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笑かせ!紺高第二演劇部!  作者: 椎家 友妻
第二話 結成!紺高第二演劇部⁉
11/30

5 姉、参戦

 「ストォオオップ!ひばりくん!」

 と、何やらハンパなく懐かしい漫画のタイトルのようなセリフが、校舎入口の方から聞こえた(どうせなら、俺が月さんに叩かれる前に叫んで欲しかった)。

俺、美千、月さんは、同時にそちらに顔を向けた。

するとそこに、何やら悪巧みをしているような笑みを浮かべた、我が姉、時子が立っていた。

 「時子?どうしてこんな所に?生徒会はどうしたの?」

 と月さん。

月さんはウチの姉ちゃんの知り合いなんやろうか?

まあ、同学年やからそれでも不思議はないけど。

そんな月さんの質問に、姉ちゃんはこっちに歩み寄りながら答えた。

 「生徒会の集まりに出るのが面倒やったから、サボってこの屋上の端っこで昼寝をしとってん」

 何ちゅう姉や。

これが生徒会長やと、他の生徒会役員の人達はさぞかし苦労してハルんやろう。

そんな事をしみじみ考えていると、近くまで歩み寄って来た姉ちゃんが、

 「話は一通り聞かせてもろうたで」

 と言ってニヤリと笑い、こう続けた。

 「つまりこれは、月の妹さんである美千ちゃんを、月とウチの弟の敬介で奪い合ってるんやな?」

 「全く違う」

 俺は即座に否定したが、美千はそれより何より、

 「え?敬介君て、桂木会長の弟さんやったの?」

 と、目を丸くした。

 「そうよ」

 と言ってニッコリ美千に微笑みかける姉ちゃん。

その天使の様な微笑みに、美千は照れた様子で俯いた。

ちなみに前にも言うたけど、この姉は家では悪魔の様に恐ろしい女やけど、学校では天使の様に優しくおしとやかな(演技をしている)ので、この学校では才色兼美のお嬢様で通っている。

一度ウチでの姉ちゃんの素行を動画に撮って、学校でバラ()いてやりたいけど、それをすると俺の命がマジで危なくなるのでしません。

それはともかく、美千が姉ちゃんの微笑みに照れたのが気に入らんかったのか、月さんはムッとした表情で姉ちゃんに、

 「ちょっと時子!今大事な話をしてるんだから、邪魔しないでよ!」

 と強い口調で言った。

しかし姉ちゃんはそんな月さんに怯む事なくこう返す。

 「まあ落ち着きぃな。この場は私が仕切ったるから」

 「仕切るって何よ⁉これは私と美千と、美千をたぶらかすあなたの弟の問題よ!」

 月さんは今にも姉ちゃんに掴みかからん勢いで言う。

と、その時、俯いていた美千が顔を上げ、姉ちゃんに言った。

「あ、あのっ、桂木会長!私、新しい部を創りたいんです!」

 「美千!」

 「あら、そうなの?何ていう部?」

 声を荒げる月さんに構わず、姉ちゃんは軽い口調で美千に訊いた。

それに対して美千は、ハッキリとこう言った。

 「紺高第二演劇部!」

 「ええよ」

 姉ちゃんは即答したが、月さんが、

 「駄目よ!」とさえぎった。

 「何であんたが駄目とか言うんよ?彼女が創りたいって言うてるんやから、創らしたったらええやないの」

 姉ちゃんは眉を潜めて月さんに言う。それに対して月さんは眉をつり上げて言い返す。

 「そういう訳にはいかないわよ!そもそもこの学校には演劇部があるのに、どうしてわざわざ新しく演劇部を創らなくちゃいけないの!」

 「だからそれは、今の部やと私のやりたい事が出来へんからや!」

 月さんに声を荒げる美千。

 「私はそんなの認めないわよ!美千には演技の才能があるんだから、今の演劇部で才能を磨きなさい!」

と月さん。

 「嫌や!」と美千。

 「磨くの!」と月さん。

 「嫌やって!」と美千。

 「磨きなさい!」と月さん。

 「もう!何で私がいちいちお姉ちゃんの言う事を聞かなあかんねん⁉」

 「もう!どうしてあなたは私の言う事を聞かないのよ⁉」

月さんはそう言うと、逆上した様子で右の平手を振り上げた。そして、

 ばちぃいん!

 と頬を叩いた!


俺の頬を。


 「ええっ⁉何でですか⁉」

 思わずそう叫ぶ俺。それに対して月さん。

 「あなたが美千をかばったんじゃないの!」

 断言しよう。

かばってない。

どうやら俺は相当月さんに嫌われてしもうた様や。

まだ告白もしてないのに・・・・・・。

と、叩かれた頬を押さえて半泣きになっていると、

 「よし、じゃあこうしよう」

 と、姉ちゃんが両手をパンと叩いて言った。

 「どうするんですか?」

 と訊ねる美千に、姉ちゃんはニヤリと笑って続けた。

 「勝負をするんよ。第一演劇部と、第二演劇部で」

 「勝負って何のよ?」

 「そりゃあお互い演劇部やねんから、演劇の勝負に決まってるがな」

 月さんの問いかけに、姉ちゃんはさも当然のように答えた。

姉「ルールは簡単。負けた方が勝った方の言う事を聞く」

美「と言う事は、私ら第二演劇部がその演劇対決で勝てば、正式に部として認めてもらえる訳ですね⁉」

月「何馬鹿な事言ってるの。まだ人数もろくに揃ってないあなた達が、ウチの部に勝てる訳ないじゃない。そもそも演劇勝負と言っても、一体どうやって勝敗を決めるのよ?」

姉「今日から約一ヵ月後の某日、午後の授業時間を使って演劇コンクールをやるんよ。場所は体育館。審査員は紺高の全生徒。互いの演劇部がそれぞれひとつの演劇をやって、面白いと思った方に投票をしてもらう。で、票が多かった方が勝ち。というのでどない?」

