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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
4 ヒトツキの戦い
84/119

63 盗まれたもの④

 ――都市中から空いている馬車を全てかき集める。そして避難民と避難を望む市民を乗せて巡礼街道を南下させる


 歩きながらルーカスから説明されたのは、聖女様が今朝の件を受けて考えた安全策だった。

 ルーカスが騎士を一人一人指名して個別に任務を与えていく。

 ある者は繁華街から馬車を手配する。

 ある者は空き地に仮住まいしている避難民を『聖軍』の兵士を率いて誘導する。

 そして僕は――

 

「ルカイユは、警邏隊と合流して一刻も早く下手人を捕えよ。孤児は一旦城に引き取る。そのことを孤児院に伝え、警備中の騎士を二人ほど連れて行け」

「了」

「既に『聖軍』より二百の兵を南部に展開している。追加で百投入する予定だ。そのことを先方に伝えておくように」

「了」


 全員に指示を出し終えると、ルーカスは足早に去っていった。そうとう急いでるらしいな。

 まぁいい。僕は僕のやるべきことをやるだけだ。

 他の騎士達も自分に与えられた役目のためにバラバラに走り出した。

 僕も孤児院へ向けて同じ道を戻る。

 それにしても結局、孤児院の警備は一切しないまま終わったな。子供に散々めちゃくちゃにされただけだ。

 本当にかなり情け容赦なくおもちゃにされた。ありゃ軽いトラウマもんだぞ。マジで。

 でも……出来れば、子供達とはこのまま楽しいままで別れたいものだな。

 なんとなく無理だと悟りながらも、そんなことを願った。


「――それじゃあ、ここからは引き上げるんだな?」

「はい、職員と子供たちに荷物をまとめさせて城まで護衛してください。僕は警邏隊と合流します」


 孤児院に急いで戻った僕は警備についていた騎士や職員を全員呼び出して孤児院を引き払うように命令が下ったことを報告した。

 ベーコンや職員には驚いた様子がなかったし、院長は最初から『聖軍』を追い出すのは無理だと分かっていたくさいな。本命は今よりも手厚い保護を受けることだったか。


「分かった」

「カイネとカイゼルは連れて行きます。良いですね?」

「もちろん、構わない。サイロはどうした?」

「院長の護衛で城にとどまっています」


 たぶん。

 少なくともルーカスに従って退室した騎士の中にはいなかった。

 まぁ、何が起こったのか分からないまま城にいるだろ。ほっとこう。


「よし、あとは俺たちに任せろ」

「お願いします。カイネ、カイゼル! 南に向かう、ついて来てくれ!」

「うっうん!」「おうよ!」


 僕は二人を連れて走り出した。

 子供たちがこっちを見ているが、悪いけど今は無視させてもらう。

 ここで話し込めば変な情が湧くかもしれない。そうすれば、文字通り二度と会えなくなるかもしれなくなるからな。心を鬼にしてでもここは一刻も早く立ち去るべきだ。

 城に入ればまぁ大丈夫だろう。()()()()()()()、いざとなればやりようはいくらでもある。

 ……最悪、神獣(『本体』)が残してった〝奴〟がなんとかする。


 走りながら二人に状況を簡単に説明する。

 今朝警邏隊の遺体が見つかったこと、彼らは盗賊のアジトを探していたこと、などを簡単に。


「それじゃあ、その盗賊が襲ったってこと?」

「分からない。でもその可能性は高いだろうね」

「とっとと捕まえちまおうぜ!」

「……とりあえず、捜査にあたっている警邏に合流しよう。なにか進捗があるかも」


 馬は依然として借りられなかったので、僕らは徒歩で移動していた。

 『聖軍』や帝国軍の兵士があちこち走り回って忙しくしている。

 シナラス市庁も聖女様の命令でかなりの兵力を投入したらしい。

 ……まぁ、急がなきゃいけないわな。いつ神獣がラポンを落とすか分からないんだから。


 軍区画から中央部にかけて多数の馬車が行き交っていた。避難民を乗せるためにかき集められた馬車だろう。軍用の馬車を代用に出来るやつと交換するためにここに集めたんだな。かなり渋滞してる。

