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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
2 外へ
24/118

17 初めての〇〇②

 何かの動物の骨らしい。

 よく見ると近くには何かを燃やした残骸が。

 まさか人間が近くに居る、もしくは居たのか?

 でも洞窟の中で火なんか起こすのかな?

 そういうのには全く詳しく無いから分からん。

 取り敢えず何の骨か鑑定してみるか。


【オーバッグ 骨】


 オーバッグって何だ?

 カバン……な訳無いよな。カバンに骨なんて無いし。

 またこの世界特有のモンスターか何かの名前かな。


「――」「――」


 はっ誰か来る。

 それも少なくとも二人。

 即座に天井に貼り付く。

 現れたのは鎧を着た二人組。

 身長は二人共180cmくらいかな。

 一人が松明を持っている。


「※※※※※※※※※※」

「※※※※※※」


 何て言ってるんだ? マッタク分からん。

 取り敢えず、この世界に言語らしきものがあって、鎧や松明、言語を操れるだけの知能を持った何者かがいるって事は分かった。


「※※※※※※※※※※※」

「※※※※※※」


 二人はそのまま来た道を引き返そうとする。

 どうする?

 追うなら、今を置いて他に無い。

 取り敢えず鑑定してみるか。


【人 LV19

ステータスの鑑定に失敗しました】

【人 LV18

ステータスの鑑定に失敗しました】


 二人共「人」みたいだな。

 レベルは20弱。

 ステータスは分からないけど、今までの奴らに比べるとレベルは高い方かな。

 いやでも僕の通算レベルは同じくらいか。

 クソッ、ステータスが見えないから強いか弱いか断言出来ない。

 ええい、迷ったら即実行!

 取り敢えず追う!


 二人はそのまま奥へと歩き続ける。

 僕もその後を追いながら、暇なのでスキルのレベル上げを並行して行う。

 〈斬撃付与〉と〈刺突付与〉と〈自己再生〉を上げる。

 自分の身体を切り刻んで突き刺して、再生する。


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈刺突付与〉LV1→LV2にレベルアップしました』


 作業と化せばさして問題は無い。

 ちょっと痛いけど。


『スキルレベルアップ条件を達成しました。スキル〈痛覚耐性〉LV1→LV2にレベルアップしました』


 と思ってたら〈痛覚耐性〉のレベルが上がった。

 やっぱりこの世界はゲームみたいだな。

 自分の事なのに、実感が湧かない。


「※※※※※!」


 急に大声が聞こえた。

 見ると、二人の前に槍を持った複数の人影が。

 敵か?

 僕は再生を早めて傷を塞ぎ切ると、体内に隠し持っていた礫の準備をする。

 気配に気付けなかった。

 もし敵なら、モンスター討伐の名目で僕も消されるかも。


「※※※※※※※※※※※」

「※※※※※※※」


 如何やら敵ではなかったらしい、槍は引っ込められ二人は先へと進む。

 僕もなるべく静かに続く。

 その先は今までの暗い洞窟じゃ無かった。

 テントがいくつか建てられていて、中央には大きな焚き火が。

 奥には馬まで繋がれている。

 何故洞窟の中に馬が居るんだ?

 そしてかなりの人数がその広場らしき開けた場所に集まっていた。

 さっきの二人よりも良さそうな鎧を着た人もちらほら居る。

 如何やらさっきの二人は偵察みたいな事をしていたらしい。中央にいた一番偉そうなおじさんに報告してる。

 どこかの軍かな?

 やっぱりと言うか案の定と言うか、ファンタジー世界の定番の中世風の軍隊。


「※※※※※※※※※※※※!」

「「「「「「「※※※※※※※!!!!!」」」」」」」


 おじさんが急に上げた大声に、他の皆んなが応えて大声を上げる。

 左手を右肩に当てる謎のポーズをしてる。

 敬礼かな?

 そして皆んなバラバラに動き出した。

 テントから何かを運び出す人。

 馬車らしき乗り物に物を載せる人。

 武器を取り出した人もいる。

 何が始まるのかな。

 そうこうしてるうちに、準備が整ったらしい。

 いつの間にか兜を被ってフル装備化したおじさんが馬に跨る。


「※※※※!!」

「「「「「「「※※※!!!!!!」」」」」」」


 走り出したおじさんの馬をその後を下位互換っぽいお揃いの鎧の騎士が続いていく。

 その後を歩兵がついていく。

 歩兵と言っても、重そうな鎧を着て、大きな金属盾を持った所謂「重装歩兵」ってやつだ。

 四十騎くらいの騎士と百くらいの歩兵。

 総勢百五十弱の部隊が陣っぽい所から出て行く。

 さっきの二人が来た方向へ向かうらしい。

 僕?僕は勿論ついてくさ。

 騎士が先頭とは言え、重装歩兵がいるのでそこまでの速度は出ていない。


 さっき僕が二人を見付けた所まで来ると、おじさんと騎士達が一斉に馬から降りた。

 すると前から何やら物音が。

 一体何が今から起こるんだ?――


◆◆◆


「――殿下!お久しぶりです!」

「おお、グライン! 元気だったか!」


 カイン達がキャンプ地としていた所に帰還すると、見慣れた鎧を纏った一団が待ち構えていた。


「ドリュフェス卿もお元気そうで!」

「ええ、お陰様で。それにしてもご無事で何よりです」

「はい。私は運良く強敵らしい強敵と遭遇する事無く、配下を多く残す事が出来ました」

「心強く思うぞ、グライン。頼りにしている」

「はっ、我等王国近衛第三騎士隊第二分隊、カイン殿下にまたお仕え出来て誠に嬉しく思います」

「ああ」


 最上位アンデットであるデスナイトとの戦闘により、第三騎士隊隊長のドリュフェスを含めて配下が三十を切っていたカインは、ここで第三騎士隊第二分隊隊長グライン・アインラスとほぼ無傷の第三騎士隊第二分隊百五十名を手に入れた。


「これで上の階層を目指せる。皆の者、僕について来てくれるか!」

「「「「「「「おおー!!!!!!」」」」」」」


 カインの呼び掛けに、兵士達が王国式の敬礼と歓声で応えた。


「ドリュフェス、これまで通り、指揮はお前に任せる。頼んだぞ」

「御意」


 こうして、ラルファス王国第三王子カイン・エイヘル・ゾン・ラルファスは、百八十の配下と共に『聖域』脱出の為に動き出した。


◆◆◆


「――困りましたね。〝カレ〟と〝オウジ〟が接触するかもしれません」

「何か問題なの〜?」

「ええ、出来る限り〝カレ〟は我々が確保しておきたかったのですよ」

「……どうする。……兵を出すのか」

「いえ、新たには出しません。丁度第六階層に〝イヌ〟の後処理部隊を派遣していた筈、彼等を動かしましょう」

「……〝イヌ〟の後処理?……第二軍か」

「動くの〜?」

「動きますよ、ねぇ第七軍長?」

「ああ、元はと言えば〝イヌ〟がしくじったのも大きい。第二軍としてはこれ以上汚点は晒したくあるまい。それを持ち掛ければイチコロだろう」

「イチコロだって〜。かわいい〜」

「それでは、私はこれで」


相変わらず主人の居ない玉座の間から、一人が出て行く。


「……勝手にそんな事をして……良いのか」

「良い訳無いだろ。そこを何とかするのが城代の腕の見せ所だ」

「うわ〜、ゾファちゃん頑張って〜」


その後、城代に理不尽な命を受けた第二軍がある暴挙に出るなど、彼等は知る由もなかった――






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