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NPCが友達の私は幸せ極振りです。  作者: 二葉ベス
第2章 私とあの子が友達と言えるまで
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第38話:勇気を出した私は呼び捨てさせたい。

「レアネラ様、そんなに見ても何もありませんが」

「あるんだよー。えへへ」


 最近アザレアと一緒にいるのが楽しい。

 理由なんてとっくの昔に分かっている。それは正式にお友達になったからだ。この感じ、ツツジのときもそうだけど、ウキウキとワクワクで胸がドキドキだ。自分でも何言ってるか分からないくらいには超楽しい。


「アザレア、今日はどこに行こっか」

「と言われましても、今日はやることはこれで終わってしまいました」

「じゃあ一緒に出かけない?」

「そうですね、それでしたら」

「じゃー決まり!」


 ベッタリと私はアザレアの腕にくっついてみせる。なんかいいな、こういうの。


「あの」

「なに?」

「友達の距離とはこれでいいのでしょうか?」

「……どうなんだろ?」


 それは私にも分からないけど、この前読んだ漫画の友達の距離感はこんな感じだった気がする。いや、ホントにそうだったっけな。なんか自信なくしてきた。


「間違いなく近い!」

「あー!」


 突如現れたツツジによって私たちは強引に引き剥がされてしまった。

 私も名残惜しいけど、アザレアもちょっと名残惜しそうに口を開いている。


「なーに、嫉妬?」

「子供は言ってなさいな」

「子供って何さー!」

「恋愛もしたことない人に言われたくありませんー」

「なに、ツツジ好きな人いるの?!」

「……今の忘れて」

「いいじゃん! 私たち友達なんだし!」

「……友達だから言えないんじゃない」


 なんか今日のツツジはツンケンしたり、急にしおれたり、忙しい人だな。でもそっか、好きな人いるんだ。いいなー。私なんて恋は二の次で友達第一だから。


「ところで、なにか御用ですか、ツツジ様」

「いや、くっついてたから引き剥がしただけだったんだけど……」

「だけど?」


 なんか含みがある言い方。アザレアの方を見て、それは一言。


「アザレアってまだ『様』呼びなんだね」

「へ?」「え」

「だから、友達になったのにレアネラ様なんだと思って」


 言われてみれば。

 今までが様呼びだったから、最初は慣れなかったものの、今は自然に呼ばれても違和感がない程度には慣れてしまった。

 よくよく考えてみれば、確かに友達を様呼びはなんか違う。いや絶対違う。


「じゃあ呼び捨て?」

「じゃないかな」

「では早速!」

「ちょっと待って下さい」


 アザレアからのちょっと待ったが入る。今から言ってもらおうと思ってたんだけど、本人は嫌だったパターンかな。それはそれで強要させたくないのでやめるけど。


「私はレアネラ様に敬意を払わなければいけないので、レアネラ様本人はよろしいのかと思いまして」

「良いも悪いも、一番最初に言ったじゃん。様呼びは重苦しい~みたいなこと」


 出会って最初のときに確か言ってたはずだ。ちょっとうろ覚えなのはしょうがないとしても、この私が様呼びを安易に通すわけがないのだ。


「だから呼び捨てでおっけい! じゃあさんはい!」

「いえ、ですからその……」

「さんはい!」

「レ、レレレア、ネラ……」

「おお」

「様!」

「えー」


 絞り出したと思ったら様が付きました。そんなに呼び捨てが嫌なのか。


「やはり私には様付けの方が」

「そんなことないよ! もう一回! ワンモア! ワンチャンス!」


 やばい。プルプル震えて赤面するアザレアなんて見るの初めてで、ちょっとこの状況を続けたくなってしまう。というかこんな子だったっけ? かわいいんですが!


