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笑かせ!紺高第二演劇部!  作者: 椎家 友妻
第二話 結成!紺高第二演劇部⁉
7/30

1 敬介、付きまとわれる

 翌日の昼休み。

俺は校舎の廊下をズカズカと早足で歩いていた。

そしてその後を追うように、背後をついてくる女子生徒が一人。

 俺の片想いの相手である糸山月さん。の、妹の、糸山美千や。

 彼女は俺が入ろうとしていた演劇部の部員やったが、昨日付けでそこを辞め、自分で新しく部を創ると宣言した。

それはまあええとしよう。

自分でやりたい事があるのなら、それに向かって突き進んでくれたらええ。

しかし、何で俺がこいつの創ろうとしている部に入らなあかんのや?

俺が入りたいのは、あの月さんが居る演劇部の方なんや!

それやのに、何でまだ部としても成り立ってないような所に入らなあかんねん!

それにこのままやと、俺と月さんの距離はますます離れてしまうやんけ!

演劇部に入りさえすれば、俺は月さんと結ばれる事が出来るというのに(ベロベロの占いが当たっていればの話やけど)!

 ・・・・・・でもまあ、美千が無理矢理俺を勧誘せんかったとしても、俺があの演劇部に入部するのは無理やろう。

あの超冷たい菊井先生を俺だけの力で説得するのは、まず無理っぽいし・・・・・・。

 と頭を悩ませていると、後ろから、

 「おぉ~い、ちょっと待ってよ敬介く~ん」

 という、何とも能天気な声が聞こえてきた。

声の主は言うまでもなく美千。

俺は聞こえないフリをして、更に歩く速度を速めた。

すると背後の美千がまた声を上げる。

 「ちょっと、何で無視するんよ?あなたは敬介君でしょ?敬介く~ん、敬介く~ん・・・・・・・これだけ呼んでも反応しないという事は、あなたは敬介君やなくて、ダニエルさん?」

