第45話:勝ち取った私たちは改めてアイテムを依頼したい。
今回は少し短めです
勝利の余韻に浸っているのもいいが、そういえばと、放置していた石碑を調べなきゃいけない。ボスの討伐報酬みたいなところあるのに、全然気にしてなかった。
「ビター、この石碑なんて読むの?」
「あー、そんなのあったな。待ってろ、今行く」
てってこてってこと、小さい身体を走らせて、私のいる石碑の方にやってくる。みんなも気になったのか歩いてこちらにやってきた。
「結局なんなのそれ」
「さぁな。今から調べる」
石碑を読んでも、正直日本語じゃないからさっぱりなんだけど、ビターは果たして読めるんだろうか。
「これ古代文字か。《翻訳》」
そんなスキルあるの?! 私も英語の勉強とかせずにそのスキル使って期末テストスルーしたいんだけどなぁ。はぁ、そろそろなんだよなぁ。
「えー、っと……」
「なんて読むの?」
「まぁ待て」
石碑の文字を指でなぞりながら翻訳していくと、なんか専門家っぽくて面白い。見た目はちゃんとちっちゃい錬金術師だから、様になってるのがなんか羨ましいなぁ。
そうこうしていると、読み終わったらしくちょっと興奮したように私に語りかけてくる。
「すごいぞ!」
「何が?」
「これはな! おっと、これを説明する前にまず石碑の説明をしないとな」
「珍しく興奮しておりますわね。気持ち悪いですわ」
「今のうちに何言っても無駄だ! 噛み砕いて説明するとこんな感じだ」
後世の錬金術師へ。
私はもうすぐこの世を去る。故にこのスクロールを後世に託そうと思う。
だが悪しき者たちに利用されるわけにはいかない。
れっきとした力をつけた錬金術師に託すため、守護者を用意した。
この守護者を倒せるものがいれば、良き錬金術師だろう。
どうかこの力が、良き者に渡るように。
ざっくりいうと、あのゴーレムを倒したらこのスクロールを使えるよってことだろう。
スクロールって、この本を両開きにしたぐらいの台座だろうか。いつの間にか本のような物が置かれている。これがスクロールってやつなんだろうか。
やや興奮気味にその本に触れると、ウィンドウがビターの前に表示される。
「見ろ! レシピの山だ!」
「レシピ? ……レシピッ?!」
「そうだ! レシピの検索エンジンだ!」
レシピってアイテムのレシピだろう。基本的にレシピを調べる手段がないはずだったのに、それを検索できる物が今目の前にあるって、すごい!
他の4人もちょっと興奮してるみたい。私もしてる。
「じゃあ主従関係を断ち切るアイテムも?!」
「分からないがあるかもしれないぞ! 待ってろ、調べてやる!」
「分からなくもないけど、やっぱ気持ち悪いですわね」
「うるさい黙れ!」
キーボードにカタカタと入力すると、目の前にウィンドウがいくつも出てくる。かき分けるようにビターが目的のアイテムを探し出すと、その説明をよく読んでいるみたい。
「あるみたいだ。だが……」
「だけど?」
上がっていたテンションが徐々に下がっていくのを感じる。なに、その怖い感じは。
「主人のデータが必要らしい」
「ご主人さまの」
「データ……?」
アザレアと顔を見合わせる。
「《犬猿のハサミ》ってのがある。だが、そのためにはデータが必要で。それが主人の何らかのデータが必要らしい。髪の毛とか装備とかそういうのだな」
「アザレア……」
彼女は首を横に振る。持ってなさそうだ。
「そっか……」
「やはり、一度会わなければいけないみたいですね」
「流石にゲームの仕様上、勝手に断ち切るわけにはいかないんだろうな」
なんとなくそんな気はしてたけど、やっぱりアザレアのご主人さまに会わなければいけないらしい。一生懸命逃げてきたのに、そんなことって。
肩を落とす私たちに声をかけたのは、ツツジだった。
「アザレアは、どうしたの?」
「私、ですか?」
「うん。あなたが何がしたいか、誰と一緒にいたいか。そのためにどうしたいか。考えてみてほしいの」
「私が、どうしたいか……」
前に語ったことがある話な気がする。自由になったから、これからどうしたいかって。あの時、アザレアは答えられなかったけど、今はきっと違う気がする。
「私はレアネラさんと一緒にいたいです。その気持ちは変わりません」
「じゃあ、どうしたいか。分かるよね」
「はい」
アザレアが一歩下がると、私たちに向かって頭を下げる。
「お願いします。私たちに協力してください。私はレアネラさんと一緒にいたいのです」
「アザレア……」
自分から頭を下げることはなかったと思う。あったとしても謝罪の意味。
でも今は違う。今は、アザレアのワガママであり、ただのお願い。自分がどうありたいか考えた上での、未来を手繰り寄せるための行為。
そんなの、答えは決まってる。
「当たり前だろ、そんなの!」
「協力するに決まっておりますわ!」
「最初からそのつもりだ。うちを侮るな」
「……だってさ」
頭を上げたアザレアの手を取る。当人は、なんだか目線をあっちこっち行ったりして、ちょっとだけ落ち着かないような感じだ。
「この胸からこみ上げてくる感情は、いったいなんなんでしょう……」
「多分感謝だよ。ありがとうって気持ち!」
「感謝、ですか……。皆さま、ありがとうございます!」
冬の太陽のように優しい笑みを浮かべて、みんなに感謝を伝える。こっちまで嬉しくなっちゃって、笑顔になっちゃうな。
「レア、頑張ってね……」
「うん!」
みんなで向き合うことを決めた時、すごく嬉しかった。みんなに打ち明けて、みんなと結託して、アザレアと一緒に入れるために努力する。それが嬉しかった。
でも今のツツジの顔だけは、ちょっとだけ寂しさを感じていてる顔な気がした。




