1 部費がない!
紺高第二演劇部がやっとの事で(というか、むしろあっさり)五人揃った昨日から一日が経ち、今日からいよいよ本格的に活動を開始する事になった。
この日は朝から美千に集合をかけられ、俺達第二演劇部員は、とりあえず今のところの部室となった、旧校舎の資料室(ベロベロの寝床)に集まった。
まだ朝やというのにここは相変わらず薄暗く、それがこの部の船出には、悲しいほどにマッチしている。
そんな中、紺高第二演劇部員となった、俺、菅道さん、正樹、ベロベロ、美千の五人が、初めて一同に会した。
しかし何でまたこんな朝っぱらからこんな所に呼び出されなあかんのか?
それは、この部が出来て最初にぶち当たった、大きな問題が原因やった。
その問題とは、これや。
「いきなりで何ですが、我が紺高第二演劇部には、部費が一円もありません」
当演劇部の部長になった糸山美千は、大して深刻でもないような口調でそう言った。
俺「まあ確かに、今日出来たばっかりの部活に、部費なんかある訳ないわなぁ」
美「ブヒブヒ」
菅「生徒会に部費を請求しようにも、この時期じゃあ部費の配分も決まっちゃっているでしょうしね」
美「ブヒィ・・・・・・」
正「カッちゃんが直接お姉さんに頼んで、部費を生徒会で都合してもらうのは無理かな?」
美「ブヒッ!ブヒッ!」
俺「いくらあの強引な姉ちゃんとはいえ、部費の配分を操作する事は出来んやろ」
美「ブヒ~ン」
ベ「しかし部費がない事には、演劇をする為の衣装や道具が用意出来ないですしねぇ」
美「ブッヒィ~」
菅「困ったわね・・・・・・」
美「ブヒヒヒヒィ~・・・・・・」
俺「おいコラ豚娘」
美「え⁉豚娘って誰の事⁉」
俺「お前やお前!さっきからブヒブヒうっさいのぅ!お前が部長やねんから、もっと真面目に部費の事を考
えろや!」
美「だからこうやって、ブヒブヒ言いながら部費の事を考えてるんやんか」
俺「全然説得力ないわい!」
ベ「あの~、ワタクシ、ひとついい考えを思いついたんですが」
美「なるほど、SMクラブを開いて部費をガッポリ稼ごうと言うんやね」
俺「そんな事言うてないやろ⁉しかも高校生がSMクラブってあんた⁉」
美「女王様は勿論菅道さんで」
俺「おいおい!」
菅「腕が鳴るわね」
俺「鳴らさなくていいですって!それよりベロベロ!いい考えって何や⁉」
ベ「ワタクシがこの学校内で占いの館を開き、その占いで稼いだお金を部費に当てるのです」
美「あ、それはええ考えかも。ベロさんナイスアイディア!」
俺「そうかぁ~?学校で占いをやっても、客なんか来ぇへんと思うけどなぁ」
正「そんな事はないと思うで?占いといえば女子に人気があるし、そこそこ当たる占いなら、結構流行るんとちゃうかなぁ?」
菅「そうねぇ、でも、ベロベロさんだけにそんな大変な仕事を押し付けるのも何だか悪いわ」
ベ「その辺はお気遣いご無用です。ワタクシは皆さんのお役に立てるのならば、この程度の労働は何て事ありません。それに、敬介さんがアシスタントとして手伝うと仰ってくれていますし」
俺「え?俺そんな事言うた?いつ?何処で?」
美「よっしゃ!そんなら部費の事はベロさんと敬介君にお願いするね!」
ベ「お任せください」
俺「はぁ・・・・・・」
何か知らんけど、そういう事になってしもうた。
ホンマにこんな調子で、この部はちゃんとやっていけるんやろうか?
俺の不安は膨らむばかりやった。