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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第3章 あの子の好きが分かるまで
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第43話:扉の前の私たちはボスに挑みたい。

「やってきたね」

「あぁ。ここがボスの部屋だ」


 大きな扉の前に朽ちていったプレイヤーの残留思念のようなものが漂っている気がする。もちろん気がするだけで、特にそんなシステムはないんだけど、そう思わせる重々しい雰囲気が私の身を包んでいた。


「レアはボス戦、ドラゴン以来だっけ」

「うん、まぁ私あんましバトルしないしね」

「その方がいいだろうな。レアネラの場合レベルが上がれば上がるほど死にスキルになる物があるからな」

「それってどういう」

「今はそれ、後ででいいかな?」


 ちょっと困ったような顔を見せて、引き下がらせる。

 流石に【将軍殺し】の話はあまりしたくないし。ツツジにならいいとは思いたいけど、どこから情報が漏れるか分かんないし。


「とにかく今は、この目の前の敵からってことだろ?」

「そうですわね。最初にタゲ集中を頼みましたわよ」

「分かってるって。このメンバーなら多分イケると思うけど!」

「そうであってほしいけどな……。ノイヤー、ギルメンにバフをかけてくれ」

「言われなくても終わってますわ」


 ノイヤーがバフをかけ終わると、一緒にいるアザレアがちょっとだけソワソワしたように私の方へ口を出す。


「私はキャンプサイトまで戻っていますね」

「ごめんね、一人にさせちゃって」

「いえ、大丈夫です」


 それでも何か言いたげな顔をしている。私もちょっと心配になって大丈夫かと効いてみる。


「私は大丈夫なんですが、レアネラさんたちにもしものことがあればと」

「アザレア……」

「ふふっ、大丈夫だよ。こう見えても私強いし!」

「俺も、並大抵の攻撃じゃ効かないさ」

「そういうことですわ。大人しく帰って勝利のポトフでも作るといいですわ」


 ご武運を。そう私たちを鼓舞する笑みを浮かべて、彼女は去っていった。


「さーて、アザレアに勝利を持ち帰りますか!」

「あまり油断はしないようにな」

「分かってるよ!」


 ビターの懸念をよそに私たちは扉を開いて、ボスエリアと思しきバトルフィールドに足を踏み入れる。

 周りは苔むした壁とつると木の枝が絡まって、遺跡の最終エリアだと思わせる風貌をしている。

 中心には本を両開きにしたぐらいの大きさの台座が置かれており、その奥には石碑が置かれていた。


「ビター、これなんて読むか分かる?」

「警戒して待ってろ」


 ビターが読むために近づく。よく見るために台座に手を置くと、それは起動する。


 それは石の巨人。まるで石碑を読むことを拒むように起動したそれは、周辺の岩や石たちを巻き込んでどんどん成長していく。ある程度大きくなると、体長三メートルほどの巨体がこちらに向かって歩きはじめる。戦闘開始だ。


