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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第3章 あの子の好きが分かるまで
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第42話:見つけた私たちは遺跡に突貫したい。

「よーーーし! やるぞー!」


 朝の支度をしたら早速エクシード・AIランドにログインする。

 どうやら最初に来たのは私だったらしく、アザレアだけがお出迎えしてくれた。


「おはようございます」

「おはよ。よく寝れた?」

「はい。レアネラさんは?」

「私も寝れたよ。流石に早く来すぎちゃったかなー」


 朝の日差しが木々の隙間から漏れ出して、眩しいような涼しいような。そんな感覚に陥る。森で一晩明かすと言う経験をしたことないから、なんか神秘的で新鮮に見える。


「ねっ! 軽く運動しない? ラジオ体操でも」

「はい、よろこんで」


 おいっちにっさんし。寝ぼけた身体を呼び覚ますように、しっかりとラジオ体操を行っていく。ちなみにボイスはアザレアが声を出している。普段の男性の声とは違う妙な感じだけど、これはこれで好きだ。


「ふあぁ……おはよー」

「おはよ、ツツジ!」

「早くない?」

「なんか目が覚めちゃって」


 後ろの頭を掻きながら、にへら顔でえへへと笑ってみせる。

 なんだろう、遠足の朝みたいな感じだ。楽しみすぎて目が覚めちゃうあれ。


 そんな事を考えていると、続々とギルメンがログインしてくる。だいたい10時ぐらいだろうか。最後のビターが現れたことで、全員揃ったので作戦会議だ。


「遺跡には必ず大型のボスモンスターがいる。そいつを倒せば遺跡攻略、と言った具合だ」

「へー、それだけでいいんだ」

「もちろんそう簡単なことじゃない。ソロじゃまず無理だと思った方がいいな」

「ひえー」


 相談していく中で注意すべき点は二つだった。

 一つは勝手にどこかに行かないこと。団体行動しないと、ソロで複数のモンスターと退治すればだいたい死ぬ、らしい。そのためにリスポーン地点をキャンプサイトに設定しているから、まず問題はないが、合流のために戻らなきゃいけないから、面倒が増える、と。


 でも私が気になったのはもう一つの注意点だった。


「トラップ?」

「そうだ。遺跡にはだいたいトラップが仕掛けられている。先住民が遺跡を守るために作り上げた、と言う設定らしい」

「へー。じゃあインディージョーンズも?」

「多分あるぞ。即死だろうな」


 こわっ! あれって画面映えするからいつもやってるのだと思ってたけど、当たれば即死って、やっぱり凶悪なトラップなんだろうなぁ。


「さて、説明はこんなところだ。何か質問はあるか?」


 みんな首を横に振る。流石にみんなそれなりにゲームをプレイしてるからその辺は大丈夫って感じかな。


「よし、じゃあ行こう!」


 ギルマスの一声で、遺跡の突入が始まった。


 ◇


 中に入ってみると、思ったよりも狭く、一列にならないといけないような状況だ。

 盾役の私が先頭で、後ろからビターやノイヤーの援護が来る、というポジショニングにしている。


「私、ここ苦手かも」

「そうなのか? 俺はツツジの戦い方を見たことないからなんとも言えないが」

「敏捷タイプの芸人だから、ぶっちゃけ狭いところって窮屈で」

「ここで予めギルドメンバーの戦い方を見ておくのも悪くないだろうな。もうじきイベントの告知も出るだろうし」

「だな。俺の戦い方なんて誰も知らないだろ」

「アレクが戦ってるところなんて見たことありませんわね」


 そういえば。ビターはアイテムの投擲と弓矢でのエンチャント攻撃。ノイヤーは完全に魔法特化で、ツツジは多分接近特化タイプなのかな。だとしたらアレクさんの戦い方ってなんだろう。ハンマーを持ってるみたいだけど、アレクさんも近接タイプかな。見てみないと分かんないわ。


「まぁ見てろって。レアネラ、正面四体!」

「はい! 《視線集中》!」


 私がいつものようにターゲット集中のスキルを放つと同時に、ツツジとアレクが前に出る。

 忍者のように素早い動きで敵に接近すると、急所を一刺し。身動きが取れなくなったところを、逆手に持った短刀で二,三斬りつけると、一体目は消滅。

 続く二体目はアレクさん。ここで戦い方を見ておこう。アレクさんがハンマーの射程範囲内まで接近すると、ハンマーを振りかぶり、モンスターを壁に叩きつける。ひしゃげた頭がそのまま地面に落ちると、データとなって消滅。三体目も同じく、地面にハンマーを叩きつけて、中身から爆散。こ、これがアレクさんの戦い方……。


