表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

第20話キレた雛乃と力の秘密(強すぎて一方的です)

テスト、宿題、インフルエンザ。三重苦からやっと解放されました!

今回はバトル(?)シーンです。

な、なんだ?この毛が逆立つような空気は。

状況を確認したいけど、只今黒服の屈強な男達に腕をキメられ、更に頭を踏まれて身動きが取れない!

クソッ!何時までもコンクリの床と接吻なんかやってる場合じゃないぞ!

何とか黒服から脱出しようと試みるが、1ミリも動けない。

早くしないと雛乃がピンチなのに!この時程、自分の貧弱差が恨めしい!


「全く、こんな屑の相手をするのは時間の無駄だな。おいお前等、後は任せたぞ」

「「「はっ、かしこまりました和斗様」」」


キザ男はそう言い残すと、僕から遠ざかり、雛乃の方へ向かう。

今すぐにでも阻止したいが、今の僕にはどうする事も出来ない。

無力な自分に歯がゆい思いでいると、不意に重たかった頭が軽くなり、足をどけられたと理解する前に髪を掴まれて強制的に顔を上げさせられる。


「坊主、何のつもりか知らんが和斗様の邪魔をするんじゃねーぞ。痛い目に遭いたくなけりゃ黙って見てな」

「あ……ぐ…っ……!」


僕の髪を掴んでいる黒服の1人がサングラス越しから睨み、強引に雛乃達へと顔を向けさせられた。

僕は痛みに顔をしかめながらも、雛乃が気になって見てみると、この異様な空気の正体を知ると同時に、そのヤバさを感じて冷や汗が出た。

一見すれば縛られて怯えてる様に見えるが、よく見ると雛乃の縛られた右手に赤い光が集まり、左手には白い光が集まっていく。

えっと、確か赤い色の光が火を操る力だったよな。で、白い色の光は……何だっけ?

つい現状を忘れて観察してると、雛乃の足下の小さな石がカタカタと踊り始め、細かい砂が風に舞って雛乃の周りを囲むように渦巻く。

あ、そうだった。白い光は風を操る力だったな……て、何呑気に傍観してんだ僕は!

こんな人がいる所で力を使わせる訳にはいかない。早く止めさせないと!

それに雛乃が俯いて何か呟いていて、何とか聞き取れたのが、


「……よくも雄司様を足蹴に……許せません……護らないと……約束……」


最後の方は余り聞こえなかったが、相当ご立腹のようだ。

すぐに声を出して止めるように言おうとしたが、うつ伏せで抑えられてる為に、肺が圧迫されて掠れた声しか出ない。

呼びかけは諦めて他の方法を考えてると、さっきまで忘れてたキザ男の存在に気付く。

奴は無謀にも、ニヤニヤと笑いながら雛乃の近くまで来ている。どうやら雛乃の様子に気付いていないようだ。

ちょっ、キザ男、それ以上雛乃に近づくな!つーか刺激すんな!その後のお前達の未来が手に取るように分かるから!だから雛乃を諦めて大人しく帰ってー!

僕の懇願も虚しく、キザ男は雛乃にとって許し難い発言をしてしまった。


「待たせてしまったな。全く余計な時間を喰ってしまった。オレの邪魔をしたあの屑は後で始末しとくか」


――――ぷちっ


あ、キレた。


「さぁ雛乃さん、さっきの続きだけど――ん?雛乃さん、どうしたんだい……?」


ようやく雛乃の様子がおかしい事に気付いたキザ男だが、もう既に遅い。

僕は、これから起こるであろうキザ男の悲劇に、心の中で合掌した。

キザ男は俯いている雛乃の顔を上げさせようと、顎に手を掛けようとしたとき、


―――シュッ(ドスッ)!


