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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
4 ヒトツキの戦い
92/118

幕間 修道騎士は辛いよ「ウィルトン①」

「――大隊長、ラポンへはあとどれくらいかかるのだ?」

()()()()馬で二日の距離まで迫っております」

「……つまり、()()二日では辿り着けない、ということだな?」

「仰る通りにございます」


 故郷の祖母が言っていた。

 言いにくいことは、むしろ堂々と言え、と。口ごもれば罪悪感を感じてしまう。堂々としていれば自信もつくし、相手に足元を見られることもなくなる、と。

 その教えを実践してきた結果、「生意気だ」だの「開き直りだ」だの「反省の色が見えない」だの散々言われ続けてきた。しかし、彼にそれを改める気はなかった。

 周囲の者よりもほんの少しだけ強かったので、ある程度は出世した。自分はもうこれで満足している。

 例え皆に嫌われていようとも、陰口を叩かれようとも、堂々としていれば怖くないはずなのだから――


 現在、彼――『青海の騎士団』第五大隊大隊長、ウィルトン・ホーメスは帝国領内の『軍用街道』を北西に馬を走らせていた。共に駆けているのは第五大隊約百騎。そして『神獣』とその得体のしれないお付きの者達が二十騎ほどだった。

 彼は今まで色々なお方に付き従い、護衛や補佐にあたってきた。


 軍事に疎くなにも知らない大司教。

 国を焼け出され着の身着のまま逃げる難民達。

 物語の騎士への憧れを語る現実を知らないクソg――夢想家の貴族の令息。

 他者の生命を、()()()()直接奪う機会がなかっただけだと理解しようともせずに、こちらを背徳者呼ばわりしてくるa――慈しみに溢れた敬虔な信徒様。

 信仰の足りていない者は誰であろうとも「悪」で「悪」はすぐに殺せば良い。「正義」を成しているのだから皆に称賛されるはずである、などと本気で(のたま)う、短絡的で子供の感性のまま身体だけ大きくなったb――初心を忘れない純真な上司。


 そんな中でも一、二を争うほどの面倒な相手、それが『神獣』だった。

 これといった会話があったわけではないが、明らかに価値観が今までの方々とは違う。最初に会った時の値踏みするような視線、お眼鏡にかなったのかは分からなかったが、とりあえず傍に侍ることは許されたようだ。

 それでも、言葉の端々には思考の方法の段階からの彼らとの断絶を感じさせる。

 端的に言えば、統一性がないのだ。

 年端もいかない子供のような時もあれば、人を人とも思わず一切の躊躇いなく踏み潰せそうな冷徹さを見せる。

 要衝都市(シナラス)で見た光景は、年単位で夢に見ることになるだろう。聖都の聖職者とは違う意味で、神獣は神の教えに忠実だった。

 ……にも関わらず、その行動から神への忠誠や敬意が感じられないように思うのは、自分だけなのだろうか。

 やはり言葉を解し、こちらに協力的とは言っても『神獣』は人外(魔物)。その価値観は彼ら人族とは相いれないものがあるのだろう。

 そんなことを考えながら、この真意の読めない今の上官に付き従い、ラポンへと馬を進めた。


◇◇◇


「――おい。おい起きろ。ウィルソン大隊長、起きろ」

「うんにゃ、俺はウィルトンだ……ぞ……。……ん……んん? ……しっ神獣様?」


 知らぬ間に寝てしまっていたらしい。彼が目を覚ますと、目の前には神獣の姿が。その奥には、見覚えのない森が広がっている。

 忌々しい金毛のb――帝国貴族と神獣が何やら話していたことは覚えている。教皇庁が突然禁止した『転移陣』を使わせろ、という厚かましい願いに何故か神獣が乗ってみせたので、彼はその意を汲んで先に進んでいたはずだ。

