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Way War  作者: 中国産日本人
第一章 親友編
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第五話 『罠』

 ノアクラ達はゲーム開始と共にビルの一室に飛ばされた。ノアクラは即座にレーダーを確認するが反応は無い。部屋にはソファやテーブルなどが設置してあるため、ノアクラ達は取り敢えず腰掛ける。そしてノアクラは二人に向かって話し出した。


「さっそく作戦会議しよう。まず、どんな条件を満たせばレーダッシュゲームが終わるのかをジョーカーは明示していなかったよな。つまり情報が明確じゃない現状は、いつゲームが終わってもおかしくない。一回でゲームをクリアするんならスピードのために多少は無理を許容しなくちゃいけない。ここまではいい?」


 エンドロとまるは頷き、ノアクラの言葉の続きを待つ。


「でもこのゲームのクリア条件はあくまでレーダーの所持数であって、殺した人数じゃないよな。それなら最悪レーダーを投げ捨ててしまえば、敵が追いかけてくる可能性は低減する。更にゲームをクリア出来なくても死ぬことはなく、次のレーダッシュゲームが開かれるのを待つだけ。つまり命を優先して堅実にゲームクリアを目指すことも出来るのがこのゲームの重要点だな」


 ノアクラの説明を聞き、エンドロは口を開いた。


「要するに問題は、一回でゲームクリアを目指すか、それとも次回も視野に入れて慎重にクリアを目指すかってとこだよね」


 ノアクラは頷く。


「そうそう。で、その問題を解決するには、俺達の戦力をしっかり把握しなきゃいけないよな。堅実にいかないと危ないほど弱いのか、それとも多少無理しても勝てるくらいに強いのか…」


 ノアクラはパンッ、と手と手を合わせて叩く。


「っていうことで、先ずは能力を教え合おう」








 数十分にも及ぶ作戦会議が終了すると、さっそくノアクラ達は移動を始める。自身達が飛ばされたビルの中を探索した後に外に出て、慎重にレーダーを確認しながら歩き始めた。


「取り敢えず遠目に見える、あのデカいビルにいこう」


 ノアクラはそういって、周りの建物と比べて頭一つ巨大なビルを指さす。


 ビルの中を探索してノアクラ達が分かったことが二つあった。

 一つは物資の存在である。恐らくゲームの運営側が敢えて設置した物資であり、黒いアタッシュケースが置いてあった。ケースの中には食べ物や飲み物、中には手榴弾やナイフがあった。エンドロの分析によると、戦闘に向いていない特殊能力を持つソロプレイヤーも戦えるように調整するためのものだ。

 もう一つはゲームを終わらす条件を示すヒントである。アタッシュケースの上に紙が貼ってあり、その紙には「最も高い建物に終わりへと繋がる鍵は隠されている」と記載されていた。


(もしもゲーム終了のタイミングを自由に決めることを可能にする鍵なら、レーダッシュゲーム勝利には圧倒的に有利になる)


 ノアクラは思考する。

 レーダーを奪い合うゲームにおいて、強引な命のやり取りはどうしてもハイリスクな行為となってしまう。しかしいつゲームが終了するかも分からない状況下では、ある程度はスピーディにレーダーを収集することも視野に入れなければならない。

 だが任意で終了のタイミングを決められるのであれば、急ぐ必要が全くもって消える。慎重にレーダーを収集し、希望の数を達成すれば終了すればいいのだ。これは大きなアドバンテージである。

 よってノアクラ達は終わりに繋がる鍵を求めるために行動に出ることにした。


『でもさノアクラ、その鍵を求めて訪れる他プレイヤーと戦闘になるリスクもあるけど、ちゃんとそれを踏まえた上での判断なの?』


 ノアクラはエンドロの言葉を思い出していた。ノアクラ達が読んだ文書がどれほどエリアに分布されているのかは判明していないが、それでも鍵の争奪戦が起こる可能性は十分に高い。しかしそれでもノアクラはそのリスクを受け入れた。それは偏にノアクラが、互いの能力を確認した上で、争奪戦にも負けないチームであると確信したためである。


「ねぇノアクラぁ〜、歩き疲れた!」


 しばらくノアクラ達はビルへと向かって歩いていたが、まるは駄々を捏ねていた。というのも、アタッシュケースに入っていた物資のほとんどは、まるに持たせていたためである。エンドロは全く体力がないらしく手ぶらであり、ノアクラは少し荷物を持っているが、それでも軽荷物といった塩梅だ。


「いやまる、お前が一番体力あるんだから文句言うなよな」


 ノアクラはまるを叱るが、まるはべーっと舌を出して威嚇した。


 ノアクラ達が現在歩いているところは、両脇に二、三階建てのコンクリートビルがそびえ立っている道であり、道幅は10メートル以上はあった。


「二人とも下がって」


 そんな二人を唐突にエンドロは呼び止め、まるとノアクラはピタッと止まった。そして後ろにゆっくり下がった。


「どうしたの?エンドロ」


 下がった後に、まるはエンドロに確認する。


「ちょっと見てて」


 エンドロは道端に捨ててあったペットボトルのゴミを拾い、目の前の道に投げる。そして投げたペットボトルが地面に落ちると同時に、ドォーーーンッ!!と爆発が目の前で生じた。爆発源は先程まで何もない舗装された道路であったが、爆発後には4、5メートルのクレーターが出来ていた。


