第14話テストの悪夢と初めての友達(女子更衣室は男のロマン)
主人公パートとヒロインパートがあります。
《抜き打ちテスト》
それは予測不能の惨劇であり、僕達生徒にとって精神的苦痛の時間である。
しかも内容が僕の苦手な数学なので、そのダメージは計り知れない!
三角関数とか因数分解とか、確かに習いはしたけどそれを憶えているかと言えば自信は無い。
しょうがないじゃん、聞いた側から忘れちゃうんだもの!
「え……と、これは確か……」
いや、憶えてる、憶えてるはずなんだ。
ほら、脳みそのここいら辺に閉まったんだよ、多分。
ちょっと鍵をかけちゃって、その鍵が見つからないってだけで。
「出て来い、出て来い」
思わずゴツゴツと拳で自分の頭を小突いてみたりする。
この公式は三問目の問題で使った公式と一緒に、ついこの前の授業で習ったばかりなんだから、まだ保存期間中なはずだ。
「思い出せ~……負けるな~、僕の脳みそ~……」
ブツブツと呟きながら、テストの解答用紙と格闘し続ける。
「ん……?」
そういえば雛乃の方は上手く出来てるだろうか……と、何気なく顔をあげ、隣に視線を向けようとしたとき、
「はい、それじゃそこまで!」
テスト終了を告げる教師の非情な声とともに、用紙が集められていく。
ああ、そんな待って!まだ半分しか終わってないのに!こ、この一問だけでも、って、ああ!僕の解答用紙がぁー……。
悲痛な嘆きを嘲笑うかの様に回収され、僕のテストは赤点に決定してしまった。
「うぅ~、抜き打ちテストなんてものを考えた奴が憎い!」
僕は拳を握り締めてドンッと机を叩くが、ただ手が痛くなるだけで何だか虚しい。
「よう、雄司!テストどうだった……て、あんまり良くなかったようだな」
手の痛みに悶絶していると、真也が含み笑いをしながらやってきた。
僕はムッとすると、少し強がってみる。
「ふっ、真也よ、この僕を侮って貰っちゃ困るな」
「そうだな、いつもと同じで赤点だもんな」
「…………」
くっ、全く反論出来ないのが悔しい。
こうなったらささやかでも反撃してやる!
「そういう真也はどうなんだよ!」
「ん?俺か?そうだな……、大体90点台はいってるぞ。返ってきたら見せてやろうか?(ニヤリ)」
「ぐふぉっ……(吐血)!」
僕の反撃は見事に弾き返され、カウンターで100ポイントの精神的ダメージを喰らってしまった。
……別にさ、勝てるとは思ってないよ?
そんな自信はないし。
ただちょっとはいい勝負で有りたいと思うのは当然だよね?
……いや、うん分かってるよ、有り得ないということは。
笑うしかないか、アハハハ。
……ハァ(泣)。
「おいおい、そんなに落ち込むなって。ほら見ろよ、雛乃ちゃんが心配してるぞ」
そう言われて隣の雛乃を見ると、困った様な、どう声を掛けて良いのか分からなくて悲しい様な顔をしていた。
ま、拙い!雛乃に心配掛けてる!早く言い訳しないと、雛乃の悲しい顔は見たくない!
「雄司様……」
「ひ、雛乃、これはね、ちょっとテストが上手くいかなくて落ち込んでただけだから!」
「……ちょっと、ね……プッ!(笑)」
「そこ!うるさい!」
笑いを堪える真也に注意する。
「もう終わったことだし、大丈夫だからね。心配ないよ」
「……はい、分かりました。でも雄司様、もし何かお困りのようでしたら、ご遠慮なく私に言って下さい!どんな事でも致しますから!」
「えっ、どんな事でも……!?」
一瞬脳裏にピンク色が展開されるが、雛乃の真っ直ぐな瞳に気づき、すぐに打ち消した。
「う、うん、ありがと、頼りにさせて貰うよ」
「はい、お任せ下さい!」
僕のお礼に、無垢な笑顔で返事をする雛乃。
う~ん、こんなので良いのだろうか?
「おーい、雄司、雛乃ちゃん。次は体育だから、早く着替えないと遅れるぞ」
「あ、そうだね。すぐに着替えないと」
僕と雛乃は体操着を取り出し、制服を脱ぎ出す……て、ちょっと待った!!
「雛乃!何で僕達と一緒に着替えようとしてるの!?」
「雄司様の守護者ですから」
さも当然とばかりに答える。
周りの男子達は脱ぎかけた雛乃の姿に、鼻血を出したり、前屈みになって悶えたりしていた。
ヤバい!教室の中が変態時空になっていく!
僕は急いで雛乃と雛乃の体操着を持って、廊下に避難した。
「あのね、雛乃は女子なんだから、ちゃんと女子更衣室で着替えないといけないんだよ」
「では雄司様もご一緒に……」
「それじゃ僕が変態になっちゃうよ!いいから雛乃は更衣室で着替えてくる!」
「はい、分かりました」
雛乃が更衣室へ行くところを見届けると、溜め息をついて教室に戻った。
「大丈夫、だよな……?」
***********
「雄司様、大丈夫でしょうか……」
私は雄司様のことを考えながら更衣室の前に着きました。
成る程、女子生徒はここで着替えをするのですね。理解しました。
扉を開けて中に入ると、数人の方々が着替えを終えているところでした。
扉を閉めると、その音で気付いたように注目されたので、軽くお辞儀して適当なロッカーを選んで着替え始めました。
ジャケットとシャツを脱ぎ、スカートを脱いだ所で、不意に背後から2人の気配を感じます。
1人は敵意は無さそうですね。
まるで小動物の様な感じがしますが、何だか慌てているような、落ち着きのない様子ですね。
もう一人は、これは殺気……?いえ、邪気といった方が正しいのでしょうか?
