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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第6話:食欲旺盛の私はクエストを受けたい。

獣狩りの夜。

あと新キャラ出ます

「お金が足りません」


 むぅ……。


「アザレア、武器ってこんなに高いの?」

「基本はクエストをこなして、お金を手に入れてから買うのが一般的だそうです」

「そっかー……」


 ひどく間抜けな声を出しながら、武器屋の前に佇む二人。

 この初心者の槍と盾から卒業しようと思って、武器屋を訪ねたのだが、こんなにも高いものだとは思わなかった。

 クエストか。そういえばどうやって受けるのかすら分からないけど、その辺アザレアなら何か知ってるだろうか? 聞いてみたところ答えはあっさり出てきた。


「クエストステーションという場所があり、そこで大抵のクエストは受けられます」


 地図を開いて、件のクエストステーションを探すと、意外とすぐに見つかった。大通りを抜けて、ちょっとした広場になっているところだからだろう。

 私たちは目的地へと向かって、歩き始めた。流石に大通りを通るからだろうけど、アクセサリーとか、武器防具。それに加えて野菜やお肉も売っている。これ全部食べられるのかな?


「あれって食べられるの?」

「お金を払って手に入れれば可能です。効果はHP回復やSP回復など、様々です」

「へー。あ、串焼きだ! こっちはりんご飴!」


 イメージとしては神社のお祭に近いだろう。みんなが盛り上げるために屋台を出して、通りすがる人は匂いと物欲に誘われて商品を購入する。何というギブアンドテイク。私もなんか買いたいけど、今からお金を稼ぎに行くんだから、手持ちを削ってはいけない。いけないと思いつつも、煮物に釣られてしまう。


「いらっしゃい! ここは熊肉屋だよ!」

「熊肉……って美味しいの?」

「少量でも旨味が強いそうです。ちゃんと調理すれば、獣臭さも消えるので日本でも食べられることがあるそうです」

「知らなかった……」


 意外と日本ってそういうところ雑食だよね。こう、チャレンジ精神旺盛と言いますか。虫料理とかあるらしいけど、私はあれ、流石に無理だろうなぁ。


「ちなみに汁ものにすると、さらに美味しくなるとか」

「ホント?!」


 今はまだ春先とは言え、やっぱり寒い時は寒い。そんなときに温かい熊肉のお味噌汁とか食べたら格別なんだろうなぁ……。食べたくなってきた。


「ねぇ。アザレアって熊肉料理できる?」

「……え、えぇ。何を考えているかは分かりませんが、可能です」

「よし! 熊を狩りに行こう! おじさん、これアイデア料金!」

「まいどぉ!」


 景気よくお金を叩きつけ、意気揚々とクエストステーションへと向かっていく。気分はハンターだ。


「レアネラ様! 本当に行くんですか?」

「もちろん! 日本人は食にうるさいんだよ」

「データでは聞き及んでいますが……ではないです! この世界の熊は強いのです!」

「まぁなんとかなるでしょ! レッツゴー!」


 別に聞いてないわけじゃないんだよ? ただ、今の私は何故だか熊肉のお味噌汁が食べたくてしょうがないのだ。まるで何かに取り憑かれたように。やっぱり人間、食が絡むとダメみたいですね。


 アザレアの制止を聞かないまま、クエストステーションのドアを開く。

 中には老若男女のプレイヤーがお酒を飲んだり、雑談をしたりと、各々のことをして過ごしているようだ。

 私はアザレアと一緒にクエストボードへ一直線に歩いていくが、なんだか周りからは妙な視線を向けられている気がする。気のせいかな?

 アザレアの様子は、なんだか落ち着かないといった様子だった。まぁそれもそうか。だって見知らぬところでこんな注目を浴びてればそうなる。


 まぁ、後から聞いた話だと、私たちへの視線はそういったものではなかったらしいんだけど。


 今の私たちにはそんなこと知ったこっちゃない。

 クエストボードに着くと、様々なクエストがウィンドウに浮かび上がってくる。薬草の運搬クエストに、卵の輸送。イノシシ退治にー……。熊肉クエストはどこだろう?


「アザレア、熊のクエストなさそうなんだけど」

「そりゃ熊のクエストは割と難易度高いからな!」


 聞き慣れない男性の声の方に振り向くと、身長190cmはあるであろう巨体が目の前に……


「アザレア、こんな格好になっちゃって……」

「私はここです」


 知ってた。流石に知ってました。

 男性の横からちらりと出てきて、こっちを見る彼女。それはそれで可愛いんだけど、そうじゃないと思う。


「えっと、どなたでしょうか?」

「あー、まだ名乗ってなかったな! 俺はアレクっていう蛮族だ。よろしくな!」

「あ、はい」


 手を差し出されたので、反射的に掴んでしまったがいいのだろうか。この人怖い人じゃないよね?


「あの、お金とかないです……」

「別に取って食おうと思ってるわけじゃないって。見たところ初心者だったから、アドバイスをしようと思ってな」

「いい人ですか?!」


 キラキラとした目が鬱陶しいと言わんばかりに、距離を取ろうとするアレクさん。うざかったかな。流石に失敬した。


「気を取り直して、初心者が熊討伐クエストって言っても、多分ないと思うぞ」

「そうなんですか?」


 一応受けられなくもない、ということを最初に置くと、彼は話を始めた。

 熊の生態は諸説あるけど、この世界の奴らは獰猛そのもの。人を見るなり、走って追いかけ、その発達した腕を容赦なく振り抜き、プレイヤーたちを戦闘不能にする。単純な行動パターンではあるが、それ故に初心者が倒すには相応の装備や武器が必要らしい。


「それでもやるってならオススメの狩場は紹介するが……」

「お願いします! 熊肉のためなんです!」

「熊肉って……。まぁいいか、今から地図とクエストを渡すから、そこならイケるだろ」

「ありがとうございます!」


 元気な笑顔でお礼をすると、受注の手続きを開始する。やっぱりここでもよく分からないので、アレクさんとアザレアに手ほどきを受ける。


「ホント何から何までありがとうございました! お礼は熊肉でいいですか?」

「じゃあそれで手を打つか。今まで熊肉を食べようと思ったことはないしな」

「よーし! 頑張るぞー!」


 両手を上に上げてガッツポーズ! さーて、待ってろ熊肉。今から美味しく調理してやる!

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