雛乃が突然と消えて手が空振り、いつの間にかキザ男の後ろ側に背中を向けて廻っていた。

雛乃がいた所には縛っていた縄が落ちていて、バーナーで焼き切ったように焦げている。

更にその隣には、雛乃を縛って待機していた忍者が、身体をくの字に曲げて倒れており、その腹部には上履きの裏の形をした焦げ跡がめり込んだ状態で付いていた。

おそらくあの『ドスッ』という音は、雛乃が忍者の感覚にも認識出来ない程の速さで攻撃をしたんだろう、プスプスと煙が出ていてとても痛熱そうだ。

ピクピクと痙攣しているところを見ると、辛うじて生きているようなのでホッとする。

雛乃は、驚いて振り返るキザ男を無視してスタスタと僕の所まで来ると、黒服達を冷えた瞳で見下ろして口を開いた。


「…………から手を放して下さい」

「「「………は……?」」」

「……もう一度だけ言います。雄司様から手を放して下さい」

「「「………な、にを……?」」」


黒服達は、先程の光景を見て軽く混乱しているらしく、雛乃の言葉を理解出来ていないようだ。


「………もう、いいです。雄司様、すぐにお助け致しますね」


雛乃は一度僕の方を見て、安心して下さいとばかりに柔らかく微笑み、すぐ黒服達へと視線を戻して目を鋭くすると、


―――ヒュッ


また突然と雛乃の姿が消え、次の瞬間、


ドゴッ、ドガッ、ゴスッ!!


という音が後ろから聞こえたと同時に身体が自由になり、黒服達が悲鳴と共に頭上を錐揉みしながら飛んでいき、呆然としているキザ男の足下にバウンドしながら落ちる。

何があったのかと後ろを振り向くと、蹴り上げ体勢の雛乃のスカートが捲れて、神々しいまでのパン……、ゲフンゴフン!!

いや、誤解だ違うんだ!この非常時に僕が覗きなんてするわけ無いだろ!

決して、今日の雛乃はセクシーなヒモパンで、鼻血出そうになっただなんて全然無いんだからな!ほ、本当だからな!

話を戻して(強引に)、蹴りの体勢からゆっくりと脚を降ろしている雛乃がいた。

脚の先から膝まで炎が螺旋状に渦巻いているのを見て、あの破壊力はあれからきてるんだなと、ぼんやりと分析してしまった。

雛乃は脚の炎を消してフッと息を吐くと、僕を見た途端にさっきの鋭い目が嘘のように潤んだ目になり、表情も心配そうな顔に変わった。

膝を付いて座り、スッと顔を近づける。


「雄司様、大丈夫ですか!?怪我や痛いところはないですか!?」

「え、あ、うん!だ、大丈夫、大丈夫だから!」


ちょ、待って!心配してるのは分かったから、そんなに顔を近づけないで!うぅ、あと少し近づいたらあの柔らかそうな唇にキスが出来るけど、もしヤっちゃったらいくら雛乃でも怒るよね。分かっててしてるんだったら、相当な悪女ですよ雛乃サン?

僕は自分の顔が赤くなるのを感じ、目を逸らして雛乃の肩を掴み、グイッと身体を離す。

ふぅ、全く。理性を保つのも一苦労だよ。

顔の温度が上がって汗が頬をつたうのを袖で拭うと、ピリッと頬に痛みを感じた。何だと思って袖を見ると、ほんの少しだけ血が付いていた。

どうやら頭を踏まれたときに、頬をコンクリの欠片か何かで切ったみたいだな。まぁ、このくらいだったら唾つけとけば治るか。

そんな風にお気楽に考えてると、ゾクッと背筋が寒くなる感じがした。

まさかと思って雛乃を見ると、何か物凄く怒っている!

但し、無表情で!

怒りスマイルの次に恐ろしい、怒りクールが目の前にー!?

え、何、僕何か怒らせるような事したっけ?

慌てて心当たりを探そうと思考を張り巡らせる。

……うん、色々有りすぎてどれの事なのかさっぱり分からない!

挙げ句の果てには、どんな土下座で謝ろうかと冷や汗をかきながら考えていると、雛乃がスッと立ち上がり、右手に黄色の光を、左手には赤色の光を集めていく。

そして両手を胸の前で合わせると、一瞬輝いて何かが出現した。

それは、30cm程の炎の球体と、その表面をバチバチと放電している、見るからに危険そうな代物だった。

う、嘘、そこまで怒ってるの!?せめて原因を教えてくれないかな!?出来るだけ改善するから!

