67 シナラス攻防戦③
「――ウアホッ」
斬り殺した猿顔の亜人が断末魔をあげて倒れた。確実に死んだことを確認して即座に物陰に隠れる。さっきからこの方法で葬った敵は十を数えるだろう。
断末魔も戦場の音にかき消され、応援が来る心配はない。次の獲物が迷い込んで来るまで武器の点検などをしておく。
互いに精鋭同士が激突しているのもあって人族だけでなく亜人にも被害が出ており、その武器がそこらに散らばっている。それを物陰に引き込んで即席の罠を作ったり僕が使いやすいように手直しして並べておく。
……味方の武器は基本亜人の剛力の前に砕けるか、折れるか、潰されて再利用は難しい。特に、僕が使うのは奮戦むなしく散ってしまった勇士の遺品だから、損傷が酷い。
そんなわけで、僕は敵の武器ばかり使っている。
と言っても柄なんかはとても僕が握って戦える太さではないので、槍の穂先をへし折って剣として使ったり、大槌を相手の顔面にブランコの要領で激突させる罠に使ったり、斧の刃だけ頭上に落として殺す仕掛けに使ったりする感じで、そのままではほぼ使ってない。
それでもそろそろ限界が近い。マーク率いる騎兵隊も善戦してはいるけれども、やはりマーク含め蘇生直後の者も多いし、兵数自体が少ない。少しずつ戦線は南門へと近付いていっている。
なので、僕の罠にはまる敵がいなくなってしまった。誰もここに来ないからね。
あの影の薄い兵士に頼んだ部隊への伝令は上手くいったのかしら。なかなか配置についたという合図がこない。
いや、そろそろマジでヤバい。このままじゃ門前のマーク達、全滅しちゃうぞ。
いっそのこと動くか? でもなぁ、こうゆう時ってだいたい痺れを切らして動いたタイミングで来るよな。
でもなぁ、下手に〝彼ら〟に動かれるとバレるしなぁ。そうすれば折角の好機が完全に裏目に出てしまう。
いやぁ、難しいなぁ。はたしてどう動くのが正解なのか。
とは言え、このまま見ているだけでは機を逃してしまう。それは避けなければ。
よし、動こう。もう少しだけ門に近付こう。
そう決意した僕は、手綱を引いて馬をそっと引き寄せる。この馬はさっきこの路地でオーク――のたぶん上位種――との死闘の末、惜しくも敗れて息を引き取った騎士が乗っていたやつだ。いななかないように、棒を噛ませてある。なんかこれでいななかなくなる……はずだ。間違ってたらその時は諦める。
とっておきの剣は鞘に納めたまま背負う。手には斧の刃を持つ。出会い頭に投げつければ牽制くらいにはなるだろう。ベルトには槍の穂先を三本差しておく。他にもニ本の穂先を鞍に隠す。
僕が静かに跨っていざ行こう、というまさにその時――
「うおぉーー!!」「かかれぇーー!!」
――人族軍の奇襲が始まった。
うっ、このタイミングはありなのか? まぁ、良い。やったからにはこのまま押し切るまでよ。
僕は戦場へ馬を急がせる。周囲にはもう戦っている人はいない。全員門をめぐる攻防戦に集まっているようだ。
「騎士様!」
突然声をかけられた。見れば部隊の指揮を任せた帝国兵だった。少し後ろから部隊も全員ついてきている。伝令に出したカゲウスくん(仮称)も……あっ、いた。
……いや、ホントに気配をまるで感じさせないな。凄まじい才能だ。たぶんただの兵士とかよりも、特殊部隊とか諜報員とかのがその才能を余すことなく活かせるだろう。
「……来たか」
「はっ、我らはいかがいたせばよろしいのでしょうか!」
「私に続け。あの奇襲をかけている部隊に呼応して裏側から攻める」
「了!」
