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笑かせ!紺高第二演劇部!  作者: 椎家 友妻
第二話 結成!紺高第二演劇部⁉
8/30

2 美千の演劇論

 引き続き昼休み。

俺は美千に、校舎裏にある庭園に連れてこられ、そこにあるベンチに座らされていた。

 「もう、いい加減に開放してくれや・・・・・・」

 俺はげんなりした声で訴えるが、美千がそれを受け入れるはずもなく、俺の正面に立ち、右の拳をグッと握ってこう言った。

 「それでは今から、私が創ろうとしている部の説明をしたいと思います!」

 「いや、せんでええから。俺はお前の部に入るなんてひとっ言も言うてないから」

 「まず、部の名前は、『紺高第二演劇部』に決まりました!」

 「俺の話を聞けや」

 「そうは言うけど敬介君は、つまるところ演劇をやりたいんやろ?それやったらこれから私が創る、紺高第二演劇部に入ってくれたらええやんか。こっちは演劇未経験者でも大歓迎やで?」

 「俺はあっちの演劇部の方に入りたいんや。それにさっきも言うたけど、何で元々演劇部やったお前が、わざわざそこを辞めて別に部を創ろうとすんねん?」

 「それは、今から説明するわ」

 「せんでもええけど」

 「どうしてもあっちの演劇部に入りたいと仰る敬介君」

 「な、何やねん?」

 「敬介君は、演劇部に入りたいというからには、演劇の事が好きなんやよね?」

 「お、おう。当たり前やないか。俺は演劇(をやっている月さんの事)が、好きや」

 「じゃあ訊くけど、演劇をやる上で、最も重要な事って、何か分かる?」

 「え?演劇をやる上で、最も重要な事?」

 そう訊かれて俺は言葉に詰まった。

常に訳の分からん事を言うてるこいつに、そんな真面目な質問をされるとは思わんかった。

もしかして美千は、今まで居た演劇部に、その『演劇で最も重要な事』が欠けていたから、そこを辞めて自分でそれを作り出そうとしているのやろうか?