 ……流石に教皇庁が禁止している『転移陣』を使用する現場を目撃されたくないのは理解出来たし、彼も面倒事はごめんだった。

 しばらくして神獣が追いついてきて……その後の記憶がない。気付いたらここにいた。

 周囲には彼と同じく寝起きらしい部下や、未だ眠りこけている部下が小隊単位で固まって座っていた。

 景色が一変していることに驚いている者や、寝ぼけている者、夢だと判断して二度寝をしようとする者など、反応は様々だった。

 全員に共通しているのは、今まで眠っていてどうやってここに移動したのかは分からない、ということだ。馬までどうやら眠っていたらしい。寝起きで気が立っていた馬に危うく蹴り飛ばされそうになった部下がいた。

 神獣によれば、ここは目的地であるラポン付近の森だという。どうやって移動したかははぐらかされた。曰く「知らない方が良い」そうだ。

 準備が整い次第出発すると命じられ、部下に支度をさせるために彼は神獣の前を辞す。寝ぼけている部下を叩き起こし、寝起きの馬を宥めて準備を整えさせるには、いつもより時間がかかりそうだ。

 ……微かだが、身体から薬品の匂いがする。辺りの部下からも同じ匂いがしている。それに、身体がどことなく粘つくような……? 移動手段をはぐらされたのも引っかかる。しかし、彼はそれ以上の詮索をやめた。

 故郷の祖母が言っていた。

 誰かにとって都合が悪そうなことには首を突っ込むな、と。何かに気付いたとして、それを指摘する者は組織に必要ではあるが、それを自分がやる必要はない、長生きの秘訣は出しゃばらないことだ、と。

 その教えに基づけば、神獣がどうやって彼らをここへ運んで来たかを探ったところで良い結果は得られないだろう。

 恐らくこちら(運ばれた側)は嫌な現実を目の当たりにすることになるであろうし、あちら(運んだ側)もわざわざ濁した部分をあげつらわれるのは良い気分ではないだろう。互いにとって、この件はこれ以上考えなくて良いのことなのだ。

 ……それはそれとして、身体を拭いたい、贅沢を言えば水浴びをして着ているものは全て洗いたい、そんな思いが湧き上がるのを、彼はなんとか表に出さずに抑え込んだ。

 

 しばらくして準備が整い、彼らはラポンへ出発した。訓練の成果か、寝起きとは思えない洗練された動きだ。洗練された整列に、神獣がかすかに感嘆の息をこぼすのを彼は察して少し誇らしかった。

 しかし、しばらく進むと小さな問題が起きた。わずかだが隊列が乱れたのだ。

 神獣はともかく、第五大隊の面々は、ここまで来たからには一刻も早く到着しなければならない、と少しずつ速度を上げていく。彼とてその気持ちは分からないでもない。しかし、焦り過ぎるのもどうかと考え、彼はあくまで冷静に行動することを心掛けていた。故に無理に速度も上げない。

 ラポン陥落の報がシナラスにもたらされてから既に一週間が経過している。神獣は気にしていないようだが――考えたくはないが、忘れている可能性もある。考えたくはないが――途中で合流するはずだった帝国諸侯軍とは一度も合流どころか連絡すら取れていない。それだけ事態はひっ迫している可能性が高い。


「あっあれが……」「ラポン……なのか……?」


 森を抜け遠目にラポンの姿が臨めるようになると、彼の嫌な予想は案の定的中していることが分かった。都市から少し離れた所に帝国軍は陣地を築いていたが、戦況有利とは到底言えなさそうな様子だ。

 城壁や塔には攻城弩(バリスタ)で撃ち込まれたと思われる槍や投石車(カタパルト)で撃ち込んだ岩が複数刺さっている。帝国軍の陣地にはあれ程の槍や岩を撃ち出せそうな大型の攻城弩も投石車も見当たらない、都市を攻略する際に魔王軍が撃ち込んだのだろう。

 どうやってここ(帝国領)までそんな大型の攻城兵器を持ち込んだのか、ということは気になるが、今は良いだろう。先ずはこの都市(ラポン)を奪回することが何よりも優先される。余計なことは考えずにそのことだけに集中しなければ。