「完全にパワータイプの戦い方ですわね。むごい」

「だ、だね。リアルだったら相当グロ画像だよ。むごい」

「一撃で相手を殲滅するとは、さすがです。ですが、むごい」

「お前ら、ちょっと酷くないか?!」


 四体目を始末すると、そのまま隊列に合流する。

 アレクさん、性格に似合わず相当暴力的な戦い方するなぁ。一番最初に蛮族だって言われた時はピンとこなかったけど、これがその蛮族の戦い方なんだ。むごい。


 しばらくして開けた場所に来ると、ところどころ穴が空いているエリアに出てきた。

 下は底なしに暗い。落ちたら間違いなく即死だなぁ。

 さて、ジャンプしながら行こうかな。


「待て! ジャンプするな!」

「え?」


 ジャンプせず振り返ると、すぐ後ろでグォンと、空気が鈍く裂ける音が聞こえる。その音に嫌な汗が背中に流れる。恐る恐る振り返ってみると、それは黒い鉄の塊が左右に揺れている。下の方は刃のように鋭利で、接触したらこれも間違いなく即死だろう。


「ギロチントラップだ」

「ひぇー!」


 ちょっと殺意高くないですか?! 落とし穴とかそういうのを期待してたのに、ギロチンって、ちょっと殺意高くないですか?!(反芻)


「一人ずつ渡るぞ……」

「ちなみに一人でも欠けたら……?」

「大丈夫。みんなで迎えに行くさ」

「泣きたい」


 生きて先に進むか、下に落ちて骸骨の仲間入りをするか、その場で切断されるか。こ、こうなったら生きてやりますともー!


 そんな感じで一人ずつギロチンの谷を渡っていくと、残りはノイヤーだけになった。


「うぅ……」

「おい、早くこないか!」

「いや、ですけどもー」


 あぁ、そういえばこの人、普段のはロールプレイで中身は結構内気だったっけ。

 足がすくんで、ギロチンの谷を進めないと言ったところだろう。流石に置いていくわけにはいかないし、手を差し伸ばす。


「大丈夫! 死んでもリスポーンするだけ!」

「不吉なことを言わないでくださいまし!」

「そんな事言われても……」


 ギロチン、慣れれば結構遅いし、余裕で避けれると思うんだけどなぁ。それは私目線であって、敏捷の低いノイヤーはそうでもないかもしれないけど。


「おい、ノイヤー」

「……なんですの。お笑い物にするなら今がチャンスですわよ」


 あー、顔をうつ伏せにしちゃって、もうその場から動けない様な顔しちゃってる。ここはもうビターに任せるしかないかな。


「キミほどの負けず嫌いが、うちが渡れたギロチンの谷を超えられないなんてこと、ないよな?」

「……っ! 何が言いたいんですの?」

「キミは、うちに負けてるってことだよ!」

「なっ……!」


 あれ、なんかドレスを握っている手が震えている。顔も唇が震えて、今にも泣きそうだけど、目はしっかりとギロチン……、じゃない! 見てるのはビターの方だ!


「そんなわけありませんわ! あなたなんかに、負けるわけには行きませんわ!」

「あ、ちょ、おい!」


 まずい、ギロチンが飛び出したノイヤーの身体を今にも真っ二つにしそうになってる。

 慌てて、手を取って引っ張りあげる。ビターも同じく感じたらしく、結果的には両手を引っ張りあげて、こちら側に引き寄せる。

 ギロチンはドレスをかすめるが、ノイヤー自身は無事らしく、その場で消滅するようなことはなかった。


「お前、危ないだろ!」

「あなたが挑発するからでしょう!」

「だからってもうちょっとタイミングを見ろ! うちらが手を引かなきゃ真っ二つだぞ!」

「それは感謝しますが、それはそれとして……っ!」


 ふぅ、危なかった。ビターも大胆なことをするけど、ノイヤーもそんなに負けず嫌いだとは思わなかった。


「二人ともお似合いだね」

「まぁそう見えるけど、今のはヒヤッとしたよ」

「でも、ああやってお互いを鼓舞し合える関係って羨ましいなって」

「そういうもん?」

「そういうもの」


 鼓舞ってか、煽りあいって感じだけど、それでもお互い楽しそうだしいいか。


「さて、二人とも先に進むよ!」

「そもそも! あそこでなにか言わなくたって、わたくしは渡れていましたわ!」

「嘘つけ! 泣きべそかいて、渡れそうになかった奴がよく言う」


 こりゃ喧嘩が収まるまで、しばらくかかりそうかな。

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