 その脇の、こちらも混雑している道を抜け、僕らは住宅街へ続く階段を駆け下りる。

 僕としては今朝ぶりだ。あの時は馬で駆け下りたが、今回は徒歩だ。

 あれだけ人も馬車も通るので、開け放たれていた門を潜り抜ける。

 普段ならまず拝めない二個小隊規模の『聖軍』と帝国軍の合同部隊が門を警備していた。

 それをじっくり観察してる暇など当然ない。僕らは走ったまま住宅街に入る。

 そこには――


「おっおい、どうなってんだ⁉︎」

「なんで? なんでこんなに……」

「……とても信じられないが、実際にそうなのだから仕方ない」

「なんでこんなに()()()()()()()()()ぉ⁉︎⁉︎」


 ――ありえない光景が広がっていた。

 警邏が五人殺され、その捜査のために多数の兵士が動員されても、市民は一切気にせず生活していた。いつも通りに。

 それは明らかにおかしな光景だった。

 普段通りの生活を送る市民の中に、兵士が点在している。

 市民達は兵士の存在は認識していても、彼らがここにいる理由に微塵も関心をよせていなかった。

 考えてみれば、聖女様が襲撃された後も誰も気にしていなかった。僕達(修道騎士)すらも、いつの間にかそのことを気に留めなくなっていた。

 ――なにか大いなる力でも働いたかのように。


「……ここで驚いていても仕方がない。警邏の指揮官を探そう。どこか目立つ場所にいるはずだ」

「そっそうだな!」「どこにいるのかな?」


 三人で、指揮所になっていそうな所を探す。先ずは僕らが派遣されて来たことと『聖軍』があとで百名追加投入されることを伝えなくては。

 指揮所はすぐに見つかった。『聖軍』の小隊に守られて集会所のような所に臨時に設置されていた。

 