まるで獲物を狙う狼の様な感じで、徐々に近づいてくるのが分かります。
排除……は良くないですよね。勝手な行動は雄司様のご迷惑になりますし。
行動不能なら良いでしょう。
私はそう考えて、背後の人物が充分に近づいたことを確認すると、瞬時に反転して、その勢いを利用した回し蹴りを頭部に当てる……、
「うひゃあっ!!」
「きゃっ!!」
「えっ!?」
……寸前で脚を止めました。
よく見ますと、クラスの女子の方ですね。
脚を下げると、相手の方は糸が切れたように座り込んでしまいました。
腰が抜けてしまったようですね。悪いことをしてしまいました。
私は少し屈むと、手を差し出しました。
「大丈夫ですか?」
「あ、脚が!か、顔のすぐ横に!ふ、風圧がぁー!!」
軽く混乱しているようです。
トラウマにならなければ良いのですけど。
私はどうしましょうと思案していると、もう一人の方が来て腰に手を当て、相手を叱り始めました。
「玲ちゃん駄目だよ!初対面の挨拶でそれはやりすぎだからね!そうやって反撃されちゃうんだから!」
「うおーん、千影ー!その胸の2つのマシュマロで、私を慰めてくれー!」
「や、やだー!」
狼(?)娘は小動物(?)娘に抱きつこうと飛び上がり、小動物(?)娘はどこから取り出したのか、ハリセンを握り締めて上から下へと振り下ろしました。
スパコンッ!
ビタンッ!
狼(?)娘は頭から床に打ちつけられました。
え……と、これはどういう事でしょうか?
その光景を意味も分からず見ていると、小動物(?)娘が笑いながら話しかけてきました。
「あはは、えっと、うちの玲ちゃんがなんかゴメンね?この娘、可愛い娘を見るとセクハラしちゃう癖があるから。君、転入生の桜花雛乃ちゃんだよね?」
「え、はい、そうですが。え……と……?」
「あ、私は松永千影、よろしくね。で、こっちの変態が……」
「狙った愛い娘は私のモノ!ラヴハンターこと香山玲奈よ!いつまでもよろしく!」
素早く起き上がり、親指を立てて笑顔で自己紹介(?)をされました。
松永千影さんは栗色のツインテールに細いタレ目、身長は150くらいで健康的なスタイルをしています。
香山玲奈さんは紅色のショートヘアにつり目、身長は170くらいでスレンダーなスタイルをしています。
2人共、普通の一般人みたいですね。
取り敢えず危険は無いようですし、友好的ですので、こちらも自己紹介を致しましょう。
「私は桜花雛乃と申します。松永さん、香山さん、どうかよろしくお願い致します」
ペコリと頭を下げると、何故か苦笑いをされました。
あれ?作法を間違えましたか?
「あのね雛乃ちゃん、そんな堅苦しい言い方じゃなくて、もっとフランクに喋ってよ。それと気楽に名前で呼んで欲しいな♪ねっ、玲ちゃん」
「ああ、そうだとも。私のことも気楽にお姉様と」ゴスッ!「グホッ!……玲奈と、呼んで、くれ……」
玲奈さんは千影さんに鳩尾を殴打され、膝をついて痙攣されています。
大丈夫、なのでしょうか?
「あの……、玲奈さん?大丈夫ですか?」
私は恐る恐る声をかけると、急に起き上がり、血走った目で凝視されました。
「うおおお雛乃ちゃんみたいな可愛い娘に心配して貰えるなんておやよく見たら下着姿でしかも純白のフリルのブラとショーツにこれまた純白のニーソってまさしく純白の天使じゃないのとどめにエロエロナイスバディで特にその巨乳たんはFいやG近くはあるわねああもうお姉さん辛抱溜まらんばいその魅惑の肢体でわたしの痛みを癒させて」ボゴッ!「痛!何すんのよ千影」ガスッ!「ちょっと待っ」バキッ!「ああ!腕が変な方向に」ベキッ!「骨が今嫌な音を」ドグシャッ!「嫌もう本当、赦して下さい!申し訳ありませんでした!」
玲奈さんは床に額を擦り付けて土下座をし、千影さんに赦して貰うことが出来ました。
「もう、駄目だよ!幾ら雛乃ちゃんが可愛いからって、欲望を剥き出しにしちゃ!」
「ゴメン千影。私の中の悪魔が囁いてきちゃって、今日は天使が休暇だから簡単に誘惑に負けてしまったよ」
「四肢切断すれば勝てるかもね♪」
「すみません!反省してます!」
「ふぅ、全く。あっ、雛乃ちゃんごめんね、時間取っちゃって。待ってるから早く着替えて一緒に行こ♪」
「はい、ありがとうございます」
どうやら私にお友達というものが出来たようです。
何だか嬉しいです。雄司様も喜んで下さるでしょうか?