この人めっちゃ声デカいな。元気が取りえで出世してきた感じか? やっぱりこの世界でも軍隊とかはそういう体育会系っぽいノリ、あるのかね……まぁ、どうでもいいや。
見た感じ兵士達の戦意は十分だ。変に興奮してる奴もパッと見いないし、このまま問題なく戦いに参加出来るだろう。
それにしても、〝彼ら〟が仕掛けたこのタイミングに間に合って良かった。ちょっとでも遅れてたら無駄に門を無防備にしただけで終わるとこだった。
今まさに奇襲をかけているのは、南門の防衛部隊だ。
恐らく城壁から降りて一度住宅街に入り、マーク率いる騎馬隊と戦っている魔王軍の背後から奇襲をかけようとしたのだろう。
しかし騎馬隊は思いの外少なく、予想よりも早く門に取りつかれてしまったので、準備が完全に整う前に奇襲を決行したのだろう。
それが、吉と出るか凶と出るかは未だ誰にも分からない。
◇◇◇
「アゥ――ギュアァアァァ!」
「行くぞ。突入したら何も考えるな。前に立ちふさがるのは全て敵だ。味方の騎馬が見えるまでひたすら突撃しろ」
「「「「「「「はっ!」」」」」」」
僕が投げた斧がちょうどこちらを振り向いたオークの顔面にクリーンヒットしたのを合図に突撃をかけた僕の指揮する五十人あまりの歩兵が、急な奇襲で横腹を突かれて動揺する亜人達に再度衝撃を与えた。逆側からの奇襲に完全に気を取られていた魔王軍には少なからぬダメージが入る。
その隙を逃す訳はなく、僕は先頭を走って一路敵の指揮官、つまりクルサォスがいると思われる門の前目掛けてそのまま兵を突撃させる。
流石の亜人も不意討ちにすぐに対処は出来ず、戦列は乱れ陣形に穴が空いた。
そこへ先頭を走っている十数人が入り、その穴を無理矢理に広げる。後続が突っ込んで、亜人はその穴からジワジワと削られていった。
その間僕らは穴をどんどん中心部へと延ばしていった。立ち塞がる者は片っ端から斬り捨てていく。
ただひたすらに斬って、斬って、斬りまくる。
一人、また一人と後について来る兵が倒れていき、最後に一人残された僕は遂にクルサォスに迫っていた。馬も既に傷だらけだったので、可哀想だが乗り捨て、武器は出来るだけ持ってきた。
気付かれる前に〈獅子騙し〉を放ち、全員の動きを止められたと信じ〈縮地〉で距離を詰めると、両手に持った槍の穂先を首に突き立てる。当然一発こっきりの攻撃だ。出し惜しみせず〈破壊付与〉〈破壊強化〉をぶち込んである。
穂先が砕け散ると同時に首の肉を抉り、鮮血が僕の顔面を紅く染め上げる。
「なっ、ウヌはっ⁉︎」
「さっきぶりだな」
「ナニヲ!」「スルカ!」
「『治癒』」
流石は本陣、脇を固めていた護衛らしき二体のオーガが長剣を振り上げ僕とクルサォスの間に割り込み強引に距離をとらせる。すかさずクルサォスには治癒魔法が施された。
護衛オーガAが長剣を寸分の違いもなく僕を真っ二つにする軌道で振り下ろす。
僕は当然身体を横にしてそれを避ける。
そこへ護衛オーガBが直前に横薙ぎに軌道を修正された長剣を足目掛けて繰り出してくる。
跳び上がって足を畳みながらそれを避ける僕の首へ護衛オーガAが剣を振り下ろす。
流石に避けきれず槍の穂先で受けると護衛オーガBの剣が横腹を直撃、制服を斬り裂かれた勢いのまま横向きにふっ飛ばされる。
「ぐあっ、げっ」
すんでのところでかわしたが、首を狙った一突きが僕の首の皮をかすめた。一切追撃の手を緩める気はないようだ。〈回避〉を使いつつゴロゴロ転がって避ける僕へ間髪入れずに攻撃が繰り出され、数回斬られ、突かれた。
めっちゃ優秀やな、コイツら。連携が巧みだし、無駄がまるでない。敵をただただ処分するだけのマシーンだわ。