「で、ですが……」

「はいはい、その辺にしときなよ。アザレアも困ってるし」

「ぶー。なんかツツジに言われるのは釈然としない」

「言われても。こんなのオーバーヒートしてもおかしくないよ?」


 あ。と言葉を漏らす。そういえば彼女は人間ではなくて、人工知能であるIPCなのである。だからこんな事をしたらバグって、ツツジの言う通りオーバーヒートしてしまうかもしれない。ナイスツツジ。


「それにしてもレアがこんなに加虐癖があるとは」

「そ、そんな事ないってば! 私はかわいいアザレアがみたいだけで。ほら、かわいそうはかわいいってどっかのVtuberも言ってたよ!」

「それを加虐癖っていうんじゃん……」


 そうなのかなぁ。見たこともない表情をするアザレアをいつまでも見ていたいって思うのは普通のことだと思うんだけどな。それともやっぱり妬いてるんじゃ。いや、ツツジに限ってそれはないか。


「じゃあツツジも赤面して」

「へ?!」

「ツツジが恥ずかしがってるとこ、見たことないんだもん」

「そりゃ……耐えてるから」

「なに? 聞こえない!」

「んっ!」


 聞こえないから顔近づけたら、ようやくツツジも赤くなった。というかアザレアと同じくかわいい。そりゃ同じ顔してるからだけど、ツツジはなんか妙に色っぽいと言うか。


「なんか、エロい」

「エ、エロいって、なにさー!」

「うわー、ツツジがキレたー!」


 キレたツツジによって追い回される私。なんという自業自得。ま、まぁ可愛かったし、艶っぽかったから、許すけど。

 結局、アザレアは私のこと呼び捨てしてくれなかったな。せめて様付けはやめてほしいけど。


「分かりました。様呼びはやめます」

「え、マジで?」

「ホントに! じゃあ早速早速!」

「ちょっと待って下さい。心の準備が、まだ……」

「あー、まだかかりそうかなこりゃ」


 ◇


「やっぱりダメみたいだね」

「そんな気はしてたよ……」

「申し訳ありません……」


 様呼びをやめる! と言ってからはや数分。以前不動たる様呼びはそう簡単に剥がれそうにはなさそうだ。


「やはり敬称は外せません。レアネラ様はそういう方ですので」

「これはしぶとい……」

「どうせなら『さん』とかでいいんじゃない?」

「さん……ですか?」


 ツツジの言葉に疑問符を並べるアザレア。その疑問に答えるべく、ツツジの口は開かれる。


「敬称を外せないなら、さん呼びならどうかなーって。あと、割ともう面倒くさい」

「ぶっちゃけたね」


 まぁ確かにかなりのエネルギーを今の会話で費やした気がする。


「さん。さんですね」

「よし、どんとこい!」


 アザレアを真っ直ぐに見据えて、喉をゴクリと鳴らす。唇を慣らすように、彼女は舌で口を濡らすと開く。


「レアネラ、さん」

「うん」

「レアネラさん」

「うん!」

「レアネラさん!」

「私だよ!」


 右手を差し出すと、ガッシリ手を握られる。あぁ、ここにさん呼びが確立したのだ! これほど喜ばしいことはない!


「レアネラさん!」

「アザレア!」

「レアネラさん!」

「アザレアっ!」

「なんの劇?」


 そうは言いますけどね、ツツジさん。やっぱり新鮮な名前の呼び方のほうがなんとなく友達って感じがしていいものなんですよ。

 ただ、新しい呼び方が慣れないからちょっと照れる。


「レアネラさん!」

「あ。あのね、アザレア。私の名前を呼ぶのはいいんだけど」

「レアネラさん?」

「うっ……。いや、呼ぶのはいいんだよ。いいんだけどさぁ……」

「やはり様の方が」

「そんな事ない! さん付けいいよー、うん」

「ではレアネラさん!」


 分かってくれない! どうしてなの。そんなに察しが悪い子でもないでしょうに。なんか徐々に顔が熱くなってきてる気がする。なに、私やっぱり照れてるの?!


「うぅ……」

「レアネラさん? どこか具合でも」

「そんなことないよー? 私は元気、なんだけど……」

「……アザレア、これ以上はレアがオーバーヒートする」


 しおれた花のようにシュンとテンションが下がって、顔をうつ伏せにする。

 流石に見られたくない。ごめんね、ツツジ。照れた顔が艶っぽいとか言っちゃって。私も見られたもんじゃないと思う。


「あ。申し訳ありません。レアネラさんに過度な負荷を」

「いや、うん。ちょっと外、出てくるー!」

「逃げた」

「レアネラさん!」


 もー耐えられない! 私はギルドホームを走って出ていき、そのままログアウトする。慣れなきゃいけないのは分かってる。分かってるんだけど、やっぱり恥ずかしいです、はい。

これにて2章はおしまいです。

3章もこれより更に濃厚な百合姫展開になる、予定です

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