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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
2 外へ
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18 囚われのスライム①

[ねぇ、聞こえてる? 僕の言葉が分かるかな?]


 僕は今捕らえられている。


 謎の鎖に縛られた僕の前には一人の男が。


[聞こえてるなら返事してほしいな]


 何故僕がこうなっているかと言うと、話は少し遡る――


◇◇◇


 おじさんが帰ってきた一団と合流して数日が経過した。

 おじさんが持っていた物資を使いつつ、合流した一団は何処かへどんどん進んで行く。

 勿論僕も後について行く。

 この間も続けたスキルのレベル上げの成果はご覧の通り

 〈粘手〉LV5→LV6〈自己再生〉LV5→LV6〈酸〉LV5→LV6〈麻痺毒〉LV4→LV5〈硬化〉LV2→LV3〈斬撃付与〉LV2→LV3〈刺突付与〉LV2→LV3〈斬撃強化〉LV1→LV2〈刺突強化〉LV1new〈斬撃耐性〉LV1new〈刺突耐性〉LV1new〈酸耐性〉LV2→LV3〈麻痺耐性〉LV1→LV2

 結構上がった。

 と言うか〈斬撃強化〉と〈刺突強化〉は手に入ったのに〈酸強化〉と〈麻痺強化〉は手に入んないんだな。

 何か理由があんのかね?

 まぁ考えても仕方ないけど。


◇◇◇


「※※※※!」


 先頭にいた若い男が一団を止めた。

 一人だけ着てる鎧も服も違ってるし、おじさんの更に上の人かな?

 それはいいとして、何故止まったのか気になったので目を向けると、天井に巨大な穴が空いていた。

 直径は20mくらいかな。高さは分からないくらい高い。

 その真下に兵士達が素早くテントを張っていく。

 へ? 何でテント?

 そして何故か荷物を載せていた馬車らしき乗り物を解体し始める。

 ん? 何してんの?

 そしていつの間にか元馬車だった物は箱みたいな物へと変わっていた。

 あれどうやって使うんだ?

 いくつも用意された箱にロープが取り付けられていく。


「※※!」


 いきなり一番偉そうな若者が跳び上がった。

 凄い跳躍力だな。何かのスキルか?

 それに続く様に騎士達が続々と跳んで行く。

 凄いなあいつら。

 高く跳べるのも凄いが、あの鎧を着たまま跳び上がれるのは本当に凄い。

 すると残っていた歩兵達が謎の箱に馬やら荷物やらを載せ始めた。

 そのままロープで上へ吊り上げられていく。

 ああ、簡易エレベーターだったのね。

 あれ追えるかな?

 あの穴を登れるかはちょっと微妙かな。

 どうしよっかなー。

 ん? あの騎士達何で槍なんか取り出したんだ?

 ふぎゃ!

 痛えー!

 騎士達が放った槍が僕を貫いた。

 酷いなぁ!いきなり撃つなんt

 うげぇ!

 二発目を間髪入れず撃ちやがった。

 ざけんじゃn

 うごっ!ぶふっ!

 今度は二発同時。

 流石に天井に貼り付いて居られず、僕は地に落ちてしまった。

 即座にさっきの騎士達が僕を掴み上げる。

 なっ何する気だ⁉︎

 そのまま僕は乱暴に箱に投げ捨てられると、歩兵が何やらゴツい金属の輪っかを持ってきた。

 おい! それで僕をどうする気だ⁉︎

 僕のお腹っぽいところをその輪っかで留めると、騎士達は僕を袋に入れて口を縛った。

 おい! 待て! 本当に僕をどうする気だ⁉︎


 どうやら睡眠効果の様なものがあったらしい。

 この世界に来て一度も寝た事が無かったのにいつの間にか寝ていた。

 えっ? アンデットって睡眠必要無いんじゃなかったっけ?

 外で何か音がするが、何も分からない。

 取り敢えずここから脱出しよう。

 酸でこの輪を溶かして……

 んっ? 何故出てこない?

 酸! 酸! 酸! 酸! 酸! 酸酸酸酸酸!!!!!!

 ……駄目だ。何度やっても発動しない。

さてはこの輪、スキルを使えなくする効果もあるな。

 何だこの状況。

 眠らされて、気付いたら力が使えなくなってる。

 ……テンプレじゃねぇか!

