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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第3章 あの子の好きが分かるまで
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第46話:戻った私はそろそろ武器が買いたい。

「戻ってくるのは楽なんだよなー」


 旅の帰りは来た道を戻る、なんてことはしない。

 ビターが【旅の錬金術師】のスキルである《拠点移動》を使うと、ボスエリアからアトリエまでの道ができる。それを経由してそのままサベージタウンまで徒歩数分。

 あんなに歩いたはずなのに、帰りはすぐって、なんか旅という概念への冒涜を感じざるを得ない。


「うちはこのままアイテムを作り始めるとしよう。正直、ワクワクが止まらないんだ」

「そんな顔してるもんね」


 確かにすっごい興奮してる顔になってる。よっぽどあのレシピのスクロールが革命だったんだろう。


 そんなこんなで数日は経過したことだろう。私もただ黙って何もしない、というのは性に合わない。ビターの依頼を受けながら、自分にできることはないかと探していた。


「ってなんで私なのさ」

「いやぁ、なんか戦闘の相談するんだったらツツジかなーって」

「頼られて嬉しいけど、レアは一つ当たり前のことを忘れてるよ」


 当たり前のこと? 称号の関係上、あんまりレベルを上げたくないんだけど、それ以外にやることっていったい……?


「武器、新調した?」

「ッッッッッ!」


 武器……ッ! そういえば、私の武器って……。


「なに天命を受けた顔してるの。当たり前のことだよ、これ」

「ちなみにレベル17で初心者の槍を持っているのは……」

「……マジで?」

「マジっす」

「マジかー」


 ツツジが可愛そうなものを見る目でこっちを見ている。やめてくれ、称号のせいで割と格上の敵でもなんとかなっちゃうんだから。


「レア、ゲームの経験は?」

「そろそろ2ヶ月になるかなーって」


 だからその信じられなさそうな顔で見るのをやめて。確かに初心者の槍を使い続けるっていう称号である【ビギナークラス】ってのは手に入れてたけど。いや、それが目的だし!


「レアのそういうところ、ほんっと危なっかしいわ」

「ちゃんと見ててね!」

「……嫌いになりそう」

「やめてー! まだ友達やめたくないー!」


 この抜けてる性格のせいで友達やめさせられるのだけは勘弁願いたいです!


「ならアレクのお店でも行って武器買ってきなよ」

「う、うん……」

「へこんでる?」

「へこんでない……」

「嘘つき」


 心底機嫌悪そうな声を出してしまった。私だってもうちょっと賢い人間になりたいんだよ? なりたいんだけど、よく料理の材料に必要な野菜を買い忘れたりしてしまうんだ。へこむことは仕方ないの!


「よしよし、ごめんね」

「……頭なでたって機嫌治らないもん」

「その割には顔はニヤけてるね」

「……ッ! そ、そっちこそ!」


 私も恥ずかしくて、口角が上に向いてるとは思ってるけど、ツツジこそ、めっちゃ顔ニヤけてるし。気持ち悪いくらいだよ。


「えへへー、じゃあいってらっしゃい!」


 背中を押されて、お店へ送り出してくれる。まぁそんなツツジだからこそ嬉しいんだけど、なんだろ、この誤魔化されて負けた気分は。


 まぁいいや。今は槍を買ってくるんだ。

 歩いて、アレクさんのお店にたどり着くとドアを叩く。


「なんだ? ってレアネラか。盾か?」

「違いますー! 今度は武器を買いに来たの」

「おお、やっと武器屋らしいことできるぜ! さ、入った入った!」


 アレクさんがお出迎えしてくれると、早速並んでいる武器の中から槍を探す。

 予算は結構あるし、高そうな槍も買えるんだけど、どれがいいかイマイチ分かんないなぁ。


「威力に重さ、見た目に耐久値。どれがいいか全くわからない……」

「レアネラは今までどんな武器を使ってきたんだ?」

「初心者の槍を少々」

「マジか」


 マジです大マジです。今日2度目ですその反応。やめてくださいその残念なものを見る顔。


「まぁ真面目な話、手入れを頻繁にするなら耐久値は気にしなくていいな。あと威力はー、変なスキルがあるからそれでいいか。なら重さだな」

「重さって、どんなのがあるんですか?」

「威力は高いが重いヘビークラス。どっちも平均値とってるのがミドルクラス。逆に威力は低いけど、その分軽いってのがスモールクラスって感じか」


 色々あるんだなー。あ、この槍かわいい。花弁の形してるんだ。


「そいつは見た目武器だな。正直性能は良くない」

「店の店員がそんな事言っていいの?」

「店員じゃない。店主だ」

「どっちでもいいよ! それよりオススメのスモールクラスは?」


 そういうと、アレクさんは該当クラスの武器エリアまで誘導してくれた。

 一つ武器を試しに持ってみるけど、確かに軽い。身軽にもほどがある。後で調べてみたら初心者の槍はミドルクラスでそこそこ重いらしい。そんな違いも出るよね。


「んー、こっちかな。でもこっち?」

「はっは。こうやって武器を試行錯誤する感じを見るのはたまらんな」

「女の子をそんな目で見るのは犯罪ですよ」

「通報はやめてくれ。まだBANはされたくない」


 そういえば私は1回センシティブ機能に引っかかったことあったっけ。あれはホントに肝が冷えたな。


「これとか良さそう。えーっと《雀蜂》かな、名前」

「それを選ぶとはいいセンスしてるな」

「すごいの?」

「店売りの中でも割と性能が高い。そのくせ軽いから人気の一品だよ」


 ほほー、そんなにすごいんだ。

 試しに持ってみると、確かに軽い。傘持ってる気分かな。槍の先端はやや細くて、折れてしまいそうに見えるけど、そこは雀蜂にちなんでいるのだろう。


「よし、これにする!」

「まいど!」


 購入! 結構出費は痛いけど、やっぱり武器ならいいのを買わないとね。


「ここで装備していくかい?」

「それゲームのネタでしょ。古くないです?」

「古いとか言うな。これが言いたかったんだ」


 そういうの気にしちゃうタイプの武器屋か。なんかかわいい。


「ありがとね!」

「あ、ちょっと待った」


 ん? とお店を出ていこうとする私の足を止めるアレクさん。何かあったんだろうか。


「ゴエモンっていうプレイヤーには気をつけろよ」

「ごえもん? ってなにそれ」


 聞いたことないな。そもそも有名なプレイヤーなんて誰も知らないんだけどさ。ノイヤーとビターぐらいかな。


「なんでも辻デュエルまがいのことをしてるんだと。PKだ」

「PKって、プレイヤーキラーのこと? 怖いなぁ。でもこのゲームデスペナほぼないでしょ?」


 それは熊と戦ったときに嫌というほど知っている。アイテムロストもなければ、経験値やマネーのロストもない。リスポーン地点に戻されるけど、その辺は大したことないし、PKする理由がないと思う。


「なんでも『大切なもの』を賭けて決闘するんだとさ。アザレアの件、そいつにバレないようにしないとな」

「大切なもの……。うん、そうだね」


 撤回しよう。なんて物騒なプレイヤーキラーなんだ。怖すぎる。

 もしもアザレアがキルされでもしたら、と考えるだけで恐ろしすぎる。とりあえず今は気をつけることだけしよう。ゴエモン、絶対に会いたくないな。

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