、うちの親は子供を信用してるのか、ただの放任主義なのか、後者の方だと思うのは僕だけか?
まあ毎月銀行にある程度の金額を入れてくれるから、そんなに苦ではないけどね。
さて、紹介してる内に学園が見えてきた。
校名は神帝学園。
この辺では学校がこの1校しか無い為、小学、中学、高校と全て合併させたマンモス校である。
全校生徒は約十万人と結構多い。
後は追々語るとしよう。
そろそろヤバくなってきたので、今は口より足を動かさなければ!
時計を見るとあと五分でHRが始まってしまう!
間に合うか!?
……いや、間に合わせてみせる!
蟋蟀程の体力しかない僕でもやれば出来るって事をみせてやるんだ(誰にだ!?)!!
このまま真っ直ぐ行けば普通は間に合うだろうが、人生そこまで甘くないらしい。
突然、視界に黒い影が飛び込んできた。
曲がり角から急に人が出てきたのだ。
「っ!」
反射的に急ブレーキをかける。
が、間に合う訳がない。
僕とその人物は、真正面から激突した。
「うわぁ!?」
「きゃっ!?」
衝撃とほぼ同時に悲鳴が上がる。
僕は鞄を投げ出し、その人物ともつれながら地面を転がった。
__あいたたた、これは僕の不注意のせいだ。
ちゃんと左右確認しないといけないのに。
「……あ、あの~」
相手の人は大丈夫かな?
__ってあれ?
倒れてるのに痛くないぞ?
「……す、すみませんが……」
アスファルトってこんなに柔らかかったっけ?
「……退いていただけるとうれしいのですが……っひゃんっ!」
顔に当たる感触がムニュムニュとして気持ち良く、何だか良い匂いがする。
と、そこでヤバいことに気づく。
恐る恐る顔を上げると、涙目で顔を真っ赤にした女の子が震えながら僕を見ているのだ。
「ご、ごめん!直ぐに退くから!」
僕はバッと離れると、彼女はゆっくりと身体を起こした。
__さ、さっきの感触ってま、まさか!?
む、胸!?
僕、女の子の胸に顔を埋めちゃったの!?
ラッキー!
……じゃなくて!!
は、早く謝らないと!!
「ごめんなさい!そ、その、押し倒しちゃって……」
すると彼女は涙を拭きながらも微笑んで首を横に振った。
「いいんです。私も急いでいましたし、お気になさらないで下さい」
「あ、ありがとうございます……」
__このお礼は許してもらえたお礼であって、決して胸に顔を埋めちゃったことじゃないから!
……ほ、本当だから!
僕はスケベじゃないぞ!
彼女は不意に僕の胸のある一点を見ると、少し驚いたように目を見開いた。
何だろうと視線を追うと、ただ僕の名札があるだけだ。
まあ、特に変哲もない平凡な名前なので何かの見間違いだろうと思う。
しかし、改めてよく見ると結構というか相当な美少女だぞ。
身長は大体160cm位。
見た感じ、年は同じくらいだろうか。
二重瞼の大きな琥珀色の瞳、スッと通った小さな鼻に薄く形の良い唇。
頬から顎にかけての理想的な丸みを帯びたライン。
腰の辺りまで伸びた蒼色の髪は、朝日を受けて煌めいている。
色白で儚いイメージがまた良い。
彼女のルックスはまさにドンピシャ、僕のタイプだ。
そっと視線をずらしてみれば、おおおっ、胸も申し分なくフックラと__。
「!?」
鼻の下をぐーんと伸ばしかけた途端、非情な音が聞こえた。
キーンコーンカーンコーン
しまった!遂に間に合うことが出来なかった!
目を瞑ると担任教師の鬼瓦(42歳独身)の鬼の形相が見える。
奴の拳骨は痛いというものではない。
生徒の間では別名[メテオ]と呼ばれ、振り下ろされること隕石の如き威力なのだ。
遅刻者には特に容赦ないので今が最悪の状況である。
落ち込んでいると、彼女が怖ず怖ずと話しかけてきた。
「あの……、大丈夫ですか?」
「あ、いえ、何と言いますか…」
つい状況説明すると、彼女は少し考える素振りをして何かを閃いたように両手を合わせてポンと叩いた。
「それなら、幸運のおまじないをしてあげます!」
「えっ?それってどういう……っ…!?」
彼女はそういうと突然僕を抱きしめてきたのだ。
僕は訳が分からずおたおたしていると、耳元で微かに透き通る様な声が聞こえた。
「――貴方に幸あれ――」
彼女はそういうと直ぐに身体を離し、立ち上がって手を差し伸べた。
「どうぞ。手を取って下さい」
「あ、ありがとう…」
僕は彼女の手を取り、立ち上がると、彼女は僕の制服に付いた砂利や埃を叩いてくれた。
「これで綺麗になったと思いますが……」
「いっいや!そこまでして貰わなくても!」
僕は顔を赤くしながら慌てて言う。
「そろそろ行かなくてはいけないのではないですか?」
彼女の言葉に我に返ると、すぐに学園へ走り始めた。
振り向き様に彼女に声をかける。
「今度会ったらこの埋め合わせ、ちゃんとするから!ごめんねー!」
そしてまた全速力で学園へと向かった。
彼女の意味深な言葉を聞かずに。
「……はい、また会いましょう。これからはずっと一緒に…。……会いたかったですよ、ゆー君」
彼女は彼の走る後ろ姿を見つめながら嬉しそうに微笑んだ。