1 姉ちゃんにバレバレ
翌日の朝、俺の目覚めは爽やかサワデーの様に爽やかやった。
明るい太陽の日差しと外の雀の鳴き声が、これから始まる俺の輝かしい未来を後押ししてくれているような気がする。
俺はさっさと制服に着替えて便所で用を足してから、一階の台所へ向かった。
台所へ行くと、制服の上にエプロンをつけた姉ちゃんが、朝食のトーストを食卓の上に並べていた。
「何や、今日はいつもより早いやんか」
台所に入った俺を見て姉ちゃんは言った。
「オネショでもしていつもより早く目が覚めたんか?」
「そんな訳ないやろ」
俺はそう返して食卓の椅子に座り、目の前に置かれたトーストにかじりついた。
「それにしても、まさかあんたが演劇部に入るとはなぁ」
正面に座った姉ちゃんが、牛乳を一飲みしてから言った。
「一体何を企んでるんよ?」
「何も企んでへんがな。大体演劇対決の話を持ち出したのは姉ちゃんやんけ。姉ちゃんこそ一体何を企んどんねん?」
「私は紺高の生徒会長として、あの場の姉妹喧嘩を仲裁してあげただけやんか。あとはまぁこの時期は特に面白い行事もないから、演劇対決でもやれば結構面白いんやないかなぁと、そう思うただけよ」
「そんな思いつきで学校行事をやろうとするなんて、相変わらず強引やなぁ」
「何が強引やのよ?私はあんたの為を思うて、この企画をやってあげようとしてるんやないの」
「何で俺の為やねん?」
「だってあんた、月の事が好きなんやろ?」
「ブッフォオオッ⁉」
「汚い子やな。お約束のように牛乳を吐きなや」
「な、な、何でその事を⁉」
「そんなんバレバレやがな。昨日の月に対するあんたの態度を見とったら、サルでも分かるで」
「こ、この事は月さんには言わんといてくれ・・・・・・」
「あ、そろそろ学校に行く時間やわ」
「うぉい⁉ホンマに頼むで⁉この事は絶対に月さんには言わんといてくれよ⁉っていうか誰にも言わんといてや!」
「分かってるがな。こんなにオモロイ事、もう暫くは黙って見物させてもらうわ」
姉ちゃんは食パンをくわえたまま立ち上がると、「じゃ、後片付けよろしくね」と言って、台所を出て行った。
その後姿を俺は、げんなりしながら見送った。
あの姉は、ホンマに恐ろしい・・・・・・。