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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第3章 あの子の好きが分かるまで
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第41話:迷った私たちは遺跡っぽいのを見つけたい。

「どうする。戻るには戻れるが」

「え、そうなの?!」


 方向音痴なのに何故そんなにも自信満々にその発言をしているんだろう。何故かは分からないけど、方向音痴ってこっちだろうという確信を持って言ってるから割と手に負えない気がする。


「緊急脱出機能というのがあってな。うちはこれに何度もお世話になってる」

「なにそれ」

「あー、あれだろ。道に迷ったときとかバグで抜け出せないところに出てしまった時のプレイヤーサイドの最終手段。使うと結構お金はかかるが、最後のリスポーン地点に戻れるんだ」


 へー。そんな機能が。


「ってリスポーン地点に?!」

「びっくりした。急に声あげないでよ、レア」

「アザレアが戻れないじゃん!」

「なんですの? IPCの最終リスポーン地点は主従関係を結んだ相手になりますわ。ならレアネラに」

「ならないんだこれが」


 ノイヤーがキッとキツめにビターを睨むが、事はそう単純な話でもないんだ。


「私、アザレアの主人じゃないんだよね」

「え?! そうでしたの? じゃあどなたの……」


 まぁ気になるよね。

 改めてギルドメンバーに私とアザレアの関係を事細かに説明する。って言っても、出会った時の話をすればだいたい終わるんだけど。


「どおりで」

「ということだ。うちもその悪徳主人との契約を断てないかと考えてはいるが……」

「レシピなさそう?」

「こればっかりは、自力で探さないとな。一覧でもあればいいのだが」

「そんな便利なものがあったら苦労はしないよね」


 レシピがあればアイテムを作れるんだから、当然レシピは隠しちゃうよね。一覧とか手に入れた日には、多分一生アトリエから出てこないだろうな。


「そんな便利なものがこのゲーム内にはあるみたいだがな」

「そうなの?」

「みたい、だから本当にあるかは定かではないけどな」

「あったらいいね、レシピの一覧」

「あぁ」


 そしたらビターの夢も叶うし、私の念願も果たされる。一石二鳥だ。

 でも今起きている現状は何も変わっていないのだ。


「で、ここからどうするの?」

「うーん。せっかくだしもう一時間森の中を歩き回って、それで何もなかったらそこはビターのアイテムの力で」

「まぁ、できないわけじゃないから問題ない。ものはと言えばうちの責任だからな」

「分かりましたわ。足が痛いのを除けば」

「あぁ。俺ももうひと踏ん張りかな」


 よし、なんとか了承は得た。と言ってもこの鬱蒼とした木々を嫌というほど目にしてるから、萎えてくるなぁ。川のせせらぎの音も聞こえるけど、今は川沿いを歩いていけばいいかな。


 河原に出てからもう30分ぐらいだろうか。一休みして、釣りをしている時だった。


「ゴブリンだ!」

「うぇ?!」

「レアネラさん、盾を!」

「あっ! 《視線集中》!」


 私がターゲット集中のスキルを使うと、こちらの方にモンスターが攻め入ってくる。数は、三体だろうか。

 ツツジが通りすがる一匹の首を掠め斬り。赤いデータのエフェクトが吹き出すと、ゴブリンの身体は消えていった。

 続く二体はビターの属性付与の矢とアレクのハンマーによって砕け散った。奇襲をなんとか撃退することができたが、モンスターがやってきた先がちょっと気になった。


「この川の先に何かあったりするのかな?」

「今まで出てきてもイノシシや虫ぐらいか。人型のゴブリンは確かに気になるな」

「行ってみる?」

「ギルマスが良ければ、かな?」


 もちろん。私はうんと答えようじゃないか。

 なんだか冒険らしくなってきたと思ってちょっとワクワクしてる自分がいる。


「よーし、行くぞレアネラ探検隊!」

「調子に乗り始めたな」


 地図ではこの川の先には何もないように見えるけど、カモフラージュかもしれないし、この際行ってみたほうが面白くなりそうだろう。


 歩くこと20分ほど。徐々に開けた足場になっていき、道も整備されている様に見える。


「これは……」

「ビター、どうしたの?」

「いや、今は進もう」


 含みがある言い方だけども、まぁいいか。とりあえず前に歩みを進めていくと、それは現れた。


 苔むした壁がひび割れている。床も凹凸が出来上がっており、足元を見ずに歩けば転んでしまうような足場の悪さ。だが石の床になっており、誰かが整備したようにも見える。

 カモフラージュとも言うように、この建物を隠すように木々が覆っており、上空画像しか見えない地図ではわからないだろう。

 左右には謎の像が二つ。何かを守っているようにも見える。


 この森にないような人工的な建物。だが数千年も前に人の気配がなくなったこの建物を、人はこういうのだろう。


「遺跡……?」

「みたいだね。私も初めて見た」

「私もです」

「これは、攻略対象ですわね」


 疲れも何のそのと言った調子で、腕を組むノイヤー。さっきのバテっぷりはどうした。


「やはりか」

「さっきのビターのって」

「あぁ。あのゴブリンたちはここから来たんだろう。となると……」


 ビターが辺りを探し始める。あんまり遠くに行くと迷子になるんじゃなかろうか。

 そんな事を考えていると、ビターが帰ってくる。


「こっちにキャンプサイトを建てられる焚き火跡を見つけた。先に建てるぞ」

「まぁそっち優先か。早く行きたいな、遺跡」


 キャンプサイトを建てて、一回一段落する。攻略は時間的に明日かな。


「キミたちはそろそろ寝たほうがいいんじゃないか?」

「だね。そうするよ」

「あれ、今何時?」

「もう0時超えてるって」

「マジですの?! それではこれで!」


 急ぎ足でノイヤーが即離脱。もうちょっとなにか話していけばいいのに。そんなに門限厳しいのかな。


「俺も一旦落ちるかな。明日攻略だろ?」

「あぁ。うちも明日の備えよう」


 続々とログアウトしていく中、ちょっとだけ気になったのでアザレアに声をかける。


「大丈夫?」

「……心配ですか?」

「まぁね。一応非戦闘員だし、こんなところで一晩明かすとは思ってなかったから」

「前も言いましたが、キャンプサイトにはモンスターが寄り付きませんので、テントにこもっていれば安心です」

「ならよかった……」

「ありがとうございます、心配してくださって」


 こんなことで良ければどんどん心配するよ。それだけアザレアが大切だし。


「私の目の前でイチャイチャしちゃってまー」

「ツツジ、イチャイチャなんてしてない」

「じょーだん! 明日も楽しみだね」

「うん。ちゃんと寝てよ」

「レアじゃあるまいし」

「なにさー!」

「あはは。ごめんごめん。おやすみ」

「うん、おやすみ」

「おやすみなさい」


 ツツジと私はそのままログアウトして、布団にイン。

 はぁ。やっぱり心配だけど、アザレアが言うなら大丈夫か。今日は歯を磨いて、ふあぁ……。もう寝ちゃおっと。

 明日の遺跡攻略、楽しみだなぁ……。

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