「第一中隊第四小隊所属、六等騎士ルカイユであります」

「同じく第四小隊、六等騎士カイネです……あります」

「五等騎士カイゼルだ! です!!」

「大隊長のご命令で捜査に合流いたします」

「うむ。第一中隊中隊長、マーク・リディアファンだ」


 そこで指揮をとっていたのは、僕らも所属する第一中隊の中隊長だった。

 ……なんか変な感じだな。全員第一中隊所属なのにこんなお堅く挨拶するの。まぁ軍隊だし仕方ないけど。

 基本自由に生きていた(ぼっちだった)僕は未だに慣れない。


「ふっ、今さら格式ばった挨拶は不要だ」

「「「はっ!」」」

「早速貴様らには一個小隊を指揮してもらう」


 僕らに割り振られたのは『聖軍』の一個小隊を率いての捜査だった。

 騎士団内では下っ端でも僕らは修道()()、『聖軍』の兵士よりも命令体系的には上位に位置する。

 いきなり指揮することになるとはな。

 階級的には五等騎士であるカイゼルが指揮を取るべきなんだろうが、言っちゃ悪いがコイツに出来ると思えない。

 いや、実はめっちゃ出来る可能性もないではないが、考えづらいな。


「よし、では行け」

「中隊長、大隊長より伝言であります。再度『聖軍』を百名投入する、とのことです」

「了解した」

「では、失礼します」「「失礼します」」


 指揮所を出ると、その裏に空き地があるのが分かった。そこに兵士が集まっているっぽいので、行ってみることにする。

 いつの間にか先頭は僕が歩いていた。このまま僕が仕切ることになりそうだ。

 その空き地は外から見るよりもそれなりに大きかった。そこに天幕がいくつも張られている。兵士達はその天幕に出入りしているようだった。

 見ていてもらちがあかないので近くにいた一人に声をかける。


「マーク中隊長より一個小隊の指揮を預かったのだが、どの小隊を指揮すれば良い?」

「あ? 忙しいんだよ、見りゃ分かんだろ」

「おお、そうか。すまん」


 忙しいと邪険に扱われてしまった。

 他の兵士にも声をかけたが、皆忙しそうでろくな返答は返ってこなかった。


「困ったな。このまま三人で外に出るか? ここにはいないのかもしれない」

「てかよぉ、そのテントはなんなんだ?」

「ちょっ、ちょっとカイゼル、ダメだよそんな勝手に」


 カイネの制止を無視してカイゼルが手近な天幕の入り口を開いて中に入った。

 僕らも顔を見合わせて一瞬ためらったが、中に入る。

 中では、数人の兵士が寝ていた。

 僕らの侵入に気付かないくらいぐっすり寝ている。

 なんでここで寝てるのか、とは思うが、まぁ仮眠室みたいな感じに使われてるんだろう。


「ほら、カイゼル。出るぞ」「起こしたら悪いよ」

「……いや、ちがう。コイツら寝てるわけじゃねぇ。怪我人だ」

「怪我人?」


 兵士達をよく見てみると、確かにカイゼルの言う通り全員怪我人だった。

 カイゼルの観察眼はバカに出来ないものなんだな。僕は気付かなかった。


「それにしても……何故ここに?」

「わからねぇ。でも、ヒデェことになってる。ヤったヤツが殺したヤツと同じなら、許すわけにはいかねぇ」

「……そうだな」


 カイゼルは入り口付近に立っていた僕を押し退けるように天幕を出ると、そのまま通りまで大股にいってしまった。

 僕とカイネはその跡を必死に追う。

 

「ヒマな兵士はついてこい! ぜってぇに捕まえるぞ!!」

「おっおお!」「やるぞ!」「俺もだ!」


 そこで兵士を大声で呼び集めた。

 流石にそれじゃ無理だろう、と思っていた僕を嘲笑うように、あっという間に三十人ばかりが集まった。

 彼らとともに僕に背を向けたカイゼルは、呟くように小声で僕に語りかけてきた。


「一つだけ言っとくぞ、ルカイユ。うだうだ考えててもなにも始まらねぇ。怒られたらその時あやまりゃいいんだ。だってオレたちはなんも知らなかったんだからな。怒られんの怖がってたらなんもできねぇよ。知らなかったやつにキレんのはアホだけだ。気にしなくていい」

「…………」

「お前は頭いいのかもしれねぇけどよ、考えすぎだ。時間ねぇんだぞ? 考えてるヒマがあったらやろうぜ。死んじまったらおせぇんだぞ? どんだけいいこと考えててもよ、まにあわなきゃイミねぇからな」

「…………ああ、そうだね」 

「わかりゃいいんだ。……行くぞ! ヤロウども!! ぶっ殺せ!!」

「「「「「「「おおーーー!!!」」」」」」」


 僕へそんな言葉を投げかけると、兵士達には簡潔にそれだけ言うと、先頭に立って大通りへ走り出した。兵士達はそれに士気も上々についていく。

 それを僕は呆然と眺めていた。

 まさか、カイゼルがそんなこと思ってたなんて。僕が段取りを考えて動いているうちにアイツはいくつも行動に移せるんだろうな。

 正直、完全に舐めてた。


「ルカイユ?」

「……ああ、僕らも行こう。あの勢いのままなら誤認逮捕でもしたら大変だ」


 ……こんな憎まれ口を叩くくらい、僕は強い衝撃を受けていた。

 ――少なくともこの場においてはアイツの方がリーダーにふさわしい。それだけは間違いない。


◇◇◇


「――兵士を分けんのか?」

「そうだ、とりあえず現れた盗賊を一人捕らえて尋問する。そのために兵士を三班に分ける」


 カイゼルに追い付いた僕は、即興でたてた作戦を話して彼らを止めた。

 さっきの憎まれ口じゃないが、このままじゃ怪しい奴を片っ端から殴りまくりかねない。そんなことしてる場合じゃない。

 なんとかやめさせなきゃならない。

 どこかで読んだり見たりした作戦を組み合わせて、ほとんどアドリブでまくしたてる。


「お前が一番多い人数を率いる。なるたけデカい奴を集めて、目立つように大通りを警備しろ。盗賊が出たら、足を止めさせろ。殺す気でいってもいい。ただし、絶対に人違いだけはさけろ。間違った人に攻撃したら終わりだ」