僕も〈斬撃耐性〉〈刺突耐性〉と〈痛覚耐性〉、なにより〈回避〉があるからなんとかなってるだけで、なかったら今頃お陀仏でしたわ。
なんとか立ち上がった時には、地面を転がったこともあって制服はとんでもないことになってしまっていた。こりゃあ雑巾にも出来ませんな。
「『火球』!」
なんて冗談を言ってる暇はなく、今度は先程クルサォスに治癒魔法をかけていた……コイツもオーガか? ちょっと小さめな気もするしなんか黒い、まぁなんでも良いや。なんにせよその魔法鬼が火の玉を放ってきた。
避けたところには護衛オーガA、Bが待ち伏せてるに違いないし、一発やってやっか。
僕は火の玉をあえて避けず正面から受けた。
「ハァ⁉︎」「ナ⁉︎」「――ッ⁉︎」
そして、そのまま突っ切って魔法鬼を袈裟斬りに一刀両断した。
やっぱりね。たいてい魔法担当は物理に弱いんすよ。違った時は違った時、とりあえずテンプレを信じて突っ込む。
――どうせ死んでも特に困らんのだから。
「キッ、キサm――ゴォ」
更に一瞬何が起きたのか理解出来ずに動きを止めた護衛オーガ――コイツは……確か――Aにすぐさま飛びかかって首に穂先を叩き込む。
こっちは流石にこれでは仕留めきれずに振り払われた。それでもそれなりのダメージは与えられたのか、護衛オーガAは剣を放り出し、首を抑えてうずくまった。
「ッ⁉︎ 『炎』!!」
いやお前も魔法使えんのかい!
残された護衛オーガBがなにやら詠唱すると、奴の剣を持っていない左手に炎の塊のようなものが出現した。そのまま僕目掛けて突っ込んで来たかと思うと、その左手の炎を僕へ向けて突き出してきた。
何も考えずに斬り払おうとしたら穂先は溶け出し、右腕が燃え上がった。
……は? なにが、どうなってるんだ⁉︎
この身体は腕を斬り落としても生えてこない。ヤバい、早く消さなくちゃ。
そこへ無慈悲に振り下ろされた剣が今度は僕を袈裟斬りにする。流石に真っ二つにはならなかったけど、今度こそ終わった。
後ろ向きに倒れ込んだ僕の思考に、とてつもなく久しぶりに聞いた気がする――けど実はそこまででもなく結構最近も聞いた――今更過ぎるアナウンスが流れてくる。
『スキル獲得条件を達成しました。スキル〈火耐性LV1〉を獲得しました』
『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈痛覚耐性〉LV3→LV4にレベルアップしました』
右腕の痛みが少し和らぎ、ネガティブ思考に支配されていた僕は冷静になれた。
諦めるのは未だ早い。ここで大人しく死んでやるのは癪だし、なにか良い策はないものか。
冷静になれたとは言え、時間はさほど残っていない。
HPの減りはペースダウンしたと言っても減ってることに変わりはない。このままじゃ絶対死ぬ。
何か思い付かなくちゃ、と若干焦っていると、あることを思い付いた。あまりにもくだらない、今更? って感じの作戦だ。
冷静になれば、さして難しいことはなかった。実に単純な手だ。
自分では冷静なつもりでも、まだまだ冷静じゃなかったみたいだ。
よし、いっちょやってやっか。
「ギ、ギイヤアァーー! アッ、アァーー!!」
「うっ、痛っ」
止めを刺そうと剣を振り上げる護衛オーガBの眼へ唾っぽくした〈強酸〉を吐きかける。
そしてそのまま燃え盛る右腕にも我が〈酸耐性〉を信じて躊躇なく〈強酸〉を放出、やっぱ痛いわ。
若干腕は焼けただれた感じにはなったが、火は消えた。
痛みは未だあるけど……〈痛覚耐性〉を信じて今は我慢だ。ここが敵を一掃する絶好の機会、絶対に逃すわけにはいかない。