 「誰がダニエルやねん⁉」

 俺は思わず立ち止まり、美千の方に振り向いて怒鳴った。

しかしこいつはそんな俺に全く構わずにこう続ける。

 「あ、やっと返事してくれた。という事は、あなたはやっぱりダニエルさんやったんやね?」

 「ちゃうわい!俺の名前は桂木敬介や!」

 「桂木ダニエルさん敬介」

 「勝手にミドルネームにするな!そして『さん』までミドルネームに入り込んでいる!」

 「よろしくどうぞ、ダニエルカールさん」

 「完全に変わっとるやないか!俺の本名は何処に行ってん⁉」

 「駅前のパチンコ屋に行きました」

 「俺の本名は暇な時のオトンか⁉訳分からん事言うな!」

 「そういう訳で早速本題に移りたいんやけど」

 「どういう訳やねん⁉」

 「敬介君、これから私が創る部に、部員として入部してくれへん?」

 「断る!」

 「ホンマに?良かった~、断られたらどうしようかと思った~」

 「お前は鼓膜が腐っとんのか⁉ワシ今ハッキリと断るって言うたやないかい!」

 「え⁉あれは『(こと)()るっ!』って言うたんとちゃうの?」

 「そんなモン割ってどないすんねん⁉話の流れと全然関係ないやないか!」

 「うまく琴も割れたので、こちらの入部届けにサインを」

 「割れてねぇよ!琴も()ぇわ!ほんでもってサインなんか絶対にせぇへんからな!」

 「じゃあせめて、コサインだけでも」

 「何がやねん⁉意味の分からん妥協の仕方をすな!」

 そう言って俺は踵を返して歩き出した。

こいつと喋っていると頭がおかしくなりそうや(もうなってるけど)。

しかし美千は尚も俺の横についてきて、言葉を続ける。

 「何で敬介君は、私が創ろうとしてる部に入るのが嫌なん?」

 「俺は演劇部に入りたいんや!お前の創る得体の知れん部になんか入りとうないねん!」

 「失礼やな~、私がこれから創ろうとしてる部も、演劇部やのに」

 「ああ?何で演劇部を抜けたお前が、また演劇部を創るねん?」

 「興味、あるやろ?」

 「ない。俺が興味あるのは、本家演劇部の方や」

 「えぇ~?そんなイケズ言わんとってぇや~」

 とかいうやり取りをしているうちに、俺は職員室の前に辿り着いた。

別に美千から逃げる為という訳やなく(それも多少はあるけど)、純粋にここに用があって来たんや。

 「敬介君、職員室に何か用なん?」

 そう訊ねる美千を無視し、俺は職員室に足を踏み入れた。

後に続いて美千が、

 「もうっ!」

 と怒った様な声を上げてついてくる。

ホンマにしつこい奴や。

それはともかく、俺は部屋の中をキョロキョロ見回し、目的の人物の姿を探した。

演劇部の顧問である、菊井先生の姿を。

そしてあの人に改めて、演劇部に入れてもらえるようお願いするのや。

その菊井先生は、外の窓側のデスクに居た。

俺は早速菊井先生の近くまで歩み寄り、声をかけた。

 「菊井先生」

 菊井先生はデスクで何かの書類を書き込んでいたが、その手を止め、俺の方に向いてこう言った。

 「駄目よ」

 「えぇっ⁉俺まだ何も言うてないですけど⁉」

 「言わなくても分かるわよ。演劇部に入れてくれって言うんでしょう?」

 「そうです!その為に俺はこの高校に入学したんですから!」

 「ほう、それはまた大した心構えね。でもあなたは、これから美千が創ろうとしている部の方に入るんでしょう?言っとくけどウチの部は、掛け持ちで出来る程甘くはないわよ」

 「分かってますよ!ていうか俺はこいつの創る部になんか入りませんよ!こいつが勝手に俺を入部させようとしてるだけです!」

 すると美千。

 「人聞き悪いな~、それやと私がまるで、敬介君を無理矢理勧誘するパリコレモデルみたいやないの」

 「誰がパリコレモデルやねん!もうええからお前はあっちに行け!」

 「冷たいなぁもぉ」

 「それよりも、ちゃんと入部届けも持ってきたんですよ。ほら、菊井先生、受け取ってください」

 美千を追い払いながら俺が菊井先生に入部届けを差し出すと、菊井先生はヤレヤレという様子で首を横に振りながらこう言った。

 「悪いけど私、年下の男からのラヴレターは、受け取らない事にしているの」

 「誰がラブレターを受け取れなんて言いました⁉そうやなくて俺は、入部届けを受け取ってくださいと言うてるんですよ!」

 「似た様な物じゃないの」

 「全然違いますよ!」

 俺がそう言って声を荒げると、懲りもせずに一向に帰ろうとしない美千が、再び口を挟む。

 「敬介君ってもしかして、菊井先生の事が好きやから、そんなに演劇部に入りたがるの?」

 「違うわい!」

 「それを聞いて安心したわ。もしそうだったら私、冥王星まで逃げていたもの」

 「どんだけ遠くまで逃げるんですか⁉そんなに俺の事が嫌いなんですか⁉」

 「まざまざと」

 「まざまざと嫌わないでください!」

 「とにかく、これ以上あなたと話す事はないわ。私は忙しいんだから、あまり時間を取らせないでくれる?」

 「そうはいきませんよ!俺の話はまだ終わってないんですから!」

 「美千、彼をここから連れ出して」

 「ちょっと!」

「分かりました!」

 菊井先生の言葉に美千はそう返すと、ギュッと俺の右の二の腕をつねり、そのまま俺を職員室の入口の方へと引っ張っていった。

 「痛っ!イタタタタタ!おい!美千!二の腕つねるな!地味に(いて)ぇよ!」

 「これ以上菊井先生の仕事の邪魔をしたら悪いって。ほら、早く行こ?」

 「イタイイタイ!分かったから!とにかくつねるのヤメテ!」

 「つねられるのをやめて欲しいのなら、ウチが作る部に入るかい?」

 「それは断る!」

 「じゃあ、ウチを女王様とお呼び!」

 「何でやねん⁉」

 もう・・・・・・何やねん一体・・・・・・。



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