「《視線集中》! 後は頼んだ!」

「了解した!」「おっけい!」


 まずは様子見。アレクさんとツツジが接近すると同時に、石の巨人、ゴーレムは耳を劈くほどの軋みを上げる。


「なにこれっ!」

「分からない、だが警戒しろ!」


 軋みを上げ終わると、攻撃のフェイズに入る。純粋なゴーレムの拳が行く方向は……。


「わたくし?!」

「なんで、タゲ集中取ったはずだよ?!」

「くっ! 避けろ、ノイヤー!」


 反応が遅れたノイヤーの足が動き始める。

 確実に捉えたと思われたゴーレムの拳はドレスのスカートを巻き込んで、壁へと打ち付ける。


「ノイヤー!」

「か、間一髪ですわ……」


 当たったのはスカート。身体ではないにしろ、ダメージは相当だと思われる。

 それにしてもタゲ集中は取ったはずなのに、効いてない? いや、あれは自分にかかるバフのようなもので、相手にかけるようなものじゃない。ならなんで。


「こいつ、バフ効果全部打ち消してるぞ! 各自ステータスを確認してくれ!」


 実際に確認してみると、ノイヤーがかけてくれたバフが全部消えている。ついでにタゲ集中のバフも全部だ。


「さっきの咆哮、凍てつく波動なの?! そんなん反則じゃん!」


 そんな事言いながらゴーレムの攻撃を避けながら、掠め斬りするツツジだけど、全然ダメージ入ってない。流石にレイドボスだけあって、かなり硬いみたいだ。


「ノイヤー、レアネラ! バフを」

「無茶言わないでくださいまし! さっきのリキャストがまだ終わってませんわ!」

「こっちも! なんとかする!」


 タゲ集中がなければ、持ち前の機動力でサポートするしかない。

 次に攻撃が来そうなのは、ビターだ。武器を持って走ると、ビターの前に立ち、ゴーレムの拳を受け止める。


「おっ……もっ!」


 強力な一撃が私の盾を弾く。後方に吹き飛ばされた私はビターを巻き込んで壁に叩きつけられる。


「くっ! 良くもレアを! 《スラッシュ》!」


 ツツジが注意を引くためにスキルを放つが、まっすぐ私たちの方に石を飛ばしてくる。これは、まずいっ!


「《アイテム:岩盤城壁》!」


 岩盤を地面から生み出すと、ゴーレムの攻撃を受け止める。そのスキに私たちが逃げると、岩盤が壊れて、私たちがいた場所が石の破片に襲われる。


「こっわ」

「やばいな、攻撃力が半端じゃない」

「そのくせ防御力もガッチガチだし」

「とりあえず防御力を削ぐぞ! 《アーマーブレイク》!」


 アレクさんのスキルがクリーンヒットして、防御力が下がる。よし、これならこっちも攻撃を仕掛ける!


「《アイスフォール》!」

「《反逆の刃》!」


 レベル差はきっと十分だろう。氷のつららと私の槍も直撃すると、ゴーレムの外装が一部剥がれる。


「そこかっ! 《蛮族の一打》!」


 剥がれたところにパワータイプのアレクさんのスキルが穿たれる。HPは上々に削れている。なるほど、防御力は外装によって強くなってるんだ。

 怯んだゴーレムは足で踏ん張ると、遠距離攻撃を仕掛けてくる。対象はツツジだ。


「甘いよ、《超加速》!」

「脇ががら空きだぞ! 《パワースマッシュ》!」


 石の破片はツツジを狙うが、そこには誰もいない。代わりにゴーレムの弱点を狙って、アレクさんがダメージを稼いでいく。そろそろ50%だ。ドラゴンのときみたいに何か来るかもしれない。

 HPが半分を切る。ゴーレムは地面を叩きつけると、外装をパージして、その破片がフィールド全体に広がっていき、私たちを襲う。


「避けきれないっ!」

「ノイヤー!」

「後は任せましたわ」


 最初に被弾したのはノイヤー。元々ダメージを受けていた彼女はそのままデータの破片となり消滅した。


「ダメ元っ! 《マジックシールド》!」


 盾を構えて魔法の盾を呼び出す。すると、一度だけだがシールドと共に対消滅する。もしかしてこれ、魔法攻撃なの?! どう見ても物理じゃん!


「うちもここまでか」

「悪い、俺も無理だ」


 ビターとアレクさんもこの場を退場。この場に残っているのは私とツツジの二人だけだった。ツツジはあのパージ攻撃を自力で避けたみたいだけど、やっぱり疲労は大きいみたい。


「どうする、レア」

「……悔しいけど、この回は捨てる。でも絶対また来てやる」

「その息だよ。さぁ、ギミックをどんどん暴いてやろう!」


 その後はあまり覚えてないけど、25%を切った時の攻撃が猛烈だったと言っておこう。ゴーレムなのに素早いのは反則でしょ。あれはツツジが避けられるとは思うけど、私の盾じゃ耐えられない。タゲを取っても意味がない。

 程なくしてリスポーンすると、4人が暗い顔で待っていた。


「ツツジは?」

「頑張ってくれてるけど、多分もうすぐ戻ってくると思う」

「そうか」


 あんな壮絶な戦いをするとは思ってなかったからか。私も思った以上に疲労が溜まっていたみたいで、ツツジが戻ってくる頃には、ちょっとだけ眠りこけてしまっていたらしい。

 でも、ゲームなんだ。一度っきりじゃないんだ。


「どうする? って、さっきも聞いたっけ」

「うん。みんな、分かってるよね?」


 5人は顔を見合わせると、同じく頷いた。アザレアもその気持ちは一緒らしい。


「うちは諦めが悪い。それにこいつも負けず嫌いだろうからな」

「これに言われるのは釈然としませんが、あんなデカブツ、絶対ぶっ◯して差し上げますわ!」

「俺もゲーマーとしての血がうずいてきたよ。やるか、俺らで」

「うん。絶対倒す!」


 私たちの決意は一緒だった。私たちはみんな、負けず嫌いなんだ!

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