目を抑えもだえる護衛オーガBに素早く近付き、その腹に〈刺突付与〉〈刺突強化〉〈硬化〉を重ねがけした穂先を勢いよく突き刺す。
「グハッ」
「うぅおーー!!」
半ばヤケクソで穂先に全体重をかけるつもりで押し込む。そのまま腹を突き破って逆側に出るくらいの勢いで、だ。
護衛オーガBの腹からは遂に血だけでなく臓物まで出てきた。
僕を引き剥がそうと取れるんじゃないか、ってくらい強く掴まれていた両の肩から腕が外れ、抵抗らしきものが薄れていく。
そして、急に穂先が重くなった。身体を支える力が抜け、僕が全体重を支えなきゃたらなくなった、ということだ。
穂先から手を離し、死体を地面に放る。どうやら勝ったらしい。
こっちもだいぶボロボロだ。しかもこれで終わりじゃない。
今出せる最高速度で振り向き、すかさず未だ悶えている護衛オーガAの首を落とす。こっちはほとんど抵抗はなく、サクッと殺れた。
あまりにもあっけなさ過ぎて、本当に殺せたのか疑わしくなってオーバーキルしてしまうほどだ。
「ハア! 凄まじい腕だな!」
「はぁ……ずっ、と……見てた、のか?」
「ハア! 戦鬼たる者、真剣勝負の邪魔などせぬわ! 馬鹿にするな!」
「ははっ……そう、か」
クルサォスは僕が三体の鬼と死闘を繰り広げるのをただ見物しているだけで、一切手を出さなかった。
……三対一が『真剣勝負』に当たるかは疑問の余地があるが、戦鬼には戦鬼の闘いにおける作法のようなものがあるのだろう。彼はそれに基づいて僕らの死闘を観戦してたわけだ。良いご身分ですねぇ。
クルサォスはあの大剣を背中から抜き去ると、何故か地面に突き立ててこう言い出した。
「ウヌは〈鑑定〉が使えるのか?」
「は? なんの……話だ」
〈鑑定〉が使えるか、だと? 何故そんなこと気にする。コイツにはなんの関係もないだろ。
見たところクルサォスに今すぐ戦闘を始める気はないようだ。
地面に突き刺した剣からは完全に手を離してしまってるし、なんなら眼も離している。こっちを向いたまま何故か手を大きく広げているだけだ。
それでも心なしか笑ってる気がする。オーガの表情は読めないし、どんな文化なのか分かんないので違うかもだけど、どうも機嫌は良さそうだ。
マジで意味が分からん。なんなのコイツ。
僕の困惑など意に介さず、クルサォスはこちらを見て笑っている(ように見える)。
なんとなく、なにかを待っているようにも感じられるな。
援軍……なわけはない。コイツのステータスを見たわけじゃないが、どう考えてもこの亜人達の指揮官である時点でクルサォスは強者の類に分類されるだろう。僕相手にわざわざ援軍など待つ必要はない。
仮に援軍を待ってるとしても、武器から手を離して両手を広げて待つ必要はないだろう。これじゃあ「攻撃してください」と言ってるようなものだ。
……もちろん、僕は罠を警戒してるから絶対飛び込んだりしないけども。
何考えてるか分からんからこちらからは動きようがない。
クルサォスも謎のポーズのまま動かないので、妙な状況が続く。
周囲からは両軍の激突する音と怒号、悲鳴が絶えず聞こえてくるので、ここの異様さが余計際立つ。
そろそろ覚悟を決めようかと僕が剣に手を伸ばした瞬間、
「いつまでこうしておるつもりだ?」
「……は?」
こっちのセリフじゃ、ボケぇ! と言いたいところだったがなんとか抑え込み、僕は聞き返す。
「……なんのことだ?」
「決まっておろう。何故〈鑑定〉を使わんのだ。ウヌはこうして待っておるのに」
「…………は?」
いや、マジでなに言ってんだよ。
〈鑑定〉を、待っている? お前が?