「おっおい! あれ!」


 部下の一人が指し示したのは、城壁から吊るされた兵士らの死体だった。惨たらしいその姿は都市に居座る招かれざる客の素行を如実に表していた。何があっても彼が奴らと分かり合えることはないだろう。

 到着した陣地も散々な有様だ。所狭しと張られた天幕からは呻き声が途切れることなく聞こえている。血と腐った肉の臭いが辺りに充満しているが、そこかしこに座り込んでいる兵士にはそのことを気にしている余裕はなさそうだ。攻城どころか軍としての形を維持することも難しいような燦燦たる状態だ。

 しかし、これはもはや分かり切っていたことだ。彼に同情はあろうとも特に驚きはなかった。帝国の上層部は事態を深刻には捉えていないだろうことも、現場にそのしわ寄せが行っているであろうことも十分に予想出来たことだ。

 帝国内の軍権を中央が握っている以上、周辺の貴族が独自の判断で援軍を出すのは難しい、と言うより不可能だ。中央は『剣帝』『白炎』が常駐している上にいざとなれば隣国(教皇国)から『勇者』がすぐに駆け付ける所為で危機感が麻痺している節がある。よって中央が事態を重く受け止めずに兵を当初の予定通りにアサリ(城塞都市)へ向かわせるであろうことはシナラスを出発した時から分かっていた。

 ラポンを占領した魔王軍が討って出ていれば話は違ったかも知れないが、幸い――もしかすると残念ながら――そうはならなかった。増援なしの状況下で陣地と人員の被害をここまで抑えたのは指揮官の手腕の賜物だろう。彼はそれだけの名指揮官をこんな所で使い潰そうとする帝国という国に、彼は何度目か分からない侮蔑の念を抱く。

 天幕から現れ彼らを出迎えた二人の指揮官は、やっと増援が到着したことの喜びと、その増援があまりにも少ないことに対する失望で複雑そうだ。彼の中での指揮官達に対する同情の念が膨らみ続ける。

 それでもこの惨状での増援は有難いのだろう、彼が挨拶をすると喜びがわずかに上回った様子で彼らを天幕に招き入れようとする指揮官に、彼は心ばかりの朗報を伝える。


「安心しろ。派遣されたのは第五大隊だけではない」

「おお、それは本当か?」


 顔に隠しきれぬ期待の色を見せた指揮官に、彼はこのまま告げてよいのか内心迷いながらも、それをおくびにも出さずに言い切る。下手に詰まれば、その方が期待に沿えなかった時の指揮官達の失望が強まると考えたからだ。


「ああ、こちらにおられるのが神獣様だ。御降臨されたことは貴様らも耳にはしているだろう」

「神獣……様?」


 指揮官の顔に再び失望と僅かな嫌悪の表情を浮かぶ。やはり一般的な『神能教』信者の反応としてはこれが正解だ。突然現れた『神獣』を名乗る人型の魔物など恐怖の対象でしかない。知性のある魔物が同種の知性のない個体に比べてどれだけ恐ろしい存在か。そんなものは。多少なりとも軍事の心得があって戦史を学んだことがある者ならば周知の事実だ。

 そうだとしても、教皇庁がそうだと言っている以上、嫌悪感を公に見せるのは、地位ある者としては許されざることだ。恐らく普段の指揮官達ならそんな思いは顔に出さなかったであろう。それだけ戦場で精神をすり減らしているということだ。幸い、神獣は自分に向けられた嫌悪感に気付いた様子はない。もしかすると向けられ過ぎて麻痺しているだけかも知れないが。

 それから神獣の高圧的な態度にヒヤリとさせられる場面こそあったが、想定よりも簡単に話はまとまった。大部分が負傷兵であるこの状況では、神獣の根拠の分からない自信に乗るしかないと思ったのかもしれない。このままでは定期的な魔王軍の空からの襲撃で攻撃どころか抵抗すら出来ずに全滅してしまうのは誰の目から見ても明らかだった。