「おうよ」

「カイネは私服の兵士と、市民からも協力者を募って囮になれ。なにかしら盗みやすいものを盗みやすく持っておいてくれれば良い。盗まれる時に出来るなら攻撃して足を鈍らせてほしい。もちろん、私服だから大きな武器は持てないので、無理はしないでくれ」

「うん」

「お前はどうすんだよ」

「僕は……」


 ここからがある意味勝負だ。ほぼでまかせだからね。カイゼルに何かしら勘付かれたら終わりだ。

 さっきの観察眼を発揮されたらだいぶマズイかもしれない。

 ……恐れていても仕方がない。いくぞ。バレたらその時はその時だ。

 ――ここまでしてやる義理はアイツらにはないが、なんか目覚めが悪いし、あの子たちは、出来れば安全に避難させてやりたい。


「……僕は、カイゼルが捕り逃した盗賊を追ってアジトを突き止める。カイゼルが捕らえれれば、そいつに聞けばいいが、アジトを直接突き止めた方が確実だ。嘘をつかれる恐れもあるからな」

「……」

「…………」


 ……この沈黙は非常に怖い。

 腹の底まで見通されてる気分になる。受けたことはもちろんないが、取り調べを受けている容疑者もこんな気分なんだろうか。

 どっちかって言うと弁護士に無罪だって言い張ってる犯人かな。

 まぁどっちでもいい。とりあえず気が気じゃない。

 心臓が止まりそうだ。元より動いてないけど。

 カイゼルにはさっきあんなこと言われたばっかりだし、なおさらこの沈黙はこたえる。

 そんな永遠とも思える時が過ぎて――こんなとこでこのセリフを言うことになるとは――、ついにカイゼルが口を開いた。


「……そうか。分かった。お前の言う通りにする」

「ありがとう。では、人員を割り振ろう」


 兵士達とも相談した上で、それぞれの班に人員を振っていった。

 カイゼルに十五人、カイネに十人、僕が七人を率いる。僕が率いる七人は身軽で足の速い小柄な兵士を選抜した。

 本音を言えば一人の方がやりやすいが、盗賊を一刻も早く捕えるという任務のためにはこちらのが良いだろう。出来る限り早く「組合」を見つけてみせる。


「それじゃあ、打ち合わせ通りに」

「おうよ」「うん。二人とも気をつけてね」


 それぞれが持ち場につく。

 僕はいつでも走り出せるように路地の一つに潜む。

 しばらくは何も起きなかった。住宅街に出ている商店街は喧嘩の一つも起こらず、平和なものだった。

 暇だと思ったのか、連れてきて一緒に潜んでいた兵士の一人が話しかけてきた。


「騎士様は、足速いんですか?」

「ええ、それなりに速い方だと思いますよ」

「俺もそこそこ速いつもりなんですがねぇ」

「そうですか」


 なんかすごい足の速さに自信を持ってるみたいだな、この人。

 いや、別にいいんだけどね。でも若干……ウザいな。

 いきなり話しかけてきたかと思ったら、足速い自慢か……うっ、トラウマがっ、うずく。


「――盗人(ぬすっと)だぁー!」


 大通りで男が叫んだ。

 周囲にいた全員の視線が声の主に集まり、その後彼の指差す先を走る小さな人影に向く。

 そんな中、その人影をいち早く追いかける者がいた。誰あろう、(ルカイユ)だ。


「行くぞ」


 マジでナイスタイミング。渡りに船だ。そろそろこの空気に耐えられなくなるとこだったんだ。

 足速自慢男と僕以外は全員黙りこんでるし、周囲に一切気を使おうともせずコイツ(足速自慢男)は自慢続けようとしてるし。

 見れば盗賊は二人出たらしい。もう片方はカイゼル達が取り押さえにかかっているが、かなり苦戦していそうだ。


