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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第4章 私とあの子で宝物を見つけるまで
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第65話:拠点の前に私は同業者に会いたい。

新キャラが登場

「お腹いっぱい」


 美味しいものは食べればごきげんになるように、反省ムードだった2人の気分もだいぶ改善されたようだ。でも、お互いにパエリアを食べた後の反応が微妙に違っていた。


「隠し味は何でしょう。あの味を引き出すには……」


 青い髪のアザレアは食べた味を口の中で研究して、自分のものとしようとしている。

 お店の料理相手にそんなことをする人を私は初めて見た。普通美味しかった、ごちそうさまで終わりだろう。そっちの青い髪のツツジもそんな感じの顔してるし。


「今度は何食べに行こっか?」

「ハシゴはしないよ?!」


 あなた結構食べてましたよね? 私の分まで結構取られてた気がするし、ここでも盗人思考が、って流石にそんなことないとは思うけど。

 でもね? 私はもうちょっとパエリア食べたかったよ? また来るけど、その時はまた別のお店で食べると思うから、このパエリアは人生初で最後のパエリアだったんだよ? 悲しいよ私は。


「ごめんって! それより次どこ行く?」

「でしたら拠点に行くべきかと」


 拠点ってなんだろ。アザレアはここに来るときに持っていたパンフレットを開き、地図の上の一点を指差してつぶやいた。


「教会です。ここでイベントクエストを受注するそうです」

「ふーん。受注だけなら行かなくてもよくない?」


 そんなことないとは思うんだけどな。こういうのはちゃんと拠点をしっかり見て、準備することも重要なんだよ。とツツジに口添えしてみる。


「そういうもんかなぁ。まぁいっか、暇だし」

「暇だから、なんだ……」


 そんな適当でいいのか、とは思うけど、別にそれでもいいや。ツツジが行く気になってくれるなら。

 てってこてってこと山道を歩いていき、周囲に建物が少なくなってきたところ、それはでかでかと視界に入ってきた。

 大きな建物が灰色の塀で囲まれている。もしかしたらこれはモンスターから身を守るための塀なんじゃないかと思ったり。この辺物騒そうだし、それは仕方ないことかもしれない。

 扉から塀の中に入ると、そこには大きな教会が鎮座していた。でけー。結構本格的なものみたいだから、中にはステンドグラスがあって綺麗だったりして。


 なーんて考えていると、同じことを考えていたのか、後ろから同じような声が聞こえてきた。


「何のんきなこと言っているんですか。ボスの敗北条件には教会の破壊もあるんですから」

「まぁまぁ、たかがゲームなんだからそう焦らなくてもいいじゃない。……おや?」


 ども、と口にして頭を下げる。この顔どこかで見覚えがあった、どころの騒ぎではない。先程助けていただいたダンサーのお姉さんと騎士の少女だ。


「あなたたちもイベントの下見に?」

「はい! ということはそちらも?」

「えぇ、それより敬語はいいわ。堅苦しいもの」

「あ、じゃあ」


 確かにちょっと使いづらい、というよりも慣れなくて、その申し出は非常にありがたかった。私はこほんとわざとらしい咳払いをすると、自己紹介を始めた。


「私はレアネラ。職業は騎士で、こっちが付き添いのアザレア」

「よろしくお願いいたします」

「私はツツジね。職業は芸人!」


 私たちの指を差して、それぞれの名前をつぶやいていくダンサーのお姉さん。どうやら名前はあんまり覚えられない方らしい。

 ちゃんと刻み込んだ後に、忘れていたのか隣の騎士の少女にこづかれてやっと自分たちの名前を明かした。


「あたしはティアよ。剣士をやっているわ」

「私は熊野です! 本名じゃありません!」


 じゃあなんで熊野なんだろう。確か軍艦の名前にそんなのがあったはず。いやそれでもますます疑問に思ってしまうけど、それは置いておくしよう。彼女は見た目通り騎士であることを明かした。


「せっかくだし、フレンド登録しない? なにかの縁だし」

「そうね、こちらからもお願いするわ」


 ツツジの提案により私たちはティアたちとフレンド登録することとなった。お礼も込めて後で何かプレゼントした方がいいかなぁ。

 と、メニュー画面から自分の手持ちを確認していると、グイグイ袖を引っ張られ、ツツジに教会へと連れていかれた。


 中は木製の長椅子がずらりと並んでいて、その先には聖書台が置かれている。さらにその先の壁には教会の象徴というべき十字架も表示されている。壁は一部がステンドグラスで、日差しが色づいて差し込む。これはまさしく教会って感じだぁ。

 しばらくその様子に感銘を受けていると、他の面々もそうなのか、私に話しかけてくる。


「すごい、教会感あるね」

「ね。流石に大きいから迫力も段違いだよ」

「そうね、あたしも旅をしてきたけど、ここまで大きいのは初めてね」

「そうなんですか? ティアならもっと見てると思ったのですが」

「それだけ信仰が深い、ということなのでしょう」


 なるほど、アザレアの言うとおりかもしれない。信仰の深さがこうやって教会の大きさにつながっているのかもしれない。


「おぉ、冒険者たちよ! 私の願いを叶えてくださいますか?」

「うぉ、なに?! 突然びっくりしたー」


 突然声がしたのは神官と思しき見た目をした男性の姿だった。その声とともに目の前にウィンドウが1つ表示される。内容はクエストみたいだった。


「あら、なんのクエストかしら」


 クエスト詳細をタップしてみると、内容は単純明快でおつかいクエストだった。ただ、その内容はちょっと重たくて、儀式で使うロウソクと聖水を作るための海水を用意してほしいとのことだった。ちょっと量が多い。


「受けましょう。困っている人は見逃せません!」

「熊野、相手はNPCだけど」

「それでもです!」


 熊野は大変責任感のお強い性格をしているようだ。まぁ報酬もそこそこ嬉しいし、聖水というものが手に入るらしいので、やってもいいかもしれない。

 私はみんなに断りを入れて、クエストを受注してみた。


「レアが言うなら仕方ないか。私も」

「私もやります」

「じゃああたしも」


 1人がやるとそれに便乗するのが日本人の性というやつだろう。全員がクエストを受注すると、全員でおつかいクエストを行うこととなった。

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