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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
2 外へ
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22 キャンプはタノシイナ③

 結論から言うと、その後は――


[今日から毎日、この世界の言葉を少しずつ教えていくよ。覚悟してね]


 ――地獄だった。

 勇者の不穏な発言と共に始まった異世界語講座は、思っていたよりも簡単だった

 ……ら良かったんだけど……


 ぶっちゃけ英語で10段階中3以上とった事ない人(今はスライムだけど)に他の言語を一から習得しろとかどこの鬼畜だよ、って感じ。

 僕の感覚からすればどの言葉も「※※※」や「※※※」に聞こえるよ。

 つまりどれも一緒に聞こえるの。

 因みにさっきのは勇者曰く、一つ目が「ご飯」で二つ目が「焚き火」らしい。分かる訳が無い。


[流石にいきなりは難しかったかな? じゃあ次は分かり易くいくね]


 え? 何? 分かり易い方があったの? それを先に言ってよぉ〜。

 五歳児向けぐらいの絵本みたいなやつで勉強するの下らないプライドが邪魔してなんか嫌だし、第一、発音を書いてある絵本中の絵の大半の実物を見た事ないから正直意味分かんなかったし。

 「鍬」っぽい見た目の物の名称が「鋤」とか聞いてないよぉ〜。「鍬」と「鋤」の違いとか農家の人には本当に申し訳ないけど分かんないし。

 てか何でそんなもんが絵本の最初の方に描いてあったんだ? これ貴族向けだよね? 

 中世の識字率ってだいぶ低いだろうし、本ってかなり高価だから普通は余裕のある家庭向けに書かれる物なんじゃ……

 まぁこれは偏見か。この世界が僕の知ってる中世ヨーロッパっぽくても、必ずしも同じとは限らないもんな。


[分かり易くって、具体的にどうするんだ?]

[それはね――]


 勇者の言う事には「生命がかかっていれば頑張るでしょ」と、単語を間違えたら勇者のフルパワーの剣が僕を貫くというスパルタをやるらしい。


[それじゃあ始めるよ♪]


 勇者はさっきの絵本をしまって辞書らしき分厚い本を取り出すと、音読しだした。

 で、その後は単語の意味を日本語で答える。その逆もまた然り。みたいな感じで続いていく。

 無論何度も間違えるが、容赦無く勇者の剣は僕を貫いた。

 どれくらいってLV1だった〈刺突耐性〉がLV5になるくらいさ。

 結構容赦無いなこいつ。勇者よりも鬼教官の方が向いてそう。

 

◇◇◇


「※※※※※※※※♪」

[じゃあ頑張ってね♪]


 そう言って勇者は“一人”で歩いて行く。

 後に残されたのは、僕とブイの二人――一人と一スライム(スライムってなんて数えれば良いんだ?)だけ。


「※※※※※※※※!!!!!!」


 相変わらず何言ってんのか微塵も分からん。あと声がでかい。

 勇者曰く、「生命の掛かった戦闘中なら連携する為に相手の言葉を分かろうと、文字通り“必死に”頑張るでしょ?」との事。

 ざけんじゃねぇテメェ! 何吐かしとんじゃボケが! 出来る訳ねぇだろうが!

 今も全く分かんなかったよ!

 昨日の今日で言語を習得出来るなら誰も苦労しないし、僕は英語で3を連発したりしない。


「※※※※※!!!!!!」


 そしてそんな僕はお構い無しにブイはズンズン森へ分け入っていく。

 おい! テメェ! テメェはテメェで少しは連携しようとしろやボケ!

 ……まぁ速度5000超えの僕に掛かればあの程度の速度に追い付くのは楽勝なんですけどね


◇◇◇


「※※※!!!!!! 〈※※※※〉!!!!!!」


 あ? なんだって? ちゃんと分かる様に日本語で言って。

 斧を持って走り出したブイを気持ち斜め後ろから追いながら、こちらもスキルの準備をする。

 今回は〈刺突付与〉と〈刺突強化〉のみを発動する。

 ブイが斧での斬撃を行うのなら、こちらも斬撃で参加するよりは、刺突を使って二つの攻撃方を使った方がいいと思ったからだ。

 昨日のスキル多重使用である程度はコツを掴んだし、今日は勇者に指示されてないから自分で考えてやってもいい筈だ。だから好きな様にやらせてもらう。

 敵は昨日と同じ小鬼達。

 昨日の夜に鑑定した結果はやっぱり「ゴブリン」だった。

 まぁ緑色の小鬼なんて大体はゴブリンだろうね。


「※※※※!!!!!! ※※!!!!!!」


 ブイが斧を振り回して次々に敵を薙ぎ払っていく。

 ――ただし、仕留め切れていない。

 何故かと言うと、ブイが振る力が強いのと、敵が軽すぎるのとで、完全に息の根を止められていないのだ。

 だが、一番の問題は敵が“わざと”飛ばされてるふしがある事だ。

 こいつら見た目は馬鹿そうだし、無鉄砲に飛び込んでくるし、戦略も戦術も欠片程も理解出来て無さそうだけど、本能でその程度の事を悟る事は出来るらしい。

 ブイが斧を振った、その瞬間に合わせて自分で先に飛んで傷を浅くしにいってる。

 ――そしてそれにブイは1ミリも気付いていない。

 だからさっきからブイは全く敵を倒せていない。

 ……まぁそこは僕が片付ければ良いんだけど

 勇者の言っていた「連携」がこれだとは思えないけど、僕なりにブイに協力しようとはしているのだ。

 ……問題はブイに協力する気が微塵も無い様に見受けられる点だけど……


[チョット! 止マレ!]


 昨日叩き込まれた基本単語を二つ並べて念話でブイに呼びかける。

 この単語で伝わってるかは別として、聞こえてはいる筈だ。

 止まんないけど。

 これは伝わってないんだな。うん。

 これで伝わってるけど無視してるって事なら、ゴブリンの前にこいつを血祭りに上げなくてはならない。

 「舐めてんのかコラ⁉︎」って言いたくなるね、そんな事されたら。

 多分、背後から心臓を神速の一突きでぶっ刺すだろうね僕は。

 ……まぁ真偽を確かめる術は僕には無いけど。

 取り敢えずはこいつに合わせて戦おう。

 粘手を振りまくって、〈斬撃付与〉〈刺突付与〉〈打撃付与〉〈衝撃付与〉を使いまくる。

 何か一つに絞るより、全部使った方が乱戦では逆にコスパがいい。


 ブイが飛ばした敵を僕が仕留めていく。

 それを暫く続けていると、敵が全滅したらしく僕ら二人だけになった。


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈粘手〉LV9→LV10にレベルアップしました』

『スキル〈粘手LV10〉がスキル〈粘体LV1〉に進化しました』


 そのタイミングで〈粘手〉がレベルアップ。

 どうやらスキルはLV10でカンストらしい。次の〈粘体〉とやらに進化した。

 まぁ名前的に〈粘手〉の上位互換っぽいな。

 試すのは後にしよう。

 今はそんな事より重要な事がある。

 戦闘中から薄らと気付いてたんだけど……


[オイ! 聞コエテルカ?]

「聞※※てる※!!!!!! 何※※※⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


 ちょっとだけなら何言ってるか分かってきたぞ!

 これは大きな進歩じゃ無いか⁉︎ 進歩だよな⁉︎

 やはり僕も少しずつ成長してるんだなぁ。


「もう※※※行く※!!!!!!」


 まだ少ししか分かんないけど、単語が断片的に分かっただけでも大きな進歩だ。

 大まかに何を伝えようとしてるのか分かる。

 ……意味が分かるからと言って納得出来るとは限らないけど

 何でもう行くんだよ⁉︎ もうちょっと休もうぜぇ〜

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