僕はお仕置きされる前に聞こうと雛乃を見上げると、怒りの視線が僕じゃなく、後方へと向けられていた。

あれ?僕に怒ってるんじゃないの?僕の後ろを見てるって事はまさか……。

ゆっくりと後ろを振り向くと、まだ呆然としているキザ男とよろよろと起き上がっている黒服達がいた。

まさか奴等に怒ってるのか?でも既に懲らしめてるし、僕達も無事だったんだから、それ以上怒る事は無いと思うけど?

あれ程痛い目に遭わされていても、もう赦してしまっている自分に苦笑してると、雛乃が何か呟いているのに気付いた。


「………よくも……雄司様を傷つけた……許せない……護らなきゃ……」


……えーと、つまりこの頬のちょっとした傷が、雛乃の怒りに触れたと?いやいや、この程度の怪我でどうにかなるほど虚弱じゃないから。

取り敢えず雛乃を止めよう。もう今にもあの物騒なモノを放ちそうだし。というか、放つモーション入ってる!ヤバッ!


「雛乃、僕なら大丈夫だから!それ、降ろしてくれ―――っ!?」

「―――えっ!?」


ドンッッ!!


「「あ」」


ズゴォォォーーーンッッッ!!!!


「「「「ぎゃああぁぁぁぁぁぁーーーっっ!!」」」」

「「…………」」


結局、放たれてしまった炎の球体は、物凄いスピードでキザ男達へと飛んでいき、避ける間もなく命中した途端、天にも昇るほどの火柱が上がった。

遅かったか……。

というか、これって僕が急に大声を出して雛乃を驚かせてしまったからだよな。

反省しないといけない。後悔はしてないけどね!

しばらく火柱を見て消えるのを確認すると、僕達はキザ男達の様子を見に行った。


「何て言うか、真っ黒だね」

「黒いですね」

「実際に燃えてアフロになるのは、コントだけじゃないんだな」

「そうなのですか」


そんな呑気な会話と対象に、その場は死屍累々と化している。と言っても、奴等は全員が煤だらけのアフロで気絶していた。

あれ程の攻撃でこれで済んだなんて、頑丈というか、しぶといというか、呆れを通り越して感心してしまった。


「雛乃の力って、本気を出すとここまで凄いんだね」


ホント、向かうところ敵無しって感じだ。

興味本位で何気なく聞いたつもりだったが、次の言葉に驚愕してしまう。


「本気……?雄司様、私は出来るだけ手加減しましたよ?」

「………手加減、したの?」

「はい、ぎりぎりで力を抑えることが出来ました。感情的になってしまいましたので、反省してます。すみませんでした」


雛乃は自分の頭をコツンと叩くと、深く頭を下げる。しかし、僕にはどうしても聞かなきゃいけないことがあって、謝罪もそこそこにして頭を上げさせた。


「なぁ雛乃、本気じゃないなら、あれはどれ位の力でやったの?」

「そうですね……、今使える力の大体3割程度ですね」

「3割……」


たった3割であの威力って!それじゃあ本気だったら街1つ破壊出来るんじゃないか!?使わせなきゃ問題ないだろうけど……。

……ん?今使える力?


「今使える力ってことは、他にもあるのか?そんな力が」

「はい、ですが現時点では使うことは出来ません」

「どうして?」

「それは封印しているからです」


封印だって?何だか穏やかじゃないな。爺ちゃんは何を考えてそんな力を雛乃に与えたんだろ?多分何も考えてないよな。


「封印するくらいなら、初めから与えなきゃ良いのに!爺ちゃんにも困ったものだよ」


呆れて溜め息をつくと、雛乃が違いますと言って否定した。


「この力は与えられたものではありません。元々私が宿している力ですよ。ただ、幼い頃は制御が出来なくて身体が耐えられず、封印せざるを得なかったのです……」


そう言って少し表情が曇る。

う~ん、強大な力を持つというのも、結構苦労するんだな。

でも、あれ?なんかおかしいぞ?