◇◇◇


「隊長、各隊所定の配置につきました」

「ああ、装備を再度確認し、そのまま合図を待て」


 彼率いる第五大隊は、神獣達と別れて門から少し離れた位置に潜んだ。馬はいつでも乗れる体勢でかがませてある。目の前の城壁にも岩が突き刺さり、胸壁には亀裂が走りあちこちが欠けている。ここでも激しい戦闘があったことを如実に物語っていた。どれだけの(魔王軍)が待ち構えているか分からない。それでも、作戦成功には彼ら第五大隊の役割は重要だった。絶対に失敗するわけにはいかない。


 神獣が立てた作戦は、大まかにはこうだった。

 神獣自ら六百の負傷兵から成る〝囮〟の部隊が南門へ攻撃を仕掛ける。そして、()()()()()()()()()()()()()()。神獣が派手な動きで魔王軍を南門に引き付けているその隙に比較的動ける兵を他の三門から入城させる。

 彼ら第五大隊は最精鋭として、中央へ最も近い、故に最も頑強に作られている東門が割り当てられた。この無傷の百騎に求められる役割は、敵の目が南門へ集中している間に都市の中心部を掌握することだ。より詳しく言えば、市庁舎と中央塔を押さえて上から突入部隊を誘導する。ついでに、市民は中央部に監禁されている可能性が高いので、見つけ出して解放してやる必要もある。

 

「……合図だ」


 狼煙が上がった。南門への攻撃が始まったのだ。彼は部下に合図して、先ず徒歩の一個中隊を壁へ向かわせ、残りの全部隊はいつでも突撃出来る体勢で壁への到着を待つ。

 壁に到着すると、侵入部隊のうち二個小隊が〈跳躍〉で壁を登る。残りの小隊は踏み台となった後、上に登った小隊が垂らしたロープを伝って登る。そして、門を開く為素早く城門の開閉機を奪取する。

 常ならば城壁上からの妨害を受けるので、示し合わせて派手に地上部隊が突撃したり、魔法部隊の援護が必要だが今回は一切妨害がなかった。開閉機にも護衛がおらず、門はすんなりと開く。この間、一滴も血が流れていない。

 あまりにも閑散とした城内に、部下達に動揺が広がる。当然のことだ。いくら南門に敵の目を引きつけているとは言っても、これはあまりにも異様な状況だ。


「各中隊ごとに周囲を探索、六百を数えたら中隊長より報告しろ」

「「「はっ」」」


 本部小隊を除く四中隊が市街地へ消えていくのを見送ると、彼は門や開閉室を再度調べた。すると、開閉室の壁に微かだが血の痕を発見した。拭った、と言うよりはあまりにも少量だったので自然に薄くなったようだ。周りの壁にはざっと見た感じ他にはなさそうだ。

 本部小隊の部下達に他の場所にも血痕が残っていないか調べさせ、彼自身はこの血痕が付着してからどれ程経過したのかを考えていた。

 この都市を巡る攻防戦でついた、と考えるのが最も合理的だが、違う気がしていた。根拠はない。単なる勘だ。しかし、彼は戦場における自分の勘を信用していた。


 上官から感じる、まともを装っている精神異常者の気配も、別の上官は口で言っているのとは逆の思想を隠し持っていることも、数度見かけた他部隊の騎士は何やら別の顔を持っているらしいことも、本人に気付かれさえせず、当の彼自身も言語化さえしていなければいくらでも感じ取れた。

 正確な的中率など彼は気にしていない。当たったか、どうかが問題なのではない。そうである、と仮定することで心構えが出来ることが重要なのだ。

 変なことに首を突っ込む気など彼にはさらさらなかったが、()()()思うだけなら誰にも咎められないし、迷惑もかけない。

 

