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不死者に平和を  作者: 姫神夜神
2 外へ
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15 YOU怒ってる?②

 漸く再生した身体を素早く敵の胴の下に潜り込ませて、硬化&斬撃付与&斬撃強化した粘手で下から斬り上げる。

 三本にまで戻った粘手を代わりばんこに斬り上げ続ける。

 僕の場所が読み辛いと見えてスカベンジャーは有効な手を打てずにいた。

 これはいけるぞ。

 さっきの降下でだいぶMP使ったから節約しておきたかったんだよね。

 こいつを吸収すればかなりHPもMPも回復するに違いない。

 それにしても時間感覚が人間時代と違ってるからどれだけ経ったか分かんないけど結構長い事戦ってる気がする。

 今回は僕一人で戦う訳じゃなかったのもあって色々考えながらなるべく主戦場には降りずに立ち回ってたけど、まぁ結論から言うと

 結構上手くいったんじゃないかな。

 さっきの予想外のブレスを除けば碌にダメージ受けてないし、いくつかスキルレベルも上がって新しいスキルまで手に入れた。

 ほぼ運頼りだった今までに比べると良い感じじゃない?


『経験値が一定に達しました。個体ゾンビソルジャー(スライム)LV2→LV3にレベルアップしました』

『各種基礎能力値が上昇しました』

『レベルアップボーナスを獲得しました。スキル〈刺突付与LV1〉を獲得しました』


 一体討伐で又もやレベルアップ。

 素早く敵の死体を吸収する。

 ふうー、これで一安心だ。

 こいつを溜め込んどけばちょっとやそっとじゃ即死なんて事にはならないだろう。

 さてと次の敵を見付けて新しい〈刺突付与〉を使ってみよう。

 ――その時の僕は未だ知らない。まさかああなってああなるなんて。

 ……これじゃ何も分からんな。


 死にたてホヤホヤのスカベンジャーを吸収した僕はHPとMPが目標値まで回復したのを確認してその場を後にした。

 ここ瓦礫が多過ぎてスカベンジャーの身体の大きさじゃ通らないんだよね。

 お陰でさっきは一体を相手にするだけで良かった訳なんだけど、

 いざ自分が敵と戦いたいって時に近くに敵がいないっていう状態になっちゃうんだよね。

 ……まぁ瓦礫の山が邪魔なのは僕も一緒なんだけどさ。

 登っても良いけどもし登り切ったところを灰針で狙撃されたらと思うとゾッとするので、粘手で安全確認しながら脱出を図ろう。

 そう言えば〈鑑定〉のレベルが上がってたし、そろそろここがどこかかるかな?

 早速試してみよう。どうせ今暇だし。


【迷宮第六階層 床】


 おお、何か出た。

 前やった時は


【床】


 の無限ループだったから心折れて暫く触れてなかったんだよね。

 そっかここは迷宮だったんだね。

 しかも第六階層。

 つまり最低でもこの迷宮は六階建で、外に出るには五つ階層を越える必要があると。

 取り敢えず暫くの目標は「第五階層への移動」かな。

 その前にこの戦場から生きて脱出しなきゃだけど。

 現在伸ばした粘手に敵の反応はない。

 敵はいないっぽいな。

 粘手を二本に増やしそれをしっかりと固定して身体を持ち上げる。


 そこでバッチリ目が合っちゃった。

 ヤバい奴と。


「ギャワォーーーーーーーーーン!」


 さっきの特大ブレスキングがそこに居た。

 ざっと見ると他のキングには新手のゾンビが群がってるみたいでそいつらは身動きが取れないらしい。

 身体に張り付いてるんじゃあ、灰針も迂闊には撃てないしね。

 問題は目の前のブレスキング。

 こいつ自分に群がって来たゾンビを自分ごと灰にしてる。

 そして傷は即座に回復。

 こいつのは〈自己再生〉と言うか〈治癒魔法〉って感じかな。魔法陣的な物見えてるし。

 つまりこいつは他の奴よりも数段強いって事だ。

 ちょっとヤバいな。バッチリ目合っちゃったし、多分マークされてる。

 さっきからちょこまか動いてたのバレてるかも。

 逃げようにも瓦礫の山ごと灰に化えられたら二発目で確実に死ぬ。

 敵がブレス分のMPをケチって他の手段にしてくれたら未だチャンスはあるかもだけど。

 ところがブレスキングは急に別の方向を向いてしまった。

 見ると第何波か知らないけど、ゾンビ軍の新手がスカベンジャー軍本陣へ突入して来る。

 この部隊はオッポタットが中心みたい。

 その部隊はキングの一体に群がったんだけどブレスキングの特大ブレスでキングごと灰に化えられた。

 仲間にも容赦無いな。

 もしかすると仲間じゃない?

 いやそんな訳ないよな。

 どゆこと?

 全く分からん。

 何にせよ今がチャンスだ。距離を取ろう。

 〈疾風〉でゾンビ軍と逆方向へ全速力で駆ける。

 スライムボディは「顔」の概念が無いから、背後見ながら動けるのが利点の一つだよね。

 そのまま逃げ切れるか、という時に床が消え失せた。

 簡単な話だ。

 特大ブレスが僕の足元を抉ったのだ。

 やはり僕はブレスキングに目を付けられてたらしい。


「ウウウウウウウゥ」


 マズい近付いて来る。

 床が消え失せたって事は僕の下半分も持ってかれたって事になる。

 今直ぐには動けない。

 ヤバいマズいガチで死ぬ。

「ギャワォーーーーーーーーー――」


 ――でも死ななかった。何故なら――


 奴が来た。


「ウオーーーーーーーー!!」


 デスナイトが。

 突如現れたデスナイトに一瞬ブレスキングは気が取られたらしい。口の中に溜めていたブレスが霧散する。

 そこへデスナイトが大剣を振り下ろす――


◆◆◆


 突然現れた“ヤツ”に不覚にも背後を取られた。

 背に傷を受けて体勢を崩す。

 ワタシに気配を気取らせなかった実力、この力、間違い無く『護人(もりびと)』。

 こいつが“アルジ”で間違い無い。

 だがこんなところで死ぬ訳にはいかぬ。

 奴らを殺すどころか未だ吠え面すら拝んでいない。

 傷を『上位治癒(グレーター・ヒール)』ですぐさま回復させる。

 このワタシを一撃で仕留められなかった事を後悔するが良い。

 奴らに吠え面をかかせる前に先ずはこいつに、

 このワタシに裏切りをした“アルジ”に、

 あの忌々しき『護人』の一人を亡き者にする。

 先程からちょこまかと動いていた“虫”を消す為に取っておいた奥の手で一撃で葬ってやる。

 このワタシを本気にさせた事を誇りに思い、そして悔やむが良い。

 そして――

「死ねーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


◆◆◆


「――ありゃあー死んじゃったかー」

「失礼ながら当然の結果かと。元より彼の実力で勝てるなどとは微塵も思っておりませんでした故」

「相変わらず口悪いねー。……まぁ私も本気で勝てるとは思ってなかったけどね」

「はっ、申し訳御座いません」

「うん。取り敢えず死体は回収しといてくれる?」

「はっ、畏まりまして御座います」

「ん、じゃあよろしくね」

「はっ」


 そう言って“あのお方”は部屋を後にする。

 後に残された者は“討ち死”した憐れな彼に黙祷を捧げる。

 だからといって、自分で命じておいて酷い言い草だ、などとは誰も思ってはいなかったが――

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