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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第3章 あの子の好きが分かるまで
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第53話:特訓する私は作戦を練りたい。

「遅い遅い!」

「ツツジ、速すぎ!」


 デートから帰ってきたその足でゲームにログインすると、私はツツジと特訓を始めた。というものの、やっぱりツツジは素早い。ヒットアンドアウェイの動きが染み付いているのか、私が攻撃しようとした途端にその気を察されて逃げ帰ってしまう。


「やっぱりツツジのスピードにはついていけないや」

「私、スピーダーだからねぇ。伊達にステ振り敏捷力に振ってないよ」


 このゲームにもステータス振りがある。

 最初のステータスこそランダムで生成されるが、その後は自分で自由自在にステータスを振ることもできる。一応振り直しもできるらしいけど、そこは数少ない課金要素で補われている。

 私は基本防御特化。あとはHPに振るなり、素早さに振るなりしている。もちろん攻撃力にもね。

 ただ、あまりにも【将軍殺し】に頼り切ってるので、割と振らなくても生きていけたりする。


 ツツジは素早さ、敏捷力にかなり振っているらしい。

 それ以上の速度が出るゴエモンも恐らくその系統だ。ツツジでさえ追いつけないのだから、ゴエモンはそれ以上だ。私の攻撃が空振りに終わることは間違いない。


「うーん、どうしたらいいんだろ」

「まぁ、妥当なところはスキを突くって感じかな」

「スキなんてあるかな」

「例えば相手が予想外の行動に出たときとかは作れるよ。こんな感じに」


 というと、即座に短刀を首に突きつけて舌を出す。

 要領は分かったけど、その行動はちょっと怖いから今後やめていただきたい。


「奇襲ってこと?」

「そ。私なんかは特にだけど、相手の動きをよく見る。それとスキルの動作も頭に入れておいて、その動きをそのまま自分がどう動けばいいのか即座に考える。ちょっと《連槍》で攻撃してみて」

「え、いいの?」

「全部避けれるから」

「じゃあ……《連槍》!」


 槍を構えて5連続の突きを高速で繰り出す。常人なら普通にヒットしてHPが減っていくことだろう。だが、彼女は違った。

 1発目を左に回避すると、続く2発目がそのまま右に通過。3発目は左に攻撃するけど、それを予測していたように右に避けた。これを5回目まで繰り返していると、ツツジが言ったとおり、彼女は全ての攻撃を避けきった。


「おぉ、すご」

「ゴエモンもこれぐらいはできると思うよ」

「でも奇襲だったら、これが通るかもしれないってこと?」

「うん。思考に負荷がかかってる状態で、いつものことをしようとしても、ぎこちなくなっちゃう。ほら、息を吸って吐くことを意識してやると、ちょっと息苦しくなるでしょ? それと同じ」

「わかりやすい」

「どーも」


 だから奇襲ってことか。ならどういうことが奇襲なんだろう。相手の予測してないことを繰り出すって言っても、そのときにしか出てこないでしょ、そんな発想。


「例えばスキルだけど、あれって自身って書いてあったら、自分の身体のどこからでも出せるって知ってた?」

「あー、なんとなく?」

「ノイヤーのときにやってたもんね。あの試合見たけど、土壇場であの発想をするのはすごいよ」

「えへへ、ありがと」

「昔、稼働当初の話だけど、武器を失った剣士が《スラッシュ》のスキルを使おうとしたの。斬撃攻撃を強化するスキルね」

「武器失ってどうやってやるのさ。チョップとか?」


 適当に上から下に腕を振り下ろしたけど、そんなんでスキルの判定になるんだろうか。


「それ正解ね。やけくそ気味に手刀でスキルを使ったら、それでモンスターを倒せたんだって。だからそれくらいスキルの使い方は、予想しているよりも幅広いってこと。どういうプログラム組んでるか、全然分かんないんだけどね」

「割と画期的だよね。作った人天才だよ」

「私もそう思う。そんなわけで、スキルを使って意表を突いて、本命を当てる。これが基本だね」


 なるほど。確かにノイヤーのときにもそれで勝ったようなもんだ。でも心配なことが1つ。


「どうやってひらめくの?」

「えー、その場のノリ?」


 それはマジで仰ってますか? その場のノリでどうにかできるならこれまでの戦い全部勝ってるはずだよ。少なくともヴァレストのときもワンチャン私が勝ってたと思うし。


「戦いはノリがいい方が勝つって赤い鬼も言ってたから、多分いけるいける」

「そんな適当でいいのかなぁ」

「よくはないね。だから基本はきっちりやる。さ、続きやるよ!」

「うえーい」


 そうして幾度となくヒットアンドアウェイの戦い方を伝授してもらうと、時間もいい頃合いになっていた。


「私はそろそろ宿題やんなきゃかなー」

「それ1週間前に出たやつじゃない?」

「ギリギリにならないとギアが入らないからさ」

「あー、そういうタイプ」

「それじゃ、また明日ね!」

「うん! また明日ー」


 ツツジはメニュー画面を開くと、ログアウトボタンを押して、そのままデータのエフェクトとなって消えていった。

 さてと。私もやらなきゃいけないことがもう1つあるんだった。

 私は武器をしまうと、その足をゴーストタウンの方に向けて歩き始めた。


 ◇


「で、うちに相談っていうのは?」

「ごめんね、何度も」

「いいさ。もう日課みたいなもんだろう」


 湯呑みに紅茶が注がれ、私のもとに提供される。チグハグ感がすごいけど、面倒くさがりのビターらしいと思ったら、なんか納得してしまった。


「えっとね、アイテムを1つ作ってほしくて」

「素材さえ持ってきてくれればいくらでも作るぞ。どんなものだ?」

「対決用に、けむり玉を1つ」

「撹乱目的か」

「うん。ツツジと特訓してみて思ったんだ。私には速度が致命的なまでに足りないって」


 これはゴエモンと戦ったときにも感じたけど、本来タンクである騎士が速度で叶う訳がない。攻撃が当たらないし、受け続けてしまえばその内にゲームオーバーになる。ならどうするか。相手の意表を突くしかない。ツツジに言われたことだ。


「これがあれば速度で完全に負けても、スキを作れる。スキが作れたら、奥義を放ってゲームセット。簡単でしょ?」

「それはいいんだが、アイテムありの設定にするのか? 決闘モードじゃアイテムなしにもできるんだぞ」

「みたいだね。回復アイテムはどっちにしろ使えないみたいだけど」


 事前にノイヤーと決闘モードの練習をしたことがあったけど、その時に回復アイテムが使えないことは把握している。その上で、他のアイテムは使えるか否かは対戦相手の同意で決まる。


「なんとなく、あの人はそれを許可すると思うんだ」

「意外だな。キミにはあいつがそう見えたのか?」

「ううん、分かんない。でもなんとなく、そう感じただけ」


 ふむ、とビターは腕を組んでなにか考え事をする。

 ゴエモンとは大して長い間付き合ってるわけじゃないにも関わらず、不思議と親近感というか、妙な既視感を感じるんだ。何故かは分からない。分からないけど、あの人はそういうハンデをもたらしてから、対等に戦い、上から潰すようなことをしそうな気がするんだ。


「まぁいいだろう。使えなかったら、このアイテムが無駄になるだけだしな」

「ありがと!」

「ただし、素材は持ってきてくれよ」

「分かってるって! どんなもの?」

「それはなぁ……」


 この後、軽く素材を集めると、その日は0時を過ぎており、すぐにログアウトすることとなった。

 残り6日。やれることはやらなきゃ……。

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