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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第1章 ぼっちの私がギルドを作るまで
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第5話:拾った私はNPCと友達になりたい。

 翌日。私がログインすると、待ってましたと言わんばかりに、アザレアがベッドの上で正座待機していた。このゲームの特徴として、最終ログアウト地点からログインするようになっているらしい。


「おはようございます」

「うん、おはよ」


 軽く挨拶を交わすと、早速何をしようかと考える。

 昨日はアザレアを拾ってから、宿屋に行って身体を洗ったんだったけな。その御蔭で今日は割と見れたものになっている。やっぱり女の子は可愛くなければ。


「今日はどうしよっかなぁ。やっぱ武器とか防具を揃えるのもいいし、クエストに出かけるのもいいし、うーん……」


 やることはたくさんある。これでもログイン前にちょこっと調べて、初心者のおすすめ狩場とか武具などをメモってきたところ。問題はそのメモが現実の紙であり、データとして持っていけなかったことだろうか。兎にも角にも!


「どうしたらいいかな、アザレア?」


 困ったらとりあえずIPC辺りに聞いておけば問題ないだろうという、浅はかな考えに至る。やっぱ持つべきものはNPCかなー!


「分かりません」

「……なんですと?」

「私はそのような情報を持ち合わせておりません」


 お口が半開きにあんぐり。


「う、嘘だー! 実はなんか攻略の情報とか」

「何も持ち合わせておりません。IPCは基本、初心者に何かを教える、ということはしませんので」


 あ。そうだったー!

 IPCって基本的には国家予算のべらぼうに高いお金を出さないといけないから、買えるとしても、上級者レベル。初心者の手が届かないようなお高い女なのすっかり忘れてた!


「ちなみにアザレアは、どんな情報をお持ちで?」

「紅茶の入れ方、礼儀作法、お菓子の作り方など、家事全般は習得済みです」

「本物のメイドさんかと」

「人工メイドですから」


 そうでした。この子は本当にメイドさんだった。

 今度お菓子作って欲しいなぁ。この『エクシード・AIランド』でも食べ物という概念が存在するらしいけど、美味しいのかな? 味覚とか実装されてたらとても嬉しいことこの上ない。


「ね! 今度アップルパイ作ってよ! 素材は私が持ってくるから!」

「承知しました。材料が揃い次第調理いたします」

「…………」


 やっぱ硬い。ガッチガチだ。

 昨日から思っていたけど、私はアザレアを拾ったプレイヤーであって、彼女のご主人さまなどではない。だからその態度をもうちょっと柔らかくしてほしいんだけどなぁ。

 石のように硬い無表情のアザレアをじっと見つめると、視線に気づいたのか、私に声がかかる。


「……私、何か失敗しましたか?」

「え?」

「謝ります。ですから暴力はしないでください」


 アザレアの表情が突然こわばると、上半身を九十°まで倒して頭を下げる。


「い、いやいやいや! なんも悪いことなんてしてないから! 頭上げてってばー!」

「ですがレアネラ様……」

「ちょっと疑問に思っただけなの! だから頭を上げてよ。ほら」


 両肩を持って強引に姿勢を正す。先ほどまでの姿勢に戻ったけど、どうにも釈然としない様な表情を浮かべている。まぁ、さっきの言葉の意味、知りたいよねー。


「あのね。私、そんなに高い身分でもないし、ただのプレイヤーなの。なんていうのかな、そんなに畏まられても、対応に困るというか……」


 言うなら今なんじゃないだろうか。私と友達として接してほしい、と。

 相手は人工知能だし、それが友達かは分からないけど、でも……。


 ――もう、一人ぼっちの生活には戻りたくないと思ってる自分がいる。


 出会ってたかが1日未満。接したのだって、12時間も経ってない気がする。

 それでも楽しいと思える自分がいる。一緒にいたいと思ってる私がいる。

 友達の作り方なんてよく知らないけど、多分こういう気持ちなんだろうなってなんとなく分かる気がするんだ。


「だから、もうちょっと……心の隣人みたいにしてほしいかな」


 友達、という言葉が気恥ずかしくて、つい曖昧な表現に逃げる。

 でも、最大限の笑顔と優しい声色なら、伝わってくれるといいな。


「心の、隣人……」

「そう。私はご主人さまではないし。だったら心の隣人! どうかな?」

「なんだか、胸の奥がざわついています。これは一体なんでしょうか?」

「多分、嬉しいって感情じゃないかな!」

「これが、嬉しい……」


 胸をおさえて、初めて得たであろう感情を噛みしめるように目を閉じる。

 そう。多分嬉しいって感情なんだ。だって、私の胸にも渦巻いているものだから。


 やや気まずくなって、それはそれとして! と二人の沈黙に口を挟む。


「まずは口調からだよねー。試しにタメ口してみて?」

「かしこまりま……った」


 アザレアが咄嗟に私との目線を外す。いつものノリで言ったのだろうけど、命令と背いたことをして恥ずかしいのだろうか。かわいい。


「あはは。じゃあお礼を言う時は?」

「ありがとうござ……る」

「ぶっふっ!」


 ござるって! ござるって何さそれは! 侍か忍者かっての!


「あははは! もう変なこと言わないでよー!」

「そんなに、変でしたか?」

「だってござるだよ、ござる! ホントウケる!」

「……何故でしょう。ものすごく失礼なように聞こえます」

「あはは! そういう感じだよ!」


 アザレアの表情が疑問で満ち溢れる。

 もう、これは友達のことをいっぱい教えてあげないといけなさそうかな。まぁ、私はぼっちなんだけど。


「アザレア。心のままを信じてみて。そしたら心の隣人のこと、分かると思うから」

「心のままを……でしたら、一つ言いたいことがあります」

「ん? なにー?」

「やっぱりレアネラ様の発言は失礼なのでは?」


 やっぱり耐えきれなくて、お腹を抱えて笑ってしまった。

 そうだね、うん。失礼だわホント! あはは!

 ダメだ! もっとまともなことを言わなきゃ。

 目の下の涙を拭いて、まともそうな顔をしなきゃ。


「そんな感じ! 二人でもっといろんなこと経験しよ! 私はまだ二日目なんだし」

「……そうですね。レアネラ様、これからよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、だよ!」


 彼女の手を握って、ニッコリと笑う。

 アザレアはまだ笑い返してはくれないけど、いつか二人で笑えるような関係になりたい。今度は心の隣人なんて曖昧な誤魔化し方じゃなくて、友達、って言えるように。

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