「地雷か…敵が近くにいる可能性が高いぞ」


 ノアクラは二人に注意喚起をする。そしてノアクラとまるは静かに構え、エンドロは辺りをゆっくりと見渡した。静けさと緊張感がノアクラ達の肌を刺す。しかし数十秒するが何も起こらない。

 ノアクラは既にレーダーを確認していたが、反応は全くなかった。つまり半径50メートルにレーダーの存在はないということだ。


(レーダーは、人間じゃなくてあくまでレーダーに反応する。レーダーが何処にあるかを示すんだ。だから恐らくそこを利用して自分たちの位置がバレないように、エリアの何処かにレーダーを隠したって感じか。

そしてたぶん相手はこっちより少人数…分が悪いから罠を仕掛けたってところだな。だから直接戦うつもりは全くなく、このまま隠れて乗り過ごすって魂胆だろうな)


 ノアクラは冷静に分析する。

 実際のところ、罠を仕掛けるという戦法を使用するのであれば、プレイヤーの居場所がバレてしまうレーダーは邪魔ものでしかなかった。何故ならば近くに居ることがバレてしまうと、罠にかけたい相手が警戒してしまうためである。

 相手を殺した後はレーダーを回収しなくてはならないため、結局のところ居場所がバレるリスクからは完全に回避することはできないが、それでも初手のレーダー回収には合理的な戦法であった。


「けど、相手が悪かったな」


 ノアクラは少しニヤッとした後に、エンドロとまるにアイコンタクトを送り、ゆっくりと先頭を歩き出す。


「ノアクラ、ストップ」


 歩き出して数十秒後、エンドロはまたもやノアクラを引き止め、ノアクラは下がる。

 そして、さきほど爆発によって生じたクレーターから拾い上げたコンクリートの破片を、エンドロは目の前の道路にまたもや投げた。コンクリートの破片が地面に着くと同時に、またもや大きな爆発が起きる。

そして数秒すると、まるが唐突に口を開いた。


「後方左の建物に一人分の足音がしたよ」


 それを聞きノアクラ達は、まるが指さす後方の建物へ入っていった。そして三人が二階に登ると、そこには中年でスーツ姿の男が部屋の端っこにいた。


「ひっ、ヒィ!!近づくなッ!!クソ、なんで俺が仕掛けたトラップが分かるんだ!!爆発してからじゃないと分からないはずだぞ!!」


 その男は焦っている様子でノアクラ達を威嚇する。


「冥土の土産に教えてあげるよオジサン」


 まるが持っているアタッシュケースを漁りながらエンドロは、中年の男に向かって話し始めた。


「僕の能力は五秒先の未来を予知する能力でさ、地雷を仕掛けられても予知で分かっちゃうんだよね…」


「はァっ!?だ、だったらどうやって俺の居場所が分かったんだよ!予知じゃ絶対に分からないはずだろ!」


「それも理由は簡単」


 エンドロは言葉を紡ぎながら、アタッシュケースから取り出した拳銃をノアクラに渡す。その様子をみて中年の男は更に恐怖の表情を浮かべる。


「このまるって子の能力は、身体能力の一部を強化するってものなんだ。だからまるは聴力を強化して、オジサンの足音を聞き取ったってこと。

僕達が歩き進めれば、オジサンは僕達が罠にかかったかを確認するために建物を移動しなきゃでしょ?だから敢えて僕達は二回目の爆発を起こして、オジサンを移動させたんだよ。つまりオジサンは罠にかかっちゃったってハナシ」


 エンドロは自慢げに語る。


「もう話はいい?」


 そう言いノアクラは、撃てる状態の拳銃を中年の男性に向ける。中年の男性はハァ、ハァと息を荒くしながら涙目でノアクラを見つめている。


「お前には二つの選択肢がある。一つ目は、このまま俺に撃たれて死ぬか。二つ目は、お前が隠したレーダーが何処にあるのかを俺たちに教えるか。教えてくれたら命は助けるよ」


 そんなノアクラの提案に、中年の男性は間髪入れずに答えた。


「教える!教えるとも!ここから100メートルくらい進むと真っ赤なビルがある!そこの地下室に置いてあるよ!ほら教えただろ!早く銃を下ろせ!」


「ありがとオッサン」


 そう感謝を告げると、ノアクラは迷わずに拳銃の引き金を引いた。弾丸は的確に中年の男性の頭を撃ち抜き、部屋には血飛沫が広がった。パァンッという乾いた音が部屋に残響していた。


「うわぁ…ノアクラさいてーだよ…」


 まるはノアクラをみてドン引きする。エンドロは欠伸をしながら背伸びをした。

 そんな二人をみてノアクラは苦笑し、口を開いた。


「それじゃ、先を急ごうか」

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