 いや何このテンプレ。何回も見たよこの状況。

 問題はたかがゾンビ一匹にこの仕打ちは、ちょっと過剰じゃ無いかなぁ? って事だけ。

 いや別に僕、あの軍を襲う気とか無かったし。

 勝てるとか微塵も思って無かったし。

 だからさぁ、解放してくんない?くんないか。

 解放してよーーーーーーーーーー!!!!!!!!!


◇◇◇


 その後、色々試行錯誤したけど脱出は出来なかった。

 時折襲ってくる眠気に連戦連敗しつつ、待つ事数週間(体感)、遂に解放された。

 明るい。

 ただただ明るい。

 世界はこんなに明るかったのか!

 考えてみればこの世界に来てからはずっと迷宮の中に居たし、前の世界でもお家大好き少年だったから日の光を浴びたのはかなり久しぶりかもしれない。

 下手すれば、日の光をこんなに嬉しく思ったのは初めてかもしれない。

 それくらい太陽の光は美しく感じた。

 ……まぁ何か青い気がするんだけどね。

 あと、記憶に比べると地球の太陽より光が弱い気が。

 まぁどうでもいっか。


「※※※※※!」


 誰かがやって来た。

 頭に何か冠っぽいもん載っけて、かなりダブッとした服着た結構なお爺ちゃん。

 背後には同じ様な格好のもう少し若い人達を従えてる。

 めっちゃ優しそうで、強さのカケラも見えない。

 でも弱々しさは無い。

 矛盾してるかもだけど、あの爺さん、強くは無いけど弱く無い。弱い筈が無い。


「※※※※※※※※」


 声もなんか優しそう。

 相変わらず何言ってんのか分かんないけど、僕について話してるみたい。

 時折騎士達が僕の方を指さしてる。

 十分くらい話した後、爺さんはお付きの人達と帰って行った。

 それと同時に僕も騎士の一人に抱き上げられる。

 未だ輪が着いたままなので、スキルが何一つ使えない。

 よって何も抵抗出来ず、抱き上げられたまま僕は騎士に運ばれていった。



 着いた先は一つの部屋。

 扉は結構立派で、両側には僕を抱き上げた騎士とは違う制服の兵士が二人立っていた。

 この部屋の主人は相当なお偉いさんらしい。


「※※※※※※※」

「※※※」


 ノックをした後、返事を待って騎士が入室した。

 中は物こそ少ないが、綺麗に整頓されていてかなり良い部屋の様に見えた。

 そして中央の椅子に一人の男が座っていた。

 金色の髪に碧い眼のかなりの美青年。

 歳は二十くらいかな?

 薄い水色のシャツ、白いズボンに赤いマントを羽織っていて、側のテーブルの上には短剣が置いてある。

 そしてそのテーブルに一本の長剣が立て掛けられていた。

 竜をあしらった鞘の意匠は全く美術品に詳しく無い僕の目から見ても一級品だと分かる程に美しい。


「※※※※※※※※※※※※※※※※」

「※※※※※※※※※」


 一礼して騎士は部屋から出て行った。

 部屋には僕と、その金髪碧眼の美青年だけが残された。


「……※※※※?」


 美青年が困った様に微笑むと、何か言った。

 残念な事に何言ってるのか全く分からなかったけど、何か質問したらしい。


「※※※※……こっちなら分かるかな?」


 なっ⁉︎

 今こいつ日本語で「こっちなら分かるかな?」って言わなかったか⁉︎

 その瞬間、


「『※※※※※※※』」


 美青年の詠唱と共に僕の身体を、宙から現れた鎖がグルグル巻きにした。


[ねぇ、聞いてる?]


 いきなり、僕の頭の中に声が聞こえた。

 馬鹿な⁉︎ こいつ今口を開いていなかった筈⁉︎


[ねぇ聞こえてる? 僕の言葉が分かるかな?]


 美青年はテーブルに立て掛けられていた長剣を手に取るとこちらへ歩き出した。


[聞こえてるなら返事してほしいな]


 剣を鞘から引き抜く美青年。

 それで僕をどうする気だ⁉︎

[僕の名前はユリシーズ・ランペルス。君には井口源志郎と名乗った方が良いかな?]


 美青年――ユリシーズ・ランペルス、井口源志郎と名乗ったその男はそのまま続ける。


[この世界で――]


 そこで一度言葉を切ったユリシーズ――源志郎は一度目を閉じると僕に向けて微笑んだ。


[――勇者をしている]





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