 なんにせよ、この血痕は攻防戦とは別の機会に付着したのだ。ならば、それはいつなのか? その答えは、戻ってきた中隊長達の報告の裏に潜んでいた。


「魔王軍の姿がどこにも見えない?」

「はっ、こちらではその痕跡すらも発見出来ませんでした」

「こちらも同様です」「こちらもです」

「第二十中隊はどうか」

「……我々も一切発見出来ませんでした」

「……そうか」


 四中隊全てが、魔王軍が存在した痕跡すらも発見出来なかったと言うのだ。明らかに異常である。この都市(ラポン)は魔王軍の手に落ちていたはずなのだ。神獣の陽動に引っかかって――そんな馬鹿げたことは流石にしないと思うが――全部隊を南門へ投じたとしても、かつてこの付近に配置していた部隊の痕跡くらいは残っているはずだ。そこまで念入りに痕跡を消し去る時間も意味も魔王軍にはない。

 

「……そうか、それで市民は?」

「……一人も見当たりませんでした」


 彼の質問への回答は、他の三人も同様だった。市民の姿どころか、生活の痕跡すらも発見出来ず。門周辺からは、魔王軍だけでなく市民もまた一切の痕跡を残さず忽然と消え去っていた。

 南側には軍需物資、北側にはシナラス(要衝都市)経由でアサリ(城塞都市)へ向かう帝国軍が集結中だったと言う。つまり、ラポンを襲撃した魔王軍には、『英雄』吸を含むとは言え二千の帝国兵を全滅させられる程の戦力がいたはずだ。当然、帝国軍もただただ一方的に物資を焼かれ、殺戮されるのを黙って見ていたわけはない。その戦闘はそれなりの規模になったはずだ。その戦闘の痕跡すらないのはどう考えてもおかしい。城壁にはあれだけの戦闘の痕跡があったのだ。都市の内部だけ綺麗に痕跡がなくなっているのは不気味でしかない。

 しかし、それをいつまでもこの場で考えているわけにはいかない。全中隊を再度集め、当初の作戦通りに中央部へ向かう。先ずは中央の施設を押さえる。そこに魔王軍がいればこの件はそれでおしまい。いなければその時にまた考え直せば良い。


「北には……貴様、西には……貴様が向かえ。戦闘が行われていても参加はせずに魔王軍並びに市民の姿だけ確認してこい」

「「はっ」」


 その前に()()()()()()()()()()()()()二騎を送り出すと、彼は腹心である第十七中隊の中隊長を手招きする。薄々彼の狙いに気付いているらしい物分かりの良い部下に、念の為に含みを持たせて命令を下す。傍目には単なる配置の指示にしか聞こえないように。


「貴様の中隊は、それとなく両側に広がれ。良いな釣れたら上に一発魔法を放って知らせよ」

「……御意」


 中央部の制圧もあまりにもアッサリと終わった。魔王軍の姿はどこにもなく、奪還に一切の障害はなかった。痕跡が全く残っていない点も門の時と同様だ。北と西に送り出した二騎も()()()()()魔王軍も市民も発見出来ずに帰ったきた。両門を担当した帝国軍も他の存在の気配がまるでしない都市の様子を気味悪がっていたという。


「音を聞く限り、南門では戦闘をしているようだな」

「はっ、作戦通り神獣が敵を掃討しているようにございます」

「まるっきり敵がいない、と言うわけでもないのか……」


 その点が引っかかっているのだ。まだ南にも(魔王軍)がいない、と言われた方が納得出来る。何故南門以外にはいないのか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 一先ず、戦闘が終わった様子の南門へ魔王軍を他の三門では発見出来なかった旨を伝える伝令を送り出し、中央部の建物を隅々まで調べさせる。どこかに何らかの痕跡が残っているかもしれない。僅かな手がかりでも今は欲しかった。

 中央塔を調べていた中隊から捜索終了の報告を受けた彼は、中央塔へ足を踏み入れる。

 そして、彼は目撃した。南門から入城した人族軍へ迫る黒い集団がまさに姿を現す、その瞬間を。

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