そう考えると、この質問はかなり真剣なモノやと思うので、俺も真剣に考え、その中で考え付いた精一杯の真剣な答えを、美千に言った。

 「『演劇を心から楽しむ』、かな?」

 と。しかしそれは美千の考えとは全く違ったのかして、

 「違う!そういう事やない!」

 と声を荒げた。

 「敬介君もそんな甘っちょろい事を言うんか!そんな事ではいつまで経ってもいい演劇は作られへんで⁉」

 「そ、そんなに怒る事ないやないか。じゃあお前が考える、演劇をやる上で最も重要な事って、一体何やねん?」


「お笑い要素です!」


「違うやろ!」 

 俺は反射的にそう叫んでいた。

しかし美千の勢いは止まらんかった。

 「何で⁉演劇で最も求められるものと言えば、『お笑い要素』!これに尽きるやろ⁉」

 「尽きへんわい!演劇で求められるものといえば、『感動』とか『友情』とか『家族愛』とか、そういうモンとちゃうんかい⁉」

 「何やて⁉敬介君もウチのお姉ちゃんと同じ事言うんか⁉さては敬介君、ウチのお姉ちゃんの手先やな⁉」

 「違う!」

 「じゃあ手羽先か⁉」

 「もっと違うわい!何で俺が月さんの手羽先にならなあかんねん⁉それどんな状態⁉」

 「名古屋の居酒屋に売り飛ばしてやろうか⁉」

 「売り飛ばすな!ていうか何の話をしとんねん⁉演劇とは何たるかの話とちゃうかったんか⁉」

 「つまり今の話をまとめると、演劇は人を笑わしてナンボやという事なのです」

 「そうか⁉いや、確かにそういう劇もあるけど、メインはそうではないやろ⁉」

 「それがメインやねん!感動も友情も推理も芸術もいらへん!ただひたすらに笑える!私はそういう演劇がやりたいの!」

 「ああそうですかい!それはよう分かったわ!そやけど何で俺がそれに付き合わんとあかんねん⁉俺とお前は昨日初めて出会った所やないか!」

 「それはね、敬介君が私の考える演劇に、どうしても必要な人間やからです」

 「どう必要やねん?どうせアレやろ?昨日もチラッと言うてた、変な占いのアドバイスやろ?」

 「それだけやないよ。確かに私と敬介君が出会ったキッカケはあの人の占いやけど、こうして敬介君と話してみて、改めてあの占いは正しかったなぁって思うてんねん」

 「そんな事ないわい。大体俺はお笑いなんか出来へん。人を笑わすなんて、俺には到底無理や」

 「いぃや、そんな事ない。敬介君には洗練されたツッコミの技術がある。そして、隠れたマゾッ気も」

 「マゾッ気なんか無いわい!それにツッコミの技術もない!」

 「あるよ!ツッコミっていうのはね、才能やセンスだけでは出来へんねん。日々ツッコミをコツコツ積み重ねんと、その技術は上達せぇへん。私が見るに、敬介君は今までに、数多のツッコミをこなしてきた。きっと身近に、ええボケをかましてくれる人が()ったんやね。良いボケが良いツッコミを育て、良いツッコミが良いボケを生み出すんよ」

 「何か、演劇からえらい遠い話になってないか・・・・・・」

 「そんな事ないよ!これは私の考える演劇論の中でも、一番大事と言っても過言ではないねん!ツッコミは、お笑いにおける司令塔やからね!」

 「そんな大層な」

 「それ程に私は敬介君を評価してるの!だから敬介君にはどうしても私の部に入って欲しいねん!」

 「そうなんか、まあ、お前の言いたい事は大体分かった」

 「じゃ、じゃあ、入部してくれるんやね⁉」

 「入部しません」

 「ギャフゥン!」

 「そんなリアクション、今日びのギャグ漫画でもあんまり見んぞ」

 「え⁉え⁉何でぇっ⁉この話の流れからすると、ここは『よっしゃ!俺はお前の創る部に入部するでぇっ!』ってなるんとちゃうの⁉」

 「なるかい!そもそも俺は何度も、本家演劇部の方に入部したいって言うてるやないか!」

 「まだそんな事言うの⁉何で敬介君はそこまでしてあっちの部に入りたがるの⁉ちゃんと私が納得出来る理由を説明して!」

 「う、だから、演劇が好きやからやって!」

 「何か嘘臭いねんな~その言葉。ホンマは他に何か理由があるんとちゃうの~?」

 「え⁉そ、そんなもんあるかい!変な疑いをかけるのはヤメロ!」

 「怪しいな~」

 「怪しい事なんか、ないわい!」

 「正直に白状しぃや~」

 「白状する事なんか、ないわい!」

 「ほれほれ」

 「だから!」

 「さあさあ」

 「だぁああっ!」

 何か知らんけど面倒な事になった!

と思ったその時、折りよく昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

なので俺はここぞとばかり、有無を言わさず美千の前から走り去った。

すると背後から美千の、

 「こらぁっ!ホンマの事を白状しぃや!」

 という声が聞こえたが、走って追いかけては来なかった。

良かった。とりあえずこの場からは逃れる事が出来た。

これからは、極力美千を避ける事にしよう。

 そう決心しながら、俺は校舎玄関の靴箱の所に行き、上靴に履き替えるべく自分の靴箱の蓋を開けた。

すると中にある俺の上靴の上に、二つ折りにされた一枚の紙切れが乗っていた。

 「何や、これ?」

 俺はそれをおもむろに手に取り、開いて中身を見た。

するとそこに、几帳面に整った字で、こう書かれていた。


『放課後、屋上へ来てください。糸山 月』


 ・・・・・・これは、どういう事?


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