「雛乃は爺ちゃんに生み出されたんだろ?だったら与えられたで間違いないんじゃないのか?」

「ええ、確かに博士によって私は創られましたが、1からというわけでは無いんです」

「どういう事だ?」

「それは……」


と、そこで言葉が詰まる。何故かとても言いにくそうだ。

もしかして、あまり触れて欲しくなかったのかな?


「ゴメン、やっぱり言わなくていいよ。誰だって知られたくない事の1つや2つは有るんだしね。いつか話してくれるまでは、無理には聞かないよ」

「雄司様……」


雛乃は申し訳なさそうにしつつも、ホッとしていた。

さて、時計を見るとあと10分で昼休みが終わる。

今から教室に戻って早く昼飯食べないとやばいな。

キザ男達はどうしよう。そのままにしておこうかな?よし、自業自得ということで諦めて貰おう。因果応報というものだ。何か言ってきても、知らぬ存ぜぬで押し通そう、それが良い。


「行こうか、雛乃」

「え、あ、はい、雄司様」


雛乃は何か空を仕切りに見上げていたが、僕が歩き出すと諦めてついて来た。

さーてと、教室に帰ったら真也達から質問攻めにあうだろーな。取り敢えずは適当に誤魔化すか。


教室に入ると、僕の机の側で、真也達が待ち構えていた。


「あ、雄司、帰ってきたな。お、雛乃ちゃんも一緒って事は、断ったんだな?」

「まぁ、概ねそんな感じ」

「はい、お断りしました」


まさか倒して来たなんて、流石に言えない。


「天坂君、雛ちゃんが断ったって聞いて安心した?凄く気にしてたもんね♪」

「う……っ!それは……まぁ……」

「………?」


やっぱり僕の気持ち、気付かれてるよ。しばらくはこれをネタに、からかわれるだろうな。覚悟しとこう。


「はぁ~ん、私の雛乃ちゃんが男の毒牙に掛からなくて、ホントに良かった!」

「おい待て、雛乃は香山さんのモノじゃ無いだろ!どさくさ紛れに抱きつくな!」

「あの……、えっと……、ありがとうございます……?」


ええい、かえってキザ男よりもたちが悪い!

さて、戯れもほどほどにして、早く食べないと時間が無い!


「雛乃、時間無いから早く弁当くれないか?」

「はい、すぐに用意しますね。え…と、――っ!?……あ、あの、雄司様?」


雛乃は、バックの中から弁当を取り出そうとしたが、不意に硬直してしまう。そして恐る恐る僕を呼んだ。


「ん?どした?」

「……ありません」

「……は?」

「正確には、お弁当の中身がないんです」


そう言って僕用の弁当箱を開けてみせる。

……確かに無い。何でだ?朝に弁当を作っていたのは見ていたから知っている。だから中身が無いのは絶対に有り得ない!失踪か?蒸発か?事件なのか!?

見た目は子供、中身は大人の少年探偵並みに推理してると、隣にいた真也がばつが悪そうに話しかけてきた。


「雄司、その、怒らないで聞いてくれ」

「何だよ真也?僕は今、弁当窃盗犯の捜索をしなきゃいけないんだ。邪魔しないでくれ」

「いや、その犯人、実は俺達なんだわ」

「……はあっ!?」


そんな!犯人が身近にいたなんて!


「その、な。まさかお前がぎりぎりで帰って来るとは思わなかったから。食べる時間は無いだろーと思って、変わりに食べちまったんだ。すまん。それと、ゴチ!」

「雛ちゃん、料理凄く美味しかったよ!ご馳走様でした♪」

「本当に美味しかったわ!私の嫁にしたい位、寧ろ嫁に来て!」


あっはっは、そりゃそうだろう。雛乃の料理は天下一品だからな。

でもな、


「こんなオチは嫌だーーーっ!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