美「いいですねそれ!是非やりましょう!」

月「まあ、別にやってもいいけど。どうせウチが勝つのは目に見えているし」

 という感じで、何か知らんけど演劇対決をする事に決まったらしい。

当物語の主人公であるこの俺は、この物語で大きなポイントとなるであろうこのやりとりを、一人蚊帳(かや)の外でぼんやりと眺めていた。

俺ってもしかして、この物語であんまり必要ない存在なのでは?

と、主人公としていささか自信を失いかけている中、それでもやりとりは続いた。

姉「じゃあとりあえず、お互い負けたらどうするかっていうのを決めとこか?まずは月から」

月「そんなの決まってるわ。私達が勝てば第二演劇部はその場で解散。そして美千はウチの演劇部に復帰する事」

姉「まあそんな所やろうな。で、美千ちゃんはどうする?第二演劇部が勝ったとしたら」

月「そんな事ありえないけどね」

美「姉ちゃんは黙っといて。そうですねぇ、私らが勝ったら、第二演劇部を正式な部として認めてもらう」

姉「それだけ?」

美「え?まあ、私はそれさえ出来れば満足ですけど」

姉「もっとこう、罰ゲーム的なモンはないの?第一演劇部を解散させるとか」

月「ちょっと時子!それ本気で言ってるの⁉」

姉「冗談冗談。でももうひとつ何かないと、月が勝った時の条件と割が合わへんで?」

美「う~ん、そう言われても・・・・・・」

月「ああもう分かったわよ!もし万が一美千の部にウチの部が負けるような事になれば、今年一杯私は、美千が夜寝る時の抱き枕になってあげるわよ!これで満足でしょ⁉」

美「何でやねん⁉それやとむしろ私の方が罰ゲームやないの!」

月「何でよ⁉」

姉「月は相変わらずの超シスコンやな。ファンの男子生徒が知ったら泣くで?」

美「もうええわ、お姉ちゃんに考えさしたらろくな事にならへん。もし私らの部がお姉ちゃんの部に勝ったら、お姉ちゃんは私らの言う事を何かひとつ聞く。これでどう?」

月「何かって何よ?どうせ無茶な事を言うつもりなんでしょう?」

美「お姉ちゃんが出来る範囲の事を言うがな。それにひとつだけやし、これなら構わへんやろ?」

月「まあ、それなら別に構わないけど。そもそも負ける訳がないし」

姉「よっしゃ決まりやな。じゃあ今日から約一ヵ月後、紺高の体育館にて、第一と第二の演劇部で演劇対決を行う。そしてこの対決で第一演劇部が勝てば、美千ちゃんはその場で第二演劇部を解散させ、第一演劇部の方に戻らなければならない。これでええね?美千ちゃん」

美「はい、いいです」

姉「んで、逆に第二演劇部が勝った場合、月はこの部を正式なものとして認め、尚且つ何かひとつ彼女達の言う事を聞かなければならない。これでええな?月」

月「いいわよ」

 そう言って月さんは頷いた。

と、その時やった。

全く唐突に、俺の心臓がドクンと高鳴った。

それは今、月さんが今認めた事への反応やった。

つまり、『来月の演劇対決で月さんの演劇部に勝てば、月さんは俺らの言う事をひとつ聞いてくれる』という事に対しての胸の高鳴り!

 と、言う事はすなわち、俺が月さんに、

『俺と、デートしてください!』

と申し込んで、それを聞き入れてもらうというのもアリなんやなかろうか⁉

そう悟った瞬間俺は、


「うぉおおおおっ!」


 と、かつてない声量で叫び声を上げた!

そのいきなりの叫びに、美千と月さんがビクッと身を縮めた。

月「何なのよ⁉いきなりびっくりするじゃない!」

美「どうしたん敬介君?いつもの便秘?」

俺「ちゃうわい!いつも便秘なんかなってないし!それより美千!」

美「へ?あ、はい」

俺「何としても一ヵ月後の演劇対決には勝つぞ!」

美「え⁉ホンマに⁉という事は、敬介君はウチの部に入ってくれるって事やね⁉」

俺「おうよ!俺はやるで!絶対に第一演劇部に勝つ!」

月「ちょっと!いきなり喋り出したと思ったら、何勝手な事まくし立ててるのよ⁉そう簡単にウチの部に勝てると思ったら大間違いよ⁉」

俺「月さん!」

月「な、何よ?」

俺「来月の対決で勝ったら、必ず俺の言う事を聞いてもらいますからね!」

月「んなっ⁉私から美千を奪う事を認めさせる気ね⁉絶対に負けないんだから!」

俺「全然違いますけど俺らだって負けるつもりはありませんよ!」

 そう言って睨み合う俺と月さん。

その間に、激しい火花が飛んだ。

その様子を呆れた様子で眺める姉ちゃんと美千をヨソに、俺のハートは熱く燃えたぎっていた!

 俺は何としても来月の演劇対決で勝つ!

そしてかならず月さんとデートしてもらうんや!

 当物語の主人公、桂木敬介の片思いを賭けた真剣勝負が、始まろうとしていた!


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