第11話放課後の逃走劇と祖父からの嫌みな贈り物(やっと序章が終わります)
ラブを6、コメディを4の割合で書いてる筈が、なんだか逆になってます。
チッ、チッ、チッ、チッ
6時間目の授業で、僕は時計の秒針を凝視している。
よし、授業終了まであと5分か。
教師の話は聞いていない、というか聞く余裕がない!
僕の頭の中は逃げることしか考えていないのだ!
何からだって?
決まっている!この四方八方から殺気を含んだ死線、もとい視線を放つ男子達からだ!
油断をしてはいけない!隙をみせたら即、死が待っている!
頭の中で逃行シミュレートを開始する。
僕の席は真ん中の少し前。
後方の扉では遠いので、チャイムの音を合図に、前方の扉から出て一気に雛乃のいる屋上まで走る!
階段だと、僕の体力では途中でへばって絶対に捕まるだろうし、安全と時間短縮の為にもエレベーターを使った方が確実だよな。
逃げ足だけ(強調)は自信がある!
必ず逃げ切って生きて帰るんだ!
時間はどうだ……?
おっ、もうすぐか!
秒読み開始!
……5!
……4!
……3!
……2!
……1!
……0!今だ!!
キーンコーンカーンコーン
ダダダダダダッッ!!
チャイムが鳴ると同時に、手元に忍ばせていた鞄と靴を掴んで、一気に駆け抜ける!
「あの野郎、逃げやがった!!全員捕まえろ!生きて帰すな!」
「「「「「モテる奴には死をおおぉぉぉ(殺)!!!!」」」」」
ドドドドドドドッッッッ!!
僕は後ろから迫る音を、走りながらチラッと確認すると、恐怖で体が震えた。
だって追いかけてくる男子達の顔が、鬼の形相をしてるんだもん!
目も血走ってるし、身の危険を感じる!
それになんか鈍器のような物を持ってるぞ!
よく見ると、バットやら竹刀やらどこから持ってきたのか、日本刀まで振りかざしている!
ちょっと待て、本気で殺る気なの!?
冗談だと言って!お願い!!
「いいいぃぃぃやあああぁぁぁ(泣)!!!!」
僕は泣きながらがむしゃらに走った。
このまま廊下を真っ直ぐ行った突き当たりに、エレベーターの乗り場がある。
見れば丁度入口が開いていた。
「ま、
に、
あ、
えーーーーー!!!!」
僕は滑り込みでエレベーターの中に入ると、すぐに閉ボタンを連打した!
閉まっていく扉の隙間から、百鬼夜行と化した男子達が迫ってくる!
しかし、あと数メートルというところで扉が閉まり、エレベーターが上昇し始めた。
「た、助かったぁ~」
僕はその場でへたり込み、生きる喜びを噛み締めた。
チーン
「お、着いたか」
扉が開くとそこは天国、ではなく日が傾きかけたオレンジ色の屋上だ。
放課後になれば流石に誰もいないな……、て、ちょっと待て!
雛乃はどこ行った!?
キョロキョロと周りを見渡すと、隅の柵にもたれ掛かって座っている女の子を見つけた。雛乃だ。
「こんな所にいたのか……、てあれ?」
「……スゥー、……スゥー」
「……寝てるのか」
規則正しい寝息だな。気持ち良さそうだ。
そういえば、外はポカポカ陽気だったし、気持ち良くなって睡魔に勝てずに寝ちゃったんだろう。
でも本当、幸せそうな寝顔だなー。
見てる僕まで幸せに感じるよ。
しかしこのままだと風邪ひくかもしれないし、そろそろ起こすか。
「雛乃起きて、もう帰るよ」
「……スゥー……んんっ、ふにゅぅ…?」
雛乃は猫が顔を洗うように目を擦ると、ボ~ッと寝ぼけ眼で僕を見つめる。
「……ゆーくん(ボソ)?」
「……へっ?」
なんだ?何か雛乃が呟いたみたいだったけど、小さくて聞き取れなかったぞ。
「雛乃……?」
「……はっ!あ、あれ?雄司様!?」
雛乃はパチッと目を覚ますと、僕に気づいてサッと姿勢を正す。
「あ、起きたね」
「は、はひっ!お、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ありません!」
「いや、いいよ。さ、帰ろうか」
「はい……」
雛乃は顔を赤らめながら、コクンと頷いた。
それから雛乃に護られながら(衝突寸前の車を僕の手を引いて跳んで避けたり、倒れてくる電柱を岩の盾を作り出して弾く等)家に帰ると、一抱え分の包みが届いていた。
「んっ?誰からだ……、て爺ちゃん!?」
僕は宛名を見て驚き、リビングに運んで中を開けてみる。
そこには一通の手紙と衣類とバックが入っていた。
手紙を手に取り、読んでみる。
〈バカが見~る(^O^)〉
ピキッ!
僕は無言で手紙をグシャグシャに丸め、ゴミ箱に全力投球した。
しかし外れて床に落ちる。
ハア、ハア、ハア!
あんのクソジジイ!一体どこほっつき歩いてるんだ!
帰って来たらぶっ飛ばす!
そう心に刻んでいると、雛乃がキッチンからお茶をお盆に乗せて運んできた。
「お茶がはいりました、どうぞ」
「ありがと、雛乃」
「ところで随分とお怒りのようですが、何かあったのですか?」
「いや、あれなんだけど……」
床に落ちてる丸めた手紙を指差す。
「爺ちゃんがふざけたこと書いてたから頭にきちゃってね」
「まあ、博士からですか」
雛乃は手紙の所に向かうと、それを拾って戻ってきた。
そして丁寧にシワを伸ばすと、読み始めた。
「あら……、まあ……、わぁ、すごいです!いいんですか!?」
おや?あの一行を真剣に読んでるかと思えば、次は凄く喜んでいるぞ?
あの文字に一体どんな意味が!?
と、そこで気づく。
雛乃が読んでる所は、僕が読んでた所じゃなくてその裏側だったのだ。
アッハッハッ、こりゃ一本取られた、なんて思わないぞ!ドチクショー!
僕はなんとか怒りを押し込める。
それにしても、何が書いてあるんだろ?聞いてみるか。
「雛乃、それ何て書いてあるんだ?」
「あ、はい、これはですね、私が学校へ通うようにとの申しつけです」
「……はっ?もう一度言ってみて」
「私が学校へ通うようにとの申しつけです」
「……マジ?」
「はい」
雛乃はコクンと頷く。
僕は手紙を受け取って読んでみると、確かに書いてある。
既に全ての手続きを済ませていて、明日から通えるそうだ。
なんつー手際の良さ!
色々問題ありそうだけど、手続きしてるんだったら通わないといけないよな。
衣類とバックも、よく見たら僕の学校の女子制服と鞄だし、文句をいわせないようだ。
まっいいか。学校行ってる間の雛乃の問題が片付いたし、雛乃も嬉しそうだしね。
これからの学校生活に思いを寄せていると、ふと手紙の一番下に小さく何かが書いてあるのに気づく。
なになに?
〈追伸 頭の出来は雛乃が上だ。ざまあみろ(^w^)ププッ(笑)〉
ブチッ!
ビリビリビリビリ!
僕は手紙をビリビリとやぶくと、ゴミ箱に押し込んだ!
ふざけんなー!!