「三人だけついてこい。残りはカイゼルが取り逃がしたら回り込んで挟み撃ちにしろ。指揮はお前がとれ」


 足速自慢男に後のことは全て押し付けて、僕はこの場で出せるだけの速度で盗賊を追う。

 群衆の間をすり抜けて人影は逃げていく。僕も野次馬をかき分けその跡を追うが、なにぶんこっちは修道騎士の制服姿だ。

 鎧こそ着てないが、マントを羽織り腰には剣を帯びている。身軽な盗賊に比べれば人混みを走り抜けるのは難しい。昨日も怒られたし、大々的な捕り物をしてる以上、もう脱ぐわけにはいかない。この格好で追うしかない。

 後ろからついてくる兵士たちの方が格好的には走りやすそうではあるが、それでも人ごみを武装したまま走るのは難しい。


「道を開けてくれ、奴の跡を追ってるんだ」

「おお、頑張れよあんちゃん!」「そっち行ったぞ」「応援してるぜ」

「ありがとう。あっ」


 相変わらずこんな状況だってのに市民は不自然なほど気にしていない。盗賊が出たと言われれば視線こそ向けるが、それだけだ。

 個人的にめっちゃ気になるが、そんなこと言ってる場合じゃないな。

 その間にも人影は大通り沿いの建物の屋根にヒラリと上がると、そこをつたって逃走を続ける。

 僕も〈衝撃付与〉と〈浮遊〉を使って屋根に登りその跡を追うが、軍靴では屋根を走りづらい。ドンドン引き離されていく。

 このままじゃダメだな。なにか手を打たないと()()撒かれてしまう。

 兵士達は完全に引き離されている。もう誰も僕について来ていなかった。

 まぁ、いい。こうなればそっちのが都合がいい。


 何故僕が盗賊の追跡をしているのか。

 もちろん民が困っているから、修道騎士として当然……ってのもあるんだけど、それだけじゃない。

 その最大の理由は、昨日命じられたある任務だ。


 つまり、「盗まれたナニカを奪い返す」とかいうこのクソアバウトな命令。

 正直こんなんで見つかるわけねぇだろ、って思ったし、思ってるけど、なんとなく分かってきた。今まで各所で見聞きした内容を繋ぎ合わせれば、ね。

 正直こんなクソヤバな状況で、なんであのテロ組織(『十六階』)は呑気に『入団試験』とか言ってられるのか理解に苦しむが、まぁそんくらい狂ってないと『神能教』に楯突こう、なんて大それたこと考えたりしないか。

 兎にも角にも、その犯人が今追ってる盗賊と同一人物である可能性は極めて低いが、確実に犯人へと至る助けにはなる。盗まれたモノの性質的に誰かの指示で盗み出されたのだろう。確実に「組合」が一枚噛んでる。

 しかも、「組合」を発見することは、今与えられている警邏隊殺害の犯人の逮捕へと繋がる手がかりにもなる……かもしれない。

 僕の読みが正しければ、警邏隊が殺害されたのは、その盗まれたナニカと無関係ではない。


 盗賊は屋根から飛び降りて路地に入った。

 ここまでは()()()()()

 前の盗賊――ストにぃとは別人だから、僕があの集落を知ってることをコイツは知らないはずだ。

 奴があの集落に逃げ込むかは分からないが、どっちにしても地図と逃走ルートを照らし合わせれば、かなり絞れるはずだ。

 ここまで来たぞ。周囲の目を気にしていた前回は失敗したが、今回はその(てつ)は踏まない。

 こういうのは案外、堂々としてる方がいいんだ。僕は知っている。

 

 僕も屋根から飛び降り、盗賊に続いて路地に入った。

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