「決まっている」と言うからにはオーガ的には常識なのか知らんが、そんな常識少なくとも僕は知らんぞ。
まぁ、待ってたんなら、遠慮なく使わせてもらおう。
〈鑑定〉をかけられると、なんとも言えない不快感があるのだ。
なんと言うか、舐め回されている感覚――もちろん僕に経験など……ないが――のような、頭頂部から爪先まで全身はネットリとしたナニカが降りてくる感覚と言うか、そんな不快感が発動中続くのだ。
なのでなるべく知性がありそうな相手には使わないようにしてるんだけど……相手が待ってるってんなら仕方ないよな。
なんせ先方がご希望だと言うのだ。それなら叶えて差し上げなくちゃ。
よし、いくぞ! 〈鑑定〉!
【上戦鬼LV39
攻撃能力値:4896
防御能力値:1455
速度能力値:2543
魔法攻撃能力値:3214
魔法防御能力値:1384
抵抗能力値:1172
HP:2765/2856 MP:12/2711】
うへぇ、案の定とんでもないステータスだな。
トロールキング以来のぶっ壊れ性能、本体ならともかくこの身体じゃ勝ち目ないな。
しかもコイツは上戦鬼だ。厄介な固有スキル持ちだから、こちらの攻撃はほぼ効かないと思っといた方が良いだろう。
こりゃあ、だいぶ分の悪い勝負になるぞ。
まともに正面から行くのは論外として……生半可な作戦じゃステータス差でゴリ押される。
ダメだ。勝ち目がまるで見えない。
MPがほぼ空になってるのは、さっきの飛ぶ斬撃(仮称)を撃ったからだろう。アレがもう撃てないのなら、それはこちらにとっては良いことだ。
でも、タイマンする上ではさして関係のない話になってしまうな。近距離で戦う上で、アレはあんまり役に立ちそうにない。
なんにせよ、こっちの打つ手はかなり限られる。
さっきの護衛オーガ二体を仕留められたのは、運が良かったのもあっただろう。
〈酸〉を使うような敵との交戦が少なく、〈酸耐性〉のレベルが低かったんだと思う。
種族固有スキルから考えてクルサォスのも低い……と思いたいが、それを信じて突っ込むのは無謀だろう。
……てかコイツ「待ってる」とか言ってたわりに何回も〈鑑定〉弾きやがって。レベルが高いことも相まってめっちゃ難しかったぞ。
文句を言っていても始まらない。先ずは自分の使える手札の確認だ。
自分に〈鑑定〉を使い、ステータス並びに保有しているスキルを確認する。
〈鑑定〉!
……ふむ、なるほどなるほど。
…………うん、そうだな、となると……こうか?
………………よし、確証はないが、やってみる価値はあるかもしれないな。
僕の様子を見て察したクルサォスはさっきに増して笑い――僕にはそう見えるけど実際のところは知らん――ながら話しかけてきた。
「……どうやら、終わったようだな」
「……ああ、覚悟は決まった」
「それでは……始めるか!」
……よし、やるぞ。
「おうy」
「死ねぇーー!!」
「サセ、ルカァ!!!」
えっ、え、なっなに⁉︎ なんなの⁉︎
覚悟を決めた僕が剣を抜き、大剣を地面から抜き去ったクルサォスに応じようとしたまさにその瞬間、突然一塊りの集団が僕とクルサォスの間に割り込んできた。
人族の騎兵が数騎。軍装から見て地上に降りて来た南門の防衛部隊だろう。
相対するは数体の亜人。騎馬と並走出来るあたりかなり足は速そうだ。
そいつらが互いに激しく殺し合いながら、この激戦の最中謎の空白地帯となっていた僕らの前に姿を現した。