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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
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21 キャンプはタノシイナ②

「ウシャアー!」


 クソが! 死ね!!


「シャシャー!」


 ウザい! 消え失せろ!!


「シャガ!シャガー!」


 死ね死ね死ねぇー!!!


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈斬撃付与〉LV4→LV5にレベルアップしました』


 僕が斬り裂いて飛び散った肉片を即座に血ごと〈吸収〉で吸い込む。

 息をつく暇も無く、次の敵が襲ってくる。


「ウシャー! ウシy……」


 胸を一突きでまた一体仕留め、そのまま他の敵も薙ぎ払い、突き刺してどんどん殺していく。

 何も考えずにただ粘手を振り回す。

 倒れた敵は全て吸収して、死体の山を出さない様にして戦う。


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈刺突強化〉LV2→LV3にレベルアップしました』


 もう第何波かも分かんなくなるくらいの夥しい数の敵を倒した。

 殴られては倒し、倒してはまた殴られる。その繰り返し。

 もはや目の前の敵を倒す事なんて頭に無くなっていた。

 あるのは、ただ「生きたい」という思いだけ。

 目の前の奴を殺らなくては自分が殺られる。ただそれだけ。


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈粘手〉LV8→LV9にレベルアップしました』


見ると、周りにはもう敵が一人もいなくなっていた。

 どうやらこの波は倒しきったらしい。

 次の波が来る前に、地面に落ちていた肉片を吸い込み、HP、MPを回復させる。


 「〈鑑定〉は使わずに、誰が来ようが〈粘手〉〈吸収〉〈自己再生〉〈硬化〉〈投擲〉〈酸〉〈麻痺毒〉〈斬撃付与〉〈刺突付与〉〈斬撃強化〉〈刺突強化〉〈疾風〉を全部同時に使って戦うこと。相手に合わせて戦法を変えるのも勿論当然だけど、今回はどんな敵も自分の戦い方でゴリ押しで倒す事を極めよう」という勇者のありがた〜いお言葉を受け、言いつけ通りに奮戦したわけなんだけど……


 ぶっちゃけクソキツい。

 スキルを全部維持するのに意識を持ってかれると全身ボコボコにされる。

 敵の主な攻撃方法は棍棒による殴打。

 たかが棍棒と侮ったら即死亡だねこれは。

 間断無く、棍棒が上から横から襲ってくる。

 一瞬でも気を抜いたら死ぬ事が、直感で分かった。

 一度攻撃を受ければ、それがほんの少しのダメージだったとしてもそのほんの少しのダメージ分動きが鈍る。そしてその鈍った分、またダメージをほんの少し受ける。

 それが何度も何度も重なれば、もう動けなくなる。そしたらもう終わりだ。

 一方的に殴られて死ぬ。

 喰らったら一撃死亡じゃ無い分余計タチが悪い。

 痛いし、一撃一撃のダメージは大した事ないから、自分が負けたんだって、死ぬんだって実感する時間が十二分にある。

 何故僕がそんな事分かるのかって言うと、一度こうなったからさ。

 その時はMPの残量気にせずに酸をありったけぶちまけて周りにいた奴ら全員流して逃げ出したけど。

 今なら何故〈鑑定〉を使っちゃいけないのかよく分かる。

 一々〈鑑定〉なんかしてたら死ぬからだ。

 相手はこっちが〈鑑定〉してる間も待ってはくれない。待ってくれるのはお話の中だけ。

 だから「ゴリ押しで倒す」んだ。どんな敵でも、ステータスが分からなくてもゴリ押せば勝てるから。

 あの勇者はかなり危険な橋を渡ってここまで来たらしい。

 普通の人はそんな事に気付かないだろう。

 ……そんな状況に置かれない限りは


「シャアー!シャシャー!」


 次の波が来た。

 僕は即座に先頭の喉を突き刺す。

 一人が投げた棍棒が直撃するが、無視して進む。

 そんな事に構ってる余裕は無い。こちらも酸を投げつつ、先頭から順に首を斬り飛ばしていく。

 躊躇は邪魔だ。そして無駄だ。

 どうせ敵にこちらを倒す事に躊躇する気など微塵も無いのだから、こちらが気にする事は無い。

 「自分がされて嫌な事は他人にしない」

 ゴールデンルールだ。これに従えば、僕を殺す気がある以上、奴らは僕に殺されても文句を言えない訳だ。僕も言えなくなるが、お互い様だろう。

 敵は1m程の小柄な身体で、恐ろしい程の速さで突っ込んでくる。

 タックル自体にさしたる威力は無いが、これで足止めされると、他の敵に殴られてしまう。

 突っ込んできた敵の額を二人立て続けに貫く。

 緑の敵集団に怯えの色は無い。

 本当に恐ろしい敵だ。見せしめの意味も込めてわざとこういう殺し方をしてるのに、微塵も揺るがない。


「シャー!」


 また一匹、棍棒を振り上げて走ってきた。

 そいつは次の瞬間、二つに分かれたけど、その隙にもう一体の棍棒が僕を強打する。

 奴らの棍棒には毒があるらしい。時折、毒が効く感じがする。

 故意に塗られたものなのか、はたまたこびり付いた殴り殺した相手の残骸が腐った天然物かは分からないけどかなりの猛毒だ。

 だがそれがどうした。毒で削られたらその分だけ吸収してしまえば良い。HPが削り切られる前に敵を全員倒すだけだ。


「ウシャー!」


 もう一体が横合いから殴りかかってきた。

 腕を斬り飛ばし、胸をそのまま突く。

 スキルの多重使用にもだいぶ慣れてきた。

 まだいける。まだ戦える。まだ期待に沿える。まだ殺れる。まだ動ける。

 ――まだ捨てられずに済む


『経験値が一定に達しました。個体ゾンビソルジャー(スライム)LV5→LV6にレベルアップしました』

『各種基礎能力値が上昇しました』

『スキルレベルアップボーナスを獲得しました。スキル〈衝撃付与LV1〉を獲得しました』


 レベルアップした事によって更に素早く動ける様になり、その分敵はちょっと当てただけで死ぬ様になった。

 それでも敵は止まらない。死んでも死んでもどんどん出てくる。

 粘手を振り続け、敵を斬り刻み続ける。

 段々分かってきた。どうすれば効率良く戦えるかが。

 粘手を長めに出して振るよりも、短めにして近くに来たところを斬って、突いて、殴って、飛ばした方がやり易い。

 喧嘩慣れしてたら勝手に分かることかもしれないけど、何分僕は喧嘩とか――あの塵糞粕共には一方的にボコられただけだった――した事無かったからね。やっぱり実戦で身に付けるのが一番早いんだね。


[いやー、凄いねぇ。かなりの数倒したんじゃない? お疲れ様ー]


 見ると勇者がブイを伴ってこちらへ歩いて来ている。


「※※※※※※※※!!!!!! ※※※※※※※※※※※※※※※※!!!!!!」

[「凄いでは無いか。貴様やはり素質がある様だな」]


 はは、褒められると嬉しいもんなんだな。

 褒められた記憶が薄いから余計嬉しいわ。


[取り敢えずキャンプ張ったから、今日はここまでにしよう]


 森の中で分かり辛いが、確かに日が暮れている。来た時よりもかなり暗かった。


[じゃあついてきて]

[ん]


 長かった一日が漸く終わる。

 スキルレベルもかなり上がったし、この世界に来て一番収穫が多い気がする。

 ――これで終わればの話だけど

 その点、この世界